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第31話 直感、かな?

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「ねえエル姉。なんだか不思議よね?」

 メアリナが、ふっと空を見上げる。

「あれよあれよと言う間に、

 2人とも別々の国の、未来の王妃だもの……」

「王妃、ねぇ……

 一度は婚約破棄されて、ほっとしたんだけど……」

 エルフィナは肩をすくめる。

「正直、全然柄じゃないわよ?

 私なんて、ついこの前まで、

 オークそっくりって、

 いないもの扱いされていていたんだから……」

「そうよね……」

 メアリナがくすっと笑う。

「それが今じゃ、皆の憧れ。

 国一番の……ううん、世界一の美女だもんね?」

「……やめてよ、そういうの」

 軽く頬を膨らませるエルフィナ。


「ねえ?そう言えばあの絵はどうしたの?」

 メアリナが思い出したように言う。

「ああ、あれね」

 エルフィナは少し視線を遠くへ向ける。

「ちゃんと調べたわよ?

 あの絵を描いたのは……

 インザシア国の、若い画家さんなんだって。

 そしてあの絵のモデルさんは、

 その方の奥さんだそうよ」

「へ~……で、エル姉と、

 その奥さんとの接点は、何かあったの?」

「……それがね」

 少しだけ、間を置く。

「やっぱり何もなかったわ……

 そもそも他国の方だしね。ただ……」

「ただ?」

「変な夢を見たのよ……」

 ぽつりと呟く。

「あの女の人と、不思議な場所で、

 楽しそうにおしゃべりしてる夢」

「不思議な場所?」

「……真っ白なの」

 目を細める。

「この世界とは思えない場所……

 全てが白く、足元は雲の中……そんな所……

 もちろん、行ったことも見たこともない、

 御伽話(おとぎばなし)の世界の様な場所……」

「へ~……エル姉の場合……」

 メアリナがじっと見つめる。

「ただの夢じゃないわよね?きっと……」

「さあ?どうなんだろ?」

 少しだけ曖昧に笑う。

「その夢に、どんな意味が、あるのかしら……

 ねえ?エル姉、

 その女の人に会いに行ってみたら?

 エル姉だったら、他国とは言え、

 そんなに時間が掛からず、行けるんじゃない?」

「うん、実はもう行って来たのよ」

「えっ?もう?ほんと?」

 驚くメアリナ。

「そんなに時間が掛からず……とは言ったけど……

 行ったことない場所には、

 転移魔法でも行けないんでしょ?

 もしかして行き先でも見えたの?」

「ううん。違うの。見えたわけじゃないの。

 ちょっと思いついたことがあって……

 え~とね~ ず〜っと遠くを見るでしょ?

 雲でもなんでもいいんだけど、

 目印を見つけて……

 よし、〝あそこ迄〟って移動するの……

 それでまた遠くを見て……

 それの繰り返し。

 案外早く行けたわよ」

「遠くか……ずっと遠くの空は、

 何百kmも離れてるんだもんね。

 それを一瞬で移動出来るわけか……納得。

 あ、でも、雲を目標にしたら空の上じゃない?」

「ふわ〜って飛び(おち)ながら、

 急いで次の目標を決めて……

 スリル満点よ」

「私、高いとこをから落ちるなんて絶対無理……

 で、どうだったの?あの人に会えたの?」

「ううん、会えなかったわ。

 3年前に忽然と姿を消したんだって……」

「あの絵を描いた画家のご主人は?

 その人にも会えなかったの?」

「ご主人も……

 その時から姿が見えなくなったそうよ?」

「謎のままか……」


「でもね、さっき言った夢には、続きがあって……」

「何?続き?」

「またしても不思議な雰囲気の場所……

 そこに彼女が見えたんだけど、

 前とは同じ場所じゃないの。

 同じように白い世界なんだけど……

 今度は、もっと狭くて……

 彼女が、ひとりでぽつんと立ってるの」

「……ひとりで?」

「うん。

 前の夢の彼女は楽しそうだったのに、

 その時は――なんか違った」

「……寂しそう……だったとか?」

「うん。そんな感じ……

 ……どこかに閉じ込められてるみたいな……

 多分あそこは出口が無い場所……」

「それ……」

 メアリーが息を呑む。

「どこか分からないの?」

「分からない。でもね――」

 ゆっくりと……慎重に言葉を選ぶ。

「彼女が、〝どこかに入っていく姿〟が見えたの。

 そこが何処だか全く分からないのだけど、

 あれは、何処かの迷宮の中じゃないかと思うの」

「迷宮?どうしてそう思ったの?」

「直感、かな?

 でも、あの雰囲気……普通の場所じゃなかった」

「前も言ったけど……あれは迷宮よ?ママ……」

「って、この子も言ってるし……」

「エレーナちゃん、そこがどこだか知ってるの?」

「直感、かな?」

「…………あ、そう……」

「迷宮だとすると、

 行方知れず……つまり……

 誰にも発見されてないのだから、

 世界に有る未踏の7つの迷宮……

 そこのどこかの様な気がするの」

「まさか……エル姉?」

 メアリーがじっと見る。

「ちょうど夏の長期休暇中だしね……」

 あっさりと言う。

「まあ、中まで入らなくても、

 入ってくところを見たんなら、

 入り口を見れば分かるかもね」

「それが……夢では周りの様子が霞んでて、

 よく分からなかったのよ……

 入って探してみるしかないかなって」

「この休みに7つの迷宮を制覇するつもり?

 世界トップクラスの危険地帯よ。

 まあ、エル姉なら出来る気がするけど……」

「最初の迷宮で見つかるかもでしょ?

 まあ、行ってみるわ。

 モヤモヤしたままじゃ、嫌だもの……」

「気をつけてね。大丈夫だと思うけど……

 無理しちゃダメよ。大丈夫だと思うけど……

 誰かついてってもらう?1人でも大丈夫だと思うけど……

 ねえ?本当に大丈夫?」

「面白いわね?メアリナ……貴方こそ大丈夫?」

「ハハハ……」

「フフフ……」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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