第23話 空間移動で〜す
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「なあエルフィー、
俺にも結界貼るって言ったよな?」
「もちろんよ? 何、イヤなの?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどさ……
俺、攻撃には自信あるんだよ。
それで防御まで完璧になったら、ほぼ無敵だろ?
大歓迎なんだけど……
ただ、ふと思ってな……髪、切れなくならないか?
ハサミ入れたら弾かれるとかさ。
一応、俺もアンカーも王子だぞ?
ボサボサ頭はマズいだろ?」
「大丈夫よ。
皮膚の表面にだけ張ってるから、
髪は普通に切れるはずよ?
……あっ」
「なんだよ、その〝あっ〟は」
「お風呂で身体、洗えなくなったりしないわよね?」
「ハハッ、やめてくれよエルフィー。
それ一番困るやつだろ。
俺だけじゃなくて、お前たちも困るぞ?」
「優しく擦れば大丈夫……だと思うけど……
う~ん……思いつきでやったし、
改良の余地たくさんあるわね……」
「エル姉、それなら、
〝敵意のある攻撃だけ弾く〟ようにしたら?」
「そんな細かい条件、簡単に付けられるか?」
「あら、出来るかもよ?
結界魔法は得意だって言ったでしょ。
〝こうしたい〟ってイメージすれば、
案外すんなり形になるのよ」
「それが出来たら……
完全に反則級ですね、姉上の魔法は……」
そう言いながらエルフィナは、
アンカーと自分に結界を張り直し、
さらにメアリナとマックスにも次々と展開していく。
「お前、結界魔法は得意だって言ってたけど、
いつからそんなに結界を張るのが、
上手くなったんだ?」
「ああ……ほら、近付いてほしくない人とかいるでしょ?
バカ王子とか、貴方の兄とか……」
「どっちも一緒じゃね~か」
「性懲りも無く、まだコソコソと、
纏わりついて来るのよ?まるでストーカー……」
「……必要な時はちゃんと魔法使えるんだな、お前」
「さあ~て……そろそろ行くわよ?
でもその前に……」
エルフィナの視線が、護衛たちへと向く。
「ねえ?アンカー……
そちらの護衛の方達は、信頼出来る方々?」
「ええ、全員信用のおける者達ですよ?
どうかしましたか?」
「そこの落ち着きがない、彼も?」
「ビンスですか?もちろんです。
幼馴染でもあるんです。
何か気になる事でもありましたか?」
エルフィナはゆっくりと歩み寄り、
ビンスの顔を覗き込む。
「ビンスさんですか?
貴方何故そんなに汗をかいているのです?
ご存知かどうか知りませんけど……
私、呪いで色々酷い目にあってきたので……
それで自然と、他人の顔色に敏感になって……」
にっこりと微笑む。
「貴方、何か隠していませんか?」
「い……いえ、そんな事は……」
「私ね、少しだけ未来が見えるの。
大丈夫、安心して。貴方に悪いことは起きないわ。
だから――正直に話して?」
「あ……姉上……」
「アンカーは、心配しなくて良いのよ?
ねえ、ビンスさん。
例えば貴方、懐に猛毒を……」
〝シャキン!〟
言い終わるより早く、
護衛隊長オーティスの剣が、
ビンスの喉元に突きつけられた。
「動くな、ビンス!レッド、懐を調べろ!」
「隊長、これが――」
小瓶が差し出される。
「……中身は何だ、ビンス」
「…………」
「黙るか。なら――それを飲め」
「隊長さん、そんなことしなくていいわよ」
エルフィナが、ふっと肩をすくめる。
「幼馴染なんでしょ?
優しいアンカーには辛いし……
貴方だって、本当は嫌なんじゃない?」
オーティスの表情を見て、くすりと笑う。
「〝飲ませろ〟って言いながら、
すごく苦しそうな顔してるもの。
……でしょ?……オーティスさん?」
「何故だヴィンス?私とお前とオーティスは、
小さい頃からの付き合いじゃ無いか?」
「す……すみません……妹を人質に取られて……」
「誰がそんな事を?」
「申し訳ありません……言えません……妹の命が……」
「妹さんてこの子かしら?」
次の瞬間、エルフィナの隣に――
一人の少女が、まるで、
〝そこに最初から居たかのように〟立っていた。
「「「「えっ?」」」」
「エルフィー!お前この一瞬で?」
「ホ~ホッホホ~
私の得意技の一つ……って言う程、
得意技多くないんだけどね……空間移動で~す」
「ちょっと待て……それって、
〝行ったことある場所限定〟なんじゃなかったか?」
「ね!そうよね?」
エルフィナはけろっと言う。
「はぁ?〝そうよね?〟?」
「妹さんって聞いた途端、
目に浮かんだのよ……妹さんらしき女の子が!
そしたら次の瞬間、そこに居たってわけ。
びっくりでしょ?!驚き~」
「「「「……………………」」」」
「ん?驚かない?」
「驚きすぎて言葉が出ない……」
呆れたように肩をすくめる。
「出来ることは少ないのに……
組み合わせがチートすぎるだろ、それ……
お前の魔法めちゃくちゃ進化してるな……
上手く組み合わせれば、
どんな事でも出来ちまう気がするわ」
「……そんな事より……ねえねえ、
この子が妹さんで間違いない?」
「は……はい……囚われていた妹です……」
涙ぐむビンス。
「なんか、とっても大きな屋敷の、
地下牢に入れられてたわよ?」
「大きな屋敷?」
「宰相殿です」
妹の無事に安心したヴィンスが答える。
「あ……あの人が?」
「あの人ってこの人?」
「「「「えっ?宰相殿?」」」」
「ひい~~!近づくな!
このオークの化け物が~」
「あっ……あれやってるな……」
「あのビビリよう……今日のは特に凄そうね?」
「あれとは何ですか?」
「エル姉、認識阻害の魔法で、
オークみたいに見える様にしてるのよ」
「えっと……いつもの美しい姉上にしか見えませんが?」
「ああ、俺たちにも、いつものエルフィーだよ。
エルフィーに向けられている感情によって、
人それぞれ、
ずいぶん見え方が違うみたいなんだよ。
あれは、エルフィーがかけられていた呪いじゃなくて、
自分で似たような効果を発揮する魔法なんだと」
「あのね……あの人、屋敷の主人みたいだったから、
きっと関係していると思って、一緒に連れてきたのよ」
「ジオランド宰相?貴方が単独でやる訳ないですよね?
誰と共謀してこの様な事を?」
「………………」
「ギザマ~喋らんと、この場で食い殺すぞ~~」
「やだ、エル姉ノリノリ……」
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