第55話 聖鎧〜せいがい〜
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「デュラハンさん。
ここの外の霧、消しちゃっていいかしら?」
「えっ?そんなことが出来るのですか?
あの霧のおかげで、
不気味な雰囲気が出て良いは良いんですけど……
おかげでほとんど誰も辿り着けず……
あっ……でもここは……
ちょっと特殊な役割と言うか……」
「退屈だった?」
「退屈で死にそうでした……
もう死んでるんですけどね……」
「うん、死んでるわね」
「ははは……」
「分かったわ。
霧を消しちゃって良いってことよね?
それと……その〝役割〟?って言うのに、
少し心当たりがあるの……
だからまた来るわね?それじゃあまたね……」
「エル姉様、またここに来られるのですか?
だから、霧を?」
「ええ、ちょっとね……」
ーー帰り道
「結局1日で、制覇しましたね」
「う~ん……制覇したって気がしないわよね?
全然戦ってないんだから……
未到の7つの迷宮って、
こんなに簡単に制覇出来て良いのかしら?
おかしくない?どう思うアカシック?」
「いや、おかしいのはエルフィナ様でしょう?」
「次はいよいよシドニアか……
魔法が使えない森に、
即死か転移か分からない迷宮……
未だかつて、帰って来た人は1人もいない……
ワクワクするわね、アカシック」
「〝ワクワク〟するんですか?
別世界に飛ばされるかもしれないのに?
戻ってこれないかも?とか思わないのですか?」
「戻ってこれるわよ。
メアリー達と楽しそうに過ごしている未来が見えるもの」
「なるほど……では早速明日にでも行きますか?」
「ううん、そう思ってたんだけど、
少し気になる事があっって……
まずはそこからかしら」
ーーーー
「ただいま~」
「あ、エル姉おかえり~!」
メアリーが駆け寄る。
「メアリー。お土産があるのよ」
差し出される鎧。
「えっ?この鎧を私に?綺麗だけど……小さ過ぎない?
私には、着けれないんじゃないかしら?」
1度エルフィナが着けた事で、小さく縮んでいる聖鎧。
「無理やりに体を入れてみて」
「こう?」
ぐいっ。
「あれ?着けれたわ?ん?私が着けたら、
デザインが少し変わった?」
聖鎧はメルフィナに最適化されていく。
「そうなの。それ聖鎧なんだって。
着る人に合わせて大きさや形が変わるのよ?」
「せ……聖鎧?でも何で私に鎧を?」
「保険よ?」
「保険?何のため?」
「メアリー」
少しだけ真剣な目。
「最近、無茶してるでしょ?」
「……え」
「戦闘訓練よ?頑張りすぎてない?」
「えっ?何でそれを?」
「アカシックが居るもの……
隠していても分かるわよ?」
「……そっか」
少し俯く。
「だって……」
ぽつり。
「エル姉達があんなに強いのに……
私だけ置いていかれるの、嫌だから」
「そっか……もちろん努力するのは良い事よ?
メアリーは才能もあるしね」
「そうかな……?……で?保険ていうのは?」
「結構危険な所にも行っているんでしょ?」
「……まあ……それはそうだけど……」
「聖獣テッサを連れてってるみたいだから、
大丈夫とは思うけど……」
「そうなの!テッサ、超強いわよ!
あの子、無敵なんじゃない?
戦う時の姿も、超かっこいいし!」
「ああ、あの姿もう見たんだ?
メアリーの前では、いつまでも子犬形態のままで、
甘えているのかと思ったけど……」
「頭良いから、私の訓練だってちゃんと分かっていて、
ピンチの時以外は、邪魔しないのよ?凄くない?」
メルフィナの目が輝く。
「でも後ろでちゃんと見ててくれるから、
安心して戦えるの。
それに、エル姉の結界が有るから、
怪我もなくて……鎧とか必要?」
「でもね……初めて人に張った結界でしょ?
いつ切れるのかも、定かじゃないから……」
「それで、保険?」
「ま、そう言うこと」
「……そっか」
ぎゅっと胸を押さえる。
「ありがとう……エル姉」
「どういたしまして」
くすっと笑う。
「それに――」
少し離れて眺める。
「うん……その鎧、すごく似合ってる」
「……ほんと?」
「うん。めちゃくちゃ可愛い」
「でも……」
聖鎧を撫でながら、メアリーが少し不安げに呟く。
「聖鎧って……聖剣の〝鎧版〟なんでしょ?
国宝級よね?そんな凄い物……
私が使っていいのかな……?」
「いいのよ」
あっさりと、エルフィナ。
「迷宮の制覇報酬で、私が手に入れたものなんだから。
誰に使わせようが、私の自由よ」
「……もう」
苦笑するメアリー。
「でも……エル姉って、ほんと心配性よね」
「誰にでもってわけじゃないわよ……」
「でもね……」
少し俯く。
「エル姉は、才能あるって言ってくれるけど……
私、レベルがなかなか上がってくれないの……」
「そうなの?今のレベルは、いくつ?」
「魔法も剣技も50ちょい……」
「両方50超え?凄いじゃない!」
思わず声が弾む。
「それって、普通だったら考えられない事よ?」
「でも……」
小さく首を振る。
「エル姉達と比べたら……全然」
「……そっか」
エルフィナの表情が、少しだけ変わる。
優しさから――〝導く者〟の顔へ。
「そうね……もっともっと上を目指したいと言うなら……
メアリーのレベルを上げるのに、
最適な場所に心当たりがあるわよ」
「えっ?どこそれ?」
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