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第41話 お前も随分変わったな

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「それが本当なら、

  とんでもない事じゃないエル姉……」

「でしょ?」

 エルフィナが、どこか自慢げに胸を張る。

「貴方見かけによらず凄いのね?

 そんな小さなナイフの身体なのに、

  よくそんなに膨大な知識が入るわね?」

「まだまだ幾らでも情報を貯められると思いますよ?」

 アカシックは、得意げ……というより、

 少し誇らしげにそう答えた。

「この宇宙は、無にも等しい極小の一点から、

 ビッグバンと呼ばれる大爆発によって誕生した……

 という説がございます。

 ならば、見た目が小さなナイフだからといって、

 その内部に宇宙丸ごと入らないとは、

 言い切れません」

「うわあ……貴方、言ってる事が、

 ほとんど分かんない……」

 メアリナが、少し引きつった笑みを浮かべる。

「でも不思議ね……

 貴方、大きさも形も、自由自在みたいだしね」

「私、今はペーパーナイフの姿ですが、

 元は剣……知ってますよね?

 しかし、それ以前はこの星の上空を彷徨う、

 そこそこ大きな球体でした」

「えっ?初耳なんですけど?」

 エルフィナが、ぱちぱちと目を瞬いた。

「なんで剣になっていたのよ?」

「時々、小さくなって地上スレスレに飛んで、

 この星を観察していたのですが、

 あの迷宮の入り口に近づいた時、

 迷宮のコアに捕まってしまったのです。

 そして早く外へ出たかった私は考えました。

 どうすれば、

 より早く迷宮の外へ持ち出されるのか――と」

「それで剣?」

「はい。

 ドロップ品や宝箱の中身として最も“それっぽい”形状が、

 剣だったからです」

「変なとこだけ妙に合理的ね……」

「褒め言葉として受け取っておきます」

「早く言ってよ」

 エルフィナが呆れ顔になる。

「何にでも姿を変えられるんだったら、

 最初から可愛いペンダントとかに、

 してくれれば良かったじゃない。

 私、ずっと胸元にペーパーナイフつけてる、

 ちょっと危ない子みたいになってたんだけど?」

「胸にペーパーナイフ、お似合いでしたよ?」

「……〝消え去れ〟するわよ?」

「…………」

 エルフィナがじとっと睨むと、

 アカシックは露骨に気配を薄くした。

「ところで、アカシック。〝ビッグバン〟だっけ?

 この世界は創造神様がお作りになったんじゃ無いの?」


「…………」

 アカシックが、ほんの僅か、言葉に詰まる。

「創造神様が、

 ビッグバンを起こした可能性もございますし、

 ビッグバンそのものが、

 創造の現象だったとも解釈出来ます。

 ……さあ、どうなのでしょうね?」

「急に歯切れ悪くなったわね」

「神の領域については、

 私にも記録が万全ではありませんので」

「ふ~ん……」

 エルフィナが、少しだけ訝しげに目を細める。

 だが、それ以上追及しようとしたところで――

「あの……」

 場違いなほど小さく、

 しかしはっきりした声が割り込んだ。

「私を居ないもののように扱うのやめて頂けません?」

「「黒猫がしゃべった!」」

 マックスとメアリナの声が、またも綺麗に揃う。

「ああ、この子はチッチよ」

 エルフィナが、黒猫をひょいと抱き上げた。

「リッチーのチッチ」

 リッチッチからチッチに変わった。いや殆ど一緒。


「リッチー?」

「そ」

 エルフィナが頷く。

「黒マントの髑髏さん……

 あ、今は可愛い黒猫ちゃんか。

 この子も、いつの間にか私の眷属なんだって」

 人には変化できず、黒猫の姿をしたチッチは、

 艶やかな黒い毛並みに、

 小さな黒マントまで羽織っていた。

 しかもそのマント、

 見た目だけでなく妙に似合っている。

 いや、むしろ可愛らしいのが腹立たしい。



「ママ、私も忘れないでね?」

 ふわり、と。

 淡い光が、エルフィナの肩口あたりで弾けた。

「エレーナちゃん。起きたの?」

「あれ?」

 マックスが、じっとエレーナを見て目を丸くした。

「エレーナ……エルフィーに似てきたな?」

「そお!?」

 エルフィナがぱっと表情を輝かせる。

「うん、前よりずっと似てる!

 しかも、更に美人さんになってきたのよね~」

 メアリナが同意する。

「うむ」

 スカイまで腕を組んで頷く。

「以前は、

 ただの可愛い精霊という感じであったが……

 今は、こう……お嬢の雰囲気を、

 そのまま小さく写したような感じだな」

「そこまで?」

「いや、マジでそう見えるぞ?」

 マックスの言葉に、エルフィナは少し嬉しそうに瞬く。

「ママに似てるって」

 エレーナはそう言って、

 嬉しそうにエルフィナの頬へすり寄った。

 その仕草は甘える子供そのもので、

 前の、ただ無垢に漂うだけの精霊とは明らかに違う。

「ママの魔力、前よりもっと、きれいで、あったかいの。

 だから私、もっともっと、ママみたいになれる気がする」


 マックスはふと、

 少しだけ真面目な目でエルフィナを見る。

「……エルフィー、お前も随分変わったな」

「え?」

「前は、もっとこう……

 目立たないようにしてたっていうか。

 お淑やかっていうか……

 いや、元々中身は大概だったけど」

「最後、褒めてないわよね?」

「でも今は、隠そうとしてない感じがする。

 堂々としてるっていうか……

 自然体になったっていうか」

 エルフィナは少しだけ黙り、

 それから肩をすくめて笑った。

「貴方には、あんまり変わってないと思うけど?」

「……そうかもな」

 マックスも、少しだけ笑う。

 確かに中身の芯の部分は、昔から変わらない。

 誰かの為なら平気で無茶をし、

 自分では大した事じゃないみたいな顔をして、

 平然と規格外をやらかす。

 けれど――

 纏う空気は確かに変わった。

 以前の彼女は、

 存在を小さく縮めて生きていた。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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