第38話 不死王リッチー
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「ここが最下層のボス部屋か?」
スカイが周囲を見渡す。
「趣味の悪い装飾の扉だな?」
「えぐっ……
いかにもアンデッド系って感じで、
センス最悪……」
エルフィナも頷く。
「さあ開けるわよ」
〝ギイイィィィ~~〝
「おや?」
スカイが眉をひそめる。
「ボスどころか、
何もおらんな……どうなっておるのだ?」
「油断させといて……って罠でもないみたいね」
「あそこの台座を見てみろよ」
アカシックが指す。
「あれ迷宮のコアじゃないか?粉々に割れてるぞ?」
「ここは未到の迷宮であろ?
誰も来た事のない部屋のはずなのに、
何故コアが割れてる?」
スカイの声が低くなる。
「いや違うな?」
首を振る。
「あれがコアのはずはない。
コアは最後の部屋の、
更に地中深くに存在しているはず……
どういう事だ」
「ねえ?スカイ。
ここにもドロップ品とかの、
ストック部屋あるかしら?」
「そりゃあまあ……あるんじゃないか?
あの窪んだあたりが怪しい……
隠し扉が有りそうだな」
「ここ?スカイの所もそうだったけど、
ここも隠し扉なのかしら?」
「だったら俺に任せな」
アカシックが前に出る。
「統計的にはこの辺をこうして……」
〝にゅっ〟
アカシックから小さく可愛い手が出てくる。
「あんたナイフなのに、手が有ったのね?」
「ほっとけ」
〝ギイイィィィ~〝
「ほら開いた……ん?
ドロップ品どころか、何も無いぞこの部屋……
コアが割れて機能を果たしてないんだな?
いやあれはコアじゃないんだっけ?」
「ストック部屋にしては少し狭いな?
違うのではないか?
……ここはやはり何か変だな?
上にはアンデッド系の魔物が存在していたのに、
コアが破壊されていて、
機能を果たしてないのなら、
魔物が出るわけない……
やっぱりあれは、コアではないな」
「確かに。ただの洞窟になっているはずですね……
あるいは迷宮が崩壊しているはず?
私のデーターでは、
この様な状態の迷宮は、記録にございません」
「なんでいちいち話し方変えるのよ?
疲れないそれ?」
「私の矜持ですので」
「う~そだ~~」
〝カコンッ……〟
〝ゴゴオオオオォォォォォ〝
「あ、あれれ?何かを踏んじゃった?……」
〝キャ~~~~~~ァ!〝
その途端、突然床が抜け真っ逆さま。
30m程落ちるエルフィナ。
「いった~い!ちょっと~スカイ、
あんた飛べるんでしょ?
何で助けてくれないのよ?
も~役に立たないんだから」
「無理言うな!ドラゴンの姿でなくては飛べん。
こんな狭い所で、
ドラゴンの姿になれる訳なかろう?」
「フフフフ……」
不気味な笑い。
「貴様ら……
もう2度と、そこからは出られんぞ」
「が、骸骨?キモっ!あんた何よ?」
「我はこの迷宮の支配者……
不死王――リッチである。
ここには何もない……
そう騙されて、とっとと帰れば良かったものを……
もはや、その空間から出る事は出来んぞ」
「あれは、アンデッド系の最上位の魔物です」
「えっ?て事は、あいつも、
もう既に死んでるって事?
じゃあこれでどう?消えろ~!」
「グワッハッハ!」
高笑い。
「その空間は、女神が宿る最高上位の魔石を使い、
結界を張っておる。
その中では、どんな魔法も起動せんぞ?
もちろん、出る事も叶わぬ」
「女神?アカシック、何かわかる?」
「鑑定――」
アカシックが光る。
「う~ん、違いますね。
女神など宿ってはおりません。
ただ、何やら神聖な魔力が残っているのは確かな様です。
この中では、魔法が使えないと言うのは本当かと……」
「お嬢、あんな魔石、レイピアで切っちまえよ?
強度はそれほど高くないと思うぞ」
「じゃあ、やってみるね」
「ちょっとお待ちを……」
アカシックが止める。
「何?アカシック?」
「あの神聖魔力は、
エルフィナ様の魔力と、
相性が悪いかもしれないです。
ぶつかれば反発して、
大きな爆発が起きるかもしれません」
「そう?私は〝神の愛子〟かもでしょ?
何で神聖魔力と相性が悪いの?
本当に反発する?」
「お嬢の魔力は、邪神寄りなんじゃないか?」
「あ゙?こんな可憐な美少女の魔力が、
邪神のわけないでしょ?」
「可憐な美少女?ついこの前までは、
醜いオークと言われておったのだろ?」
「あっ……って違うわよ!!」
「私にも、理由はわかりませんが、
鑑定では相性が悪いとなっております」
「ママ……私、力……貸す?」
「エレーナちゃん?何かできるの?」
「エレーナさん……精霊の力が有効だとしても、
貴方の魔力も、エルフィナ様の魔力。
同じく相性が悪いです」
「グワッハッハ!諦めろ。
そこで朽ち果てるが良い!」
「あ~何かイラつく奴ね~。
も~良いわ!爆発しても、結界があるし……」
「だから、魔法は効かないと、
言っているではないか」
「お嬢!や、辞め……」
「あ~~~~、せぃ~~!」
〝カッキ~~ン!〝
「あれれ?簡単に切れた……真っ二つよ?
爆発もしなかったわね?」
「しなかったわねって、
結界が張れんのに……
ん?そうか、
ここに入る前から結界は貼ってあったな?
張っておいた結界魔法の効力まで、
無くなる訳ではないのかもな。
まあ、賭けみたいなもんだったが……」
「まあ結果オーライね」
にっこり笑う。
「さあ、そこの〝リッチッチ!〟覚悟は良い?
ボコボコにして、色々聞くんだからね?」
「はい、降参です」
「あんた、そもそも、騙して帰そうとしたり……
私達に勝つ自信ない……えっ?何て?」
「はい、ご推察の通りでございます。
それと私にわかる事でしたら、
何なりとお尋ね下さい。我が君」
「へ?……〝我が君〟?」
「あのリッチー、今光りましたよ?」
「うん、光ったな」
「え~と……名付けしちゃったって事?」
「その通りでございます。既に私は貴方様の眷属。
貴方様に仕えられ、ありがたき幸せ」
「相手の同意なしに、良いの?」
「実は……ボコボコにされるより、
内心、貴方様に付けないかと、
そう思っておりましたので……」
「それは良いけど……あんた、
〝リッチッチ〟で良いんか?……」
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