第50話 レベル100
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「それにしても……アカシック……ですか」
アンカーが、ふうっと息を吐く。
「私の愛する姉上が――また一段と、
規格外になられたようだ」
「お、おい……〝愛する〟って……アンカー?」
マックスが若干引き気味にツッコむ。
「もちろん家族愛ですよ?」
さらり、と返すアンカー。
「もちろん家族愛ですよ?
マックス兄上の事も、愛しておりますよ」
「驚かすなよ……!」
ほっと胸を撫で下ろし、
「ハハハ……俺もアンカーの事、愛してるぜ」
「うわ……マックス、キモッ」
「俺だけ!? 何でだよ!?」
「ホホホ……」
軽く笑うエルフィナ。
「でも、気を付けて下さい」
アンカーの表情が僅かに引き締まる。
「アカシックの事を公表したら、
友好的でない国にとって、
姉上は、邪魔でしかない存在になります」
静かだが、確信に満ちた言葉。
「アカシック共々狙われるのは必然」
「私の事はご心配なく……」
胸元のペンダントが、淡く青く輝き、
「誰に盗み出されようと、
瞬時にエルフィナ様の下に戻れますから」
「あっ……本当にペンダントが喋った……」
「さて、領主候補の皆さま」
エルフィナはすぐに表情を切り替える。
柔らかさはそのままに、
しかし完全に〝為政者の顔〟になっている。
「今、お聞き頂いた通りです。
そして――その一端を、
貴方方に担って頂きます」
ぱさり、と資料が配られる。
「こちらをご覧下さい」
机上に広げられたそれは――
単なる政策案ではない。
産業、流通、資源、教育、医療。
全てが〝連動する形〟で組み上げられた、精密な未来図。
「パズルのピースを埋める為の設計図です」
静かに告げる。
「各領地、それぞれの強みを活かし――
この指針に沿って産業を伸ばして頂けますか?」
一歩、前へ。
「本国も全面的に支援します。
税制もエスティア基準に引き下げます」
そして、はっきりと言い切る。
「一時的に税収は減るでしょうが……」
一瞬の間。
「貴方方の地の繁栄は、私達が必ず実現させます」
断言だった。
「……これは……」
アンカーが資料を見つめたまま、呟く。
「完璧……いえ、それ以上だ。
無駄が一切ない……ここまで緻密に噛み合うとは……」
顔を上げる。
「姉上。凄いですね?完璧すぎて言葉を失います……」
「でしょ!?でしょ!?」
途端にテンションが跳ね上がるエルフィナ。
「最近ね、〝馬鹿じゃないの?〟
みたいに言われる事多くて……
もっと褒めて!褒めて~~!」
「姉上を馬鹿だとか言う、
不届き者がいるのですか?」
アンカーの目が据わる。
「こいつこいつ!」
即座にスカイを指差す。
「……スカイ殿、ですか?」
アンカーが真顔で呟く。
「数千年を生きて尚、真価を理解出来ぬとは……
愚かと言わざるを得ませんね」
「もっと言って!もっと言って~~!」
「いや……アンカーさん……」
横からスカイがぼそり。
「お嬢を崇拝し過ぎ……」
ーーーー
「おっ、エルフィー」
場面は変わり、柔らかな日常の空気へ。
「良いね、その衣装。
今日も、迷宮に潜ってきたのか?」
「動きにくいんだけどこれ……」
エルフィナは、少し残念そうな顔をする。
「前のが良かったな……」
「ダメダメ」
即却下。
「あれは露出が多すぎ!それでなきゃ冒険者活動禁止!」
マックスの希望で、現在の衣装は、
以前と似たデザインながら――
露出は極力抑えられている。
「で?なんだ。その笑顔。
もしかしてみつかったのか?」
「ううん」
首を振る。
「あれから3つの迷宮に潜ったけど、
何も見つからなかったわ」
「それにしては、嬉しそうな顔をしてたぞ?」
「ねえ!聞いてマックス」
「私のレイピアが、ついに100レベになったのよ!」
ぱっと表情が弾ける。
「マジか?99になってから、どんなに強力な魔物を倒しても、
全然レベルアップしないって、ずっと愚痴ってたよな!?」
「そうなの!」
うんうんと頷く。
「99になるまでの何倍もの魔物を倒したのに、
全然上がらないから、
これがこのレイピアの限界かと思ったんだけど、
ついに今日、レベル100に到達したのよ」
「何か変わったか?」
「魔力を通すとね――」
レイピアを軽く構える。
すう、と魔力が流れ込むと――
刃が、消える。
いや。
〝透明化〟し、青い光だけが残る。
「……おい」
マックスが目を見開く。
「綺麗ってレベルじゃねえぞ、それ」
「でしょ?」
くすっと笑う。
「綺麗に光るだけか?」
「元々、切れない物は無い位、切れ味良かったし……
どうなんだろ?何か変わっていたら、
そのうち分かるんじゃない?」
「あの……エルフィナ様」
「なあに?アカシック」
「そのレイピア、オリハルコンで出来ておりましたよね?」
「スカイが、そう言ってたけど?」
「うむ、間違いない」
スカイも頷く。
「あの宝物庫に有るものは全て、
我が見れば、直ぐ判定出来る様になっておったからな」
「今は別の物質に変わっておりますよ?」
「何に変わったの?」
「分かりません。未知の物質というか……
人類が初めて遭遇したものというか……」
「スカイは何か分かる?」
「判定出来んな……
アカシックがそう言うので、改めて見てみたが……
我にとっても初めて見る物だな」
「スカイにも分からないのね」
「まあ、切れればいいや」
エルフィナはあっさり言う。
「軽っ!?」
マックスが思わず叫ぶ。
「岩とかスパスパ切れたし、何で出来ていても問題なし」
「なんだろな?鑑定画面は見えるのだが、
$♪ ×¥●&%# ◎△$……と、なっており、
さっぱり分からんな。我に鑑定出来るのは……」
「出来るのは?」
「お嬢の剣技が、人の限界100をとうに超え、
150に迫ってると言う事だな」
「「「え?」」
「嘘だ~」
「嘘でない。岩をスパスパ切れたのも、
剣の切れ味が良いのか、お嬢の腕が良いのか……
その両方なのか分からんぞ?
どんだけ魔物を倒したのやら……」
「……て言うか~。スカイもレベルが見れるの?」
「ああ、我の宝物庫の物だけ、
見る事が出来るのかと思っていたのだが、
レイピア同様、人のレベルも見る事が出来る様だ」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




