第33話 冒険者登録
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
〝トン、トン――ストン! ヒュンッ!ヒュンッ!〟
岩壁を蹴り、空を裂くように加速する。
まるで風そのもの。
常人では視認すら出来ない速度で、
エルフィナは迷宮の奥へと駆け抜けていた。
「……あれ?」
ふと足を止める。
「スライムはもちろんだけど……
何も出てこなくなったわね?」
周囲は、妙に静かだった。
「……もしかして」
ぽつりと呟く。
「〝出なくていいのに〟って思ったから?」
少し考えて――
「……うん、思ったわね。心の底から」
ぱっと顔が明るくなる。
「え、ちょっと待ってすごくない!?
もしかして私の魔法……進化してる?
コツ、掴んじゃった感じ?」
==独り言が多すぎる。
「ん?」
辺りを見回すエルフィナ。
「……進化……いや、ないわね。
そんな都合よくいくわけないか……
だって、意識してやったわけじゃないし」
腕を組んで考え込む。
「今度は意識して――」
……っていうか……
魔物出ない迷宮って、雰囲気台無しじゃない?
せっかくの初探索なのに……」
ふっと笑う。
「……やめやめ」
手をひらひら振る。
「モンスターさん、出ておいで~?」
〝キシャァァ!!〟
「キャァァ!?」
驚き叫ぶエルフィナ。
〝ドグシャ!!〟
反射的にゴブリンを一刀両断。
「ちょ、出てきてとは言ったけど……
いきなりはびっくりするでしょ!?」
足元には――潰れた肉塊。
「……え?」
「なにこの……グロい物体……」
==貴方が、今潰したゴブリンですけど?
「キモっ!先に進も!
ありゃ?うじゃうじゃキモいのが出て来た。
何なのよこれ?」
==もう一度言いますが、
貴方が出てこいって言ったから、
出てきたゴブリンですけど?
「やだ~臭~い……緑の血で汚れる~
……あ~ん!も~帰りたい……」
==何だこの我儘なお嬢さんは?
1点の曇りもなく、
澄み切った心を持っているんじゃなかった?
神様?
「テヘッ!」
==テヘッじゃねーよ。
「誰よ?さっきから……ごちゃごちゃうるさいの?」
==あ、すいません作者です……テヘッ……
「スライムでしょ?ゴブリンでしょ?
そうすると次は……嫌な予感?
お約束だと、そろそろよね?遭遇したくないな~」
==それは、フラグってやつです……
〝グモォ~~!〟
「あちゃ~ フラグたてちゃった……」
重い足音。
巨大な影。
「……オークぅぅぅ!!
やだやだやだ!遭遇したくなかったのに!!」
〝グモォ~~!〟
「ちょっとタイム!
貴方達とは戦いたくないのよ?
お願い、通して」
〝グモ?〟
「え~と……この顔でどう?」
〝グモォ~~!グモォ~~!グモォ~~!〟
「ちょっと……何よ?仲間よ?仲間……顔似てない?」
〝グモォ~~!グモォ~~!グモォ~~!〟
「何言ってるんだかわからないわよ~」
――その瞬間。
言葉の意味が、ふっと理解できた。
〝グモォ~~!グモォ~~!グモォ~~!
(気持ち悪いぞ!このブサイクな雌オークめ!)〟
「ま~ひどっ!
オークとしても、この顔ブサイクなの?」
〝グモォ~~!グモォ~~!グモォ~~!
(近づくな向こうへ行け!このブサイク雌オークめ!)〟
「あんた達が向こうへ行きなさいよ!」
〝グモグモ〟
――すごすご退散。
「あっ……行ってくれた……」
考え込む。
「余計なこと考えない方が、上手くいく……?
……分かんない……混乱するわね……」
ふぅ、と息をつく。
「……それにしても……
オークにブサイクって言われるの、
地味にショックなんだけど……
へこむわ~ちょっと休も……」
手頃な岩を見つけ、腰掛けるエルフィナ。
〝カコン〟
「……え?」
〝ガクン〟
足元が消えた。
〝ゴロゴロゴロゴロ……ドッシャ~ン!〟
「いった~い!結界魔法どうしたのよ~」
はっとする。
「あっそうか……攻撃されたんじゃないから?
こう言う時にも防御出来る様に、調節しなきゃ……」
周囲を見回す。
「ここどこ?落っこちちゃったけど……
いったい何層なの?」
「そうだ」
ぽん、と手を打つ。
「冒険者カードーーあれ、
どこにいるかわかるんだったわ。
迷ったけど、
やっぱり冒険者登録しといてよかったわ……」
ーーーー
ーー数日前……
「エルフィナさんですね?
まずはこれで魔力量を測って下さい」
「……あの……それ、砕けます」
「え?」
「たぶん、ですけど」
「……では、こちらの少し大きいものを」
「あの……」
ちらっと奥を見る。
「あそこにある、大きい魔石でもいいですか?」
「あれですか?最大級の測定魔石ですよ?
飾りみたいなもので……
今まで使われた事はないと聞いてますが?」
「子供の時に、
あれより少し小さいのを破壊してしまって……
やっぱ、あれでも無理かも?」
「えぇぇぇ!?」
「シーッ!」
「目立ちたくないんですってば……」
「う、嘘ですよね~?」
「だから……大きな声出さないで……」
「この暑いのに、
フード付きコート着ている時点で、
結構目立ってますよ?」
「い~んです。これで……」
「でも困りましたね?これより大きいのは……
う~ん……あ、そうだもしかして、
ギルドマスターの部屋の倉庫で、
もっと大きいの見たかも?
こちらに来てもらえます?」
「はい、むしろ人目につかなくて助かります」
「ギルマス。ちょっと、よろしいですか?」
「何だ?」
「倉庫の測定魔石で、この方の魔力量を計りたいのですが」
「馬鹿言うなよ?あれを、ちょっとでも光らせるのは、
A級冒険者の魔道士でも無理だぞ」
「でも、この方が言うには、
それ位でないと破壊しかねないと……」
「誰だそんな事を言うのは?」
「本日、冒険者登録に来られた……」
「はあ?初心者が?」
ギルドマスターと視線が合う。
「あっ……貴方様は……」
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