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第48話 え……併合……?

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「え~と! 5国の兵の皆様~!」

 〝ぱん〟、と小さく手を打ってから、

 確実に届くようにエルフィナは声を張る。

 柔らかく、それでいて不思議と耳に残る声音で。


「結界は解除しました~!

 今から砦の食糧庫を解放しま~す!

 好きなだけお持ち下さ~い!」

 その声は、張り詰めていた空気をふわりと撫で、

 戦場に、場違いなほど優しい温度をもたらした。


 疲れ切った兵士たちの前に立つ、

 少女――エルフィナ。

 だが――

 次の瞬間。

 〝ドドドドドドドドドッ!!〟

「えっ……!?」

 エルフィナ目掛けて、数万の兵が一斉に駆け出した。

(まさか……襲われる!?)

 一瞬で戦闘態勢に入るエルフィナ。

 反射的に結界魔力を練りかけて――

 ぎゅっと唇を引き結ぶ。

 出来れば、人とは戦いたくない。


 ――だが。

 その覚悟とは裏腹に。

 兵たちは――

 彼女の前で、一糸乱れぬ動きで整列した。

 そして。

 〝〝〝〝〝〝ザンッ!!〝〝〝〝〝〝

 中心の指揮官が膝をついた、その瞬間。

 まるで連鎖するように。

 数万の兵が、音を揃えて膝を折る。

 大地が震え、そして――

 やがて静まる

 静寂に包まれる。

 風すら、息を潜めたかのような沈黙。

「デ、デジャブ……?

 なんかこれ……前にも……」

 思わず引きつった声を漏らすエルフィナ。

 既視感が、ぞわりと背筋をなぞる。

 そんな彼女へ、最前列の指揮官が、

 頭を垂れたまま、口を開く。

「神の愛し子、エルフィナ様。

 発言お許しいただけますでしょうか」

「も、もちろん……構いませんよ?」

 戸惑いを隠しきれないまま頷く。

「我ら一同、話し合いの結果――全員一致で、

 貴方様の元に付く事に決めました」

「……えっ?」

 一瞬、理解が追いつかない。

「何卒……我らを、貴方様の下僕に」

「げ、下僕って……!?」

 思わず素でツッコミが飛び出した。

「いやいやいや!? ちょっと待って!?

 私、間も無くエスティア王国の王妃になるのよ!?

 貴方達の主人にはなれませんよ」

「承知しております」

 迷いのない声。

「いずれはマックス王の兵として、

 エスティア王国に尽くす所存でございます」

「え、でも……皆さん国に帰れるのよ?

 帰らなくて良いの?

 ご家族もいらっしゃるんでしょう?」

 エルフィナの問いに、指揮官は静かに答える。

「通信魔道具にて、既に各国から報が届いております。

 現在、どの国も――混乱の最中にあります」

「混乱……?」

「城を守る兵は少なく、

 その兵らも守備を放棄する者が続出。

 王城、並びに王派貴族の屋敷は民に占領され、

 各地で蜂起(ほうき)が起きているとの事です」

「そんな……もう……?」

 エルフィナの目が見開かれる。

「あれを、全国民に見せてから……

 まだ数時間しか経ってないのよ?」

「元より、不満は臨界に達しておりました。

 きっかけが与えられただけにございます」

「……そう」

 小さく息を吐く。

「でも、それなら尚更――

 混乱を収める為に、戻るべきじゃないの?」

「ご許可を頂けるのであれば、一度は戻ります。

 しかし……」

 一拍。

「既に王家、並びに王派貴族は――

 粛清されたとの報も入っております」

「……っ」

 言葉を失うエルフィナ。

「この中にも、王派の方は……?」

「指揮官クラスは、

 王派が多くを占めておりましたが、

 既に拘束済みです」

「……」

 状況の速さに、思考が追いつかない。


「つまり……あなた方の国は、

 エスティア王国の属国に?」

「いえ」

 きっぱりと否定。

「我らの地を――エスティア王国に、

 加えて頂きたく」

「え……併合……?」

 流石に動揺を隠せない。

「それ……貴方達だけで決めていい話じゃ……」

「通信魔道具により、

 国の主だった者の意向は確認済みです」

「民の意思は……?」

「同様にございます」

 迷いのない断言。

「……分かりました」

 ゆっくりと頷く。

「ただ、これは私一人で、

 決められる事ではありません。

 マックス王太子は勿論――

 サンブルズ帝国のアンカー皇太子にも、

 相談が必要です」

「当然にございます。

 良きお返事を、お待ちしております」


 ーーーー


「……て事なんだけど……」

「エルフィー……それを狙ってたのか?」

 呆れ半分、感心半分でマックスが言う。

「まさか……2度と私や、

 エスティアに手出ししない様に……

 そう考えてただけよ」

「アンカーどう思う?」

 マックスは腕を組む。

「 5国全てをエスティアの領土にしたら、

 エスティアは世界一の国土になるだろ?

