第45話 緊急信号
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「ただいま~」
「うわっ……急に目の前に現れるなって、
いつも言ってるだろ?
迷宮に変化ないって事は、
まだ攻略出来てないんだろ?
レベルアップはひとまず置いて、
さっさと先を急ごうぜ」
「ああ、もう良いの。
ここの迷宮のボス、
あの女の人、見た事ないって」
「はあ?ボス部屋に行って、
迷宮のボスに会ったのか?」
「うん。
なんかすごく怯えてて、可哀想になっちゃって……
聞きたいことだけ聞いて戻ってきたの。
虫だし……」
「虫?悪魔だろ?違うのか?
それに……怯えてって、エルフィーにか?」
マックスは眉をひそめる。
「この迷宮は、七つの未踏迷宮の中でも、
最難関って言われてるんだぞ?
最強クラスのボスだ……それが怯える?
……何が起きてる?」
「この迷宮、26層より下は、
何にも憑依していない〝純粋な悪魔〟なんだって。
それを私がバッサバッサ倒してたから、
意味が分からないって、怯えてたみたいよ?」
「バッサバッサって……
何で倒せる?俺にも意味不明だな?」
「私だってよ?
このレイピア……レピちゃんの能力かしら?」
(そんな訳あるかい……あんたが前世、神で、
今でもその力を有しているからだろ?
……とは、言えないけどな)
アカシックは心の中で呟く。
「アカシック。このレイピアにそんな効果がある?」
「私のデーターには、該当する記録はありません。
鑑定しても、特別な対悪魔能力は確認できませんね」
「そう?不思議……」
「じゃあそろそろ戻るか」
と、その時だった。
「……ん?」
マックスの視線が、
エルフィナの胸元に吸い寄せられる。
「おい!エルフィー!
お前のペンダント、光ってないか?」
「えっ?」
エルフィナが視線を落とす。
次の瞬間――
「た、大変……!」
ペンダントが、ただ光っているのではない。
脈打つように、強く、激しく、明滅していた。
「緊急信号だ。何かあったかも?
急いで地上に上がって、エスティアに戻んなきゃ」
「大変って誰がやばいんだ?」
「え?分からない……誰だろ?
おかしい……全部反応してる……
メアリーの他、大切な人達……
それにティアとブルズ 2匹の聖獣にもつけてるの。
誰の危機なのか分かるはずなんだけど……」
エルフィナの表情が、初めてはっきりと曇った。
「故障……? それとも……
まさか……全員……?」
一瞬の静寂。
そして次の瞬間――
「……ダメ。こうしてられない。
今すぐ戻る!」
ーーーー
「エル姉!大変よ」
転移した瞬間、駆け寄ってくるメアリー。
その顔は、明らかにただ事ではなかった。
「メアリー!? どうしたの?」
「アルバス、ゲンセン、レコロ連合、ヤバレス、コーラン法国……
5カ国が共闘して宣戦布告してきたの!」
「……!」
「もしマック兄が来たら、
すぐ城に戻るようにって……!」
「……そうね……」
エルフィナが静かに目を細める。
「もう、マックスに、
国の実権が移りつつあるものね……
だから言ってたのに……
私に付いて迷宮なんて行ってたらダメなのよ」
「……分かってるさ」
マックスは苦笑する。
「分かってるけどな……
なんか、めんどくせえ……
って言ったら怒られるんだろうな」
ぽつり、と本音が漏れる。
「……エルフィーといる時間が、
どんどん減っていく……」
ーー城に戻ったマックス。
「マックス王太子!お帰りなさい!」
「おおまかな話は聞いた。
もう敵軍は動いてるんだろ?
詳しく報告しろ」
「敵兵、約10万。
北の砦に向けて進軍中です」
「……早いな」
「宣戦布告の書状はこちらに」
受け取り、目を通すマックス。
そして、目が細くなる。
「…………エルフィナを無条件で引き渡せ、か……
ふざけるな……」
静かに吐き捨てる。
「なぜエルフィーなんだ?……」
「エルフィナ様が伝え聞く通りの存在であれば、
今後、エスティア王国が、
世界の主導権を握るのは避けられない……
それを恐れ、各国が手を組んだのでしょう」
「……バカだな」
マックスは鼻で笑う。
「エルフィーは〝伝え聞く通り〟じゃないぞ?」
一拍置いて、
「――その遥か上だ……
敵対するなど自殺行為も甚だしい」
ーーーー
敵ー各国中から集まる魔道士、その数1000。
連合軍の最前列に並んで、ものすごい圧だ。
凄まじい魔力の奔流が、一点に集中していた。
炎、氷、雷、爆裂――
あらゆる属性の魔法が、絶え間なく叩き込まれる。
「クソ!まだ破れんのかあの結界?
3日だぞ! 3日間、撃ち続けてるんだぞ!?」
それでも――
びくともしない。
エルフィナの張った結界は、
ただ静かに、そこに在り続けていた。
まるで、神にでも守られているかのように。
国境沿いには10万の敵兵が集結していた。
それに対して、当初エルフィナが
〝ちょっと交渉してくるわ〟
と言って向かったエスティア王国の砦。
大人しく投降せよとの一点張りで、
全く交渉に応じる様子は無かった。
だったらここに居ても無駄だと、
全騎士をそそくさと撤退させて、
砦はすでに無人。
敵は、近づくことはもちろん、
高台にあるため、中の様子を見る事も出来ず、
敵はそのことに気付かない。
誰もいない場所に、
3日間、全力で攻撃を続けていた。
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