第52話 名付けか……
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「エルフィー。いずれにしてもだ……
仮に辿り着いても、おいそれと迷宮に入るなよ?
色々と現場で調査してからだぞ。
まあ調査したところで、
簡単には分からないだろうがな……
かなり時間がかかりそうだな……」
「やっぱりそう思うわよね」
「残りのスロリアは、どうなんだ?」
「あそこは、深い霧に覆われた森の中。
迷宮の位置の情報がないのです」
「誰も辿り着いていないのか?
だったら何故そこに迷宮が有るって分かるんだ?」
「辿り着いた人は、ほんの少しだけどいるそうよ。
過去の勇者もその1人。
その時の情報も少しはあるんだって。
それ以外で辿り着いた人は、
ただ単に迷い込んだ旅人みたいよ?」
「それが一般人だとしても、何故位置の情報がないんだ?」
「それこそ4~5m先が見えない程、霧が深いらしいわ。
だから誰も、そこが何処だったか分からないんだって。
上空からも、深い霧で森の中の様子が、何も見えないそうよ。
だから冒険者も、そこを目指す人は殆どいないのね」
「木や草は数年すると様子が変わりますから。
私が持っている、行った人の記憶を辿っても、
迷ってしまうと思われます」
「それもそうか……
どっちも10日やそこらじゃ到底無理そうだな……」
「そうなのよ……」
「道でもあれば、
辿り着いた人の記録を辿ればいいんだろうけど、
何もないんだろ?なかなか……」
マックスがふと考える。
「さっきシドニアは慎重にって言ってたよな」
「はい」
「ってことは、スロリアは可能性あるのか?」
「エルフィナ様の、結界魔法が使えるかもしれません。
霧を隔離する小さな結界を張り、それを広げていけば、
霧を晴らすことも可能かと……
ただ、いずれにしても高速では移動できないでしょうね。
半径50km程ありますから、
辿り着くまでに、相当な時間がかかるでしょう。
ですが、攻略の可能性はこちらの方が高いかと」
「あ……あの……私そこに行けると思います……」
何処からか、小さな女の子の声がした。
「だ、誰?エレーナ?」
「……な〜に?ママ……」
眠そうな目をこすりながら、
エルフィナの髪から顔を出すエレーナ。
「違います…………私……です……」
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」
全員の視線が、一斉にエルフィナの手元へ。
「レイピアが……喋ったぁぁぁ!?」
「あ、あの……」
おずおずと、どこか恥ずかしそうに。
「……元々人格?剣格?はあったのですが……」
「剣格って何!?」
即ツッコミ。
「エルフィナ様に、〝レピちゃん〟と呼ばれた瞬間、
エルフィナ様と絆が繋がって……
能力が爆発的に上がった様で……
喋れる様に……」
「名付けか……何で今まで黙ってたの?」
「そ、それが……」
気まずそうに、声が小さくなる。
「あの時、エルフィナ様は交戦中で、
光った私の変化にも気付かず……
話しかけるタイミングを逃してしまい……
その後は言いにくくなり……」
「あ?あの時?」
「……多分……私の思ってるのと同じ〝あの時〟ですよね?」
「……と、思うけど?……それより!」
エルフィナが身を乗り出す。
「スロリアの迷宮に行けるって言った?」
「あ……はい。そうですそうです、私2度行ってます」
「何でスロリアの迷宮に?」
「私、世に7振りあると言われている聖剣……
その中の女性勇者専用の1 振りなのです」
「……え?」
「え?」
「え?」
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
「レピちゃん、
凄い剣だとは思ってたけど、聖剣だったの?」
「はい、今は聖剣の限界をも超えてしまった様ですが……
以前は女性勇者が現れると、私が貸与されたのです。
その女性勇者の内の2人が、スロリアの迷宮を目指して……
あそこには聖鎧が、
眠ると言う伝説がありまして……」
「あったの?」
「いえ、あそこの迷宮はS級の魔物が、
次から次へと出てくるのです。
12層以上潜った人は、いないとか?
女性勇者は、2人とも10層で撤退しております」
「勇者も諦めた迷宮か~?
今でも行き方は分かるのかしら?」
「勇者2人とも、貴方様の様な女神様の……
あっ……じゃなく……そ、その加護を持っておりました」
あわてるレイピア。
「勇者には〝不思議な導き〟がありました。
進むべき方向が、直感的に理解できるようです。
アカシックさんには分からない様でしたが、
実際行った私には、どちらに行ったら良いか分かります……
それに他の方法も……」
「そうか~じゃあやっぱり、
先ずはスロリアに行ってみようかしら?
聖鎧にも興味あるし……
ところで、レピちゃん?私の様な女神様って言った?」
「あ……」
「〝あ〟?」
「え、ええとですね……」
明らかに焦る声。
「……つまりエルフィナ様は、
まるで女神様の様だ……そう言われているので……」
「女神様の加護か……私も欲しいわ……」
「エルフィナ様には必要ないかと……」
「そう?何で?」
「……えっと……その……」
言葉が詰まる。
「既に神と同等の力をお持ちかと?」
「な訳ないじゃない?レピちゃんたら~」
「アハ……アハ……アハハハ……」
乾いた笑。
(誤魔化すの下手だなお前……)
アカシックの念話が飛ぶ。
(この人が鈍感で良かったな?
他の人だったら気付かれてるぞ?)
(メッチャ焦りました……アカシックさん……)
(お前にも、
この前の創造神様の声が聞こえていたんだな?)
「なあ、エルフィー。
後10日しか休暇が無いのに、本当に行くのか?」
現実に引き戻すマックス。
「道が無いんだろ?
くねくね障害物を避けながら、
何十km歩くのか分からないぞ?」
「エルフィナ様なら1日かからないと思います」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