 他と軋轢ができるんじゃないか?

 無益な争いは、避けたいんだよな……

 サンブルズの中にも、

 良く思わない連中が居るんじゃないか?」

「それは問題ないですよ?マックス兄上」

 アンカーは穏やかに微笑む。

「我が帝国の貴族も民も、

 姉上の事を神の愛し子と、

 頑く信じていますから。

 この成り行きも、

 当然の流れだと思うのではないでしょうか。

 それよりも……」

 少しだけ声のトーンが落ちる。

「問題は経済です。

 かの国々は、経済が上手く回っていなかった国……

 取り入れれば、むしろ国力が下がるかもしれません。

 そこが心配ではある反面、

 その辺を上手く利用し説明すれば、

 他国との軋轢も回避できるかもしれません」

「その辺の事、アンカーが、

 上手く根回ししてくれると助かるわ」

「はい、お任せ下さい姉上」

「アンカーは、本当にそれで良いのか?」

「もちろんです」

 くすり、と笑う。

「前に言ったではないですか?

 あっという間に抜かされると。

 思っていた通りですよマックス兄上」

「何言ってんだアンカー」

 マックスは苦笑する。

「国土では肩を並べる……いや、上回るのか……

 ただ、お前が言う様に、経済的には、

 むしろ落ち込む可能性が高いんだぞ?

 サンブルズには、まだまだ、

 遠く及ばないだろ?」

 エルフィナが口を挟む。

「あら?そうでもないわよ?」

「え?」

「かの国々は、一部の上流階級が、利益を独占しようと、

 理不尽な規制や、方策が沢山取られているのよ?」

「そうですね」

 アンカーも頷く。

「民を疎かにするばかりに、国力を下げていますよね」

「そうなのか?」

「マックス……」

 じとっとした目。

「もう少し勉強した方がいいんじゃない?」

 ――その時。

「マックス。勉強しなさい」

 ふわり、と。

 光が弾けるように現れる、小さな影。

「うわっ!? エレーナ!?」

 ひょこっと現れた光の精霊。

「なんだよ急に……びっくりしたぞ。

 てかなんでエルフィーは〝ママ〟で、

 俺は呼び捨てなんだ?」

「マックスはマックス。

 パパじゃないもん」

「ちっ……生意気……」

「でもそうよね?エレーナ」

 エルフィナがくすっと笑う。

「マックス、勉強不足よね?」

「いや~……俺が王になるとか思ってなかったしな。

 剣一筋だったっていうか……ハハハ……」

「〝ハハハ〟じゃないわよ」

 ぴしっと言い切る。

「ちゃんと知れば、あの国々は化けるわ。

 資源も、産業も――決して悪くないもの」

「流石、学園始まって以来の秀才ってか?」

 マックスが肩をすくめる。

「頼りにしてます。未来の王妃様」

「ママの隣にいるなら、

 ちゃんと分かるようにならなきゃダメだよ?」

「……お前、子供のくせに容赦ねえな」

「子供じゃないもん」

 ぷくーっと頬を膨らませる。

「ママの精霊だもん」

 そう言って、ぴょこん、

 とエルフィナの肩に乗る。


 ーーーー


「――という訳で皆様」

 再び兵たちの前に立つエルフィナ。

 今度は、先ほどよりも少しだけ〝王妃の顔〟で。

「各国へ一度戻って頂き、

 残っている貴族の方々と協議を行って下さい」

 視線が、数万の兵を静かに見渡す。

「その上で――各国の代表者を選出して頂きます」

 一拍。

「その者を、後の領主候補――第一候補者とします」

 そしてーー

「ゲンセン、ヤバレス両国は国土が広いため、

 東西に分割し、それぞれ一名ずつ代表を決めて下さい」


 凛とした声が、戦場に響いた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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