第35話 迷宮のラスボス、青のドラゴン
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「さてはお前馬鹿だな?」
「失礼ね!」
即座に言い返す。
「学園始まって以来の天才って、
呼ばれてますけど?」
「いや……」
深くため息をつくドラゴン。
「それにしては無知すぎだろう?
トカゲやワイバーンが喋ってたまるか……
ここは最下層のボス部屋だぞ?我を良く見るのだ。
どう見ても、どう考えても、
ワイバーン如きのはずがあるまい?」
ゆっくりと、翼を広げる。
「我は、この迷宮のラスボス、
青のドラゴンである。びびるが良い」
「へ~~ドラゴンさんか……」
ぽけっとした顔。
「えっ?ラスボス?ここ最下層なの?
何で5層から、いきなり最下層?」
ドラゴンが目を細める。
「さてはお前、
ランダムに飛ばされるトラップにかかったな?
しかし最下層に飛ばされるとは、随分不運だな?
ランダムとはいえ、万に一回もない確率だぞ」
「あら?」
エルフィナが首を傾げる。
「ラッキーなんじゃない?
面倒な途中をパスできたんだから?」
「ラッキーな訳あるかい!」
思わず叫ぶドラゴン。
「ここは、我を倒さなければ、
出ることが出来んのだぞ」
「ねえねえ」
完全スルー。
「この絵の女性知らない?」
夢で見た情景を、精密な絵にして、
見せるエルフィナ。
「お前……」
ドラゴン、固まる。
「我の話聞いていたか?
何普通に〝朝ごはん何食べた~?〟みたいに、
我に話しかけているのだ?」
「えっと……」
少し考える
「スクランブルエッグに、ハーブソーセージと……」
「だからそうではなく……
はぁ……」
深いため息。
「なんか調子狂うな……
今気づいたが、何だお前の、馬鹿げた魔力量は?
神に最も近いと言われる、我らドラゴンのそれを、
遥かに凌駕していないか?
あっ……もしや貴方様は、女神様なので?
そういえば……はるか昔にお会いした様な……」
「ブッブ~!違います~人間です~」
「真似しやがって……ん?そうだ……
先ほど見た絵の女子にも会ったことある様な……」
「えっ?」
ぐいっと距離を詰める。
「ここにいるの?いきなりビンゴ?」
「ビンゴ?何だ?落ち着け。
会ったかもって言うのは、
最近ではないぞ?はるか昔の記憶じゃ……
少なくとも今ここにはおらんぞ?」
「え~そうなの?そう簡単には見つからないか……
じゃあ、もう良いや……」
あっさり引く。
「貴方倒して帰るね」
「なんだ……ちゃんと聞いておったのか……
そして我を倒すと?」
「別に倒さなくても、魔法で帰れそうだけどね?」
「それが出来るのだったら、そっちで頼むぞ?
どうやろうと、お前に勝てそうな気がしない……」
「う~ん……どうしようかな~?貴方倒すと、
何か凄い物ドロップするんでしょ?
私には防具は必要ないから……
なんか、すんごい剣?
そんな感じの武器が欲しいのよね」
「そんな感じって……雑だな。
その魔力……攻撃は魔法で十分。武器などいらんだろ?」
「私、これでもSSS級の冒険者なのよ?
安物の剣って、様にならないんじゃない?
格好って大事だと思わない?」
「お前だったら普通、
剣ではなく、杖なんじゃないか?」
「そうかしら?
私、魔法よりも剣の方が自信あるんだけどな?
試してみる?」
剣を軽く振る。
「……〝止めとけ〟……と本能が言っている……」
「ねえこれ見て。これ、学園支給の量産品なの。
ちょっと安っぽくない?
私この剣しか持ってないの」
「ああ、確かにその剣では我の鱗は貫けないな?」
「そうでもないわよ?ほらっ!」
〝シャキーン!〝
横の岩を、軽く一閃。
真っ二つ。
驚きで目が飛び出しそうな青のドラゴン。
「こんな剣でも、魔力を込めると、
結構切れ味いいわよ?」
「……だったらその剣でよいではないか?」
「やーよ?絵にならないって言ったでしょ?
すんごい剣が欲しいの」
「なんだよ?その、〝すんごい剣〟て?……
まあよい、ちょっとこっちに来てみろ」
「わ~人の姿にもなれるのね?
可愛いじゃない?」
「この先の入り口は、
ドラゴンの姿のままでは、
狭すぎて入れぬからな」
「貴方、年齢幾つなの?
その姿、まるで10歳かそこらの少年じゃない?」
「年齢は分からないな。
迷宮の地下に篭りきりだからな?
さっきも言ったが、大昔の事を覚えておるから、
それなりの年齢なんだろうな……
うん千歳ってところか?」
「その姿でその喋り方……合ってないわよ?」
「ほっとけ……こう見えても、
うん千歳と言ったであろう?」
「めっちゃ、お爺ちゃんじゃない……」
忖度ない……
「あ!何この部屋?お宝の山?」
思わず目を輝かせる。
「この迷宮のドロップ品やら、
宝箱の中身の貯蔵庫って言ったところかな?
ここから自動的に、迷宮全部に配置されるのだ。
減ったら減った分だけ、直ぐに補充され、
常に一定の量を保っているんだぞ?」
「へぇ~……すごい仕組み」
「ねえねえ、剣ある?」
「いくらでもある。
好きに持っていけ」
「やったぁ!!良いの?」
「ハハハ……子供のようだな」
「ねえねえ?
このお宝って、どうやって補充しているの?」
「さあな?我が補充しているのではないからな……
迷宮のコアの力とかなんじゃないか?
詳しくは知らん」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




