第22話 最後までやる覚悟
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「「姉上!あそこ!何か変ですよ!」
アンカーが丘の下を指差す。
「あの服装に杖……あの姿は魔導士ですよね?
あんなに大勢…… 20〜30人はいますよ?」
「大丈夫よ。まあ、見てなさい」
エルフィナは軽く微笑んだ。
〝ド~ン!ド~ン!ド~ン!ドドド~~ン!〟
轟音が丘に響く。
「人目も気にせず、派手に始めたわね」
「結界は、本当に大丈夫でしょうか?」
「フフ……全然よ?
見て。結界に当たった魔法が跳ね返って……
光って綺麗よ?」
エルフィナが楽しそうに指差す。
空間に弾かれた魔法が弾け、光が散る。
「……は……花火みたいですね……」
「でしょ?」
エルフィナがくすっと笑う。
「夜だったら、もっと綺麗だったのに……残念」
「……呆れるほど余裕ですね、姉上」
「アンカー、姉呼びが板についてきたじゃない」
「はい……」
アンカーが少し照れながら答える。
「実の兄弟よりも、ずっと親しみを感じます……
エスティア王国に、一緒について行きたいです」
「ごめんねアンカー……」
エルフィナの声が少しだけ優しくなる。
「この国には貴方が必要よ?
帝国の民の為に、もう少しだけ頑張って。
少しだけで大丈夫だからね」
「はい。そうですよね……分かっています」
アンカーは静かに頷いた。
ーー
「ねえ、アンカー」
エルフィナがふと思い出したように言う。
「一匹ずつって言った、この子達なんだけど……
両方とも、少しだけ預からせてもらえない?」
「構いませんが……何かあるのですか?」
「この子達、すごく優秀みたいよ?」
「えっ、そうなんですか?」
「精霊王がそう言ってるの」
「……いつ精霊王と話されたのですか?」
「今よ?」
さらっと言う。
「時々、声をかけてくれるの。
敵襲も精霊王情報。
だから結界を張っておいたのよ?」
「精霊王が見守ってくれているのですね……」
アンカーが感心する。
「凄いですね……」
「……微妙?」
「なぜです?」
「ずっと見られてるって思うとね……」
「ははは……贅沢な悩みですね」
「ということで」
エルフィナがにっこり笑う。
「少し訓練させてちょうだい。
この子達、必ず貴方の助けになると思うの」
「……分かりました」
アンカーが頷く。
「好きなだけお預けします」
「うーん……そうね」
エルフィナが少し考える。
「10日くらいでいいと思うわよ」
「あっ、それでは……」
アンカーの表情が明るくなる。
「10日後には、また皆さんにお会いできるのですね?」
「やだアンカー……」
エルフィナが笑う。
「可愛いこと言うわね。
ここに一人置いてくのが嫌になるじゃない……」
(エル姉……私の……になる人なんだからね)
(やだ分かってるわよ~。
私にはマックスがいるんだから)
「あの?何か?」
「ううん、何でもないわ」
エルフィナが立ち上がる。
「それじゃあ、そろそろ城下に降りましょうか?
次は、賑わってるところに行ってみたいわ」
「じょ、城下ですか!?」
アンカーが焦る。
「大丈夫でしょうか!?離宮に戻った方が……」
「だってまだお昼よ?」
エルフィナが笑う。
「楽しいのはこれからじゃない。
それに――」
少しだけ目を細める。
「城内の方が危ないかもよ?」
「……この状況で、
まるで何の障害もないかのようですね、
姉上は……」
「何の障害もないわよ?」
エルフィナの声が少し低くなる。
「私の家族の命を狙ったこと――
後悔させてあげるわ」
「……やるのですね?」
「やるわよ?」
エルフィナがアンカーを見る。
「貴方も、それでいい?」
「もちろんです」
アンカーは迷わず答えた。
「私も最後までやる覚悟ができました」
「頼もしいわね」
エルフィナが微笑む。
「それでこそ私の弟」
「それでね」
くすっと笑う。
「さっきの花火見て思いついたことがあるのよ」
「ハハハ……」
アンカーが苦笑する。
「あれ、花火じゃありませんけどね」
「で、何を思いついたのですか?」
「こっちに来て」
エルフィナが手を差し出す。
「手、握らせて?」
アンカーが手を出す。
その瞬間――
エルフィナが魔力を流し込む。
〝パァァ……〟
眩い光がアンカーを包み込んだ。
淡く、柔らかく――
やがてその光は静かに消える。
「アンカー、腕を出してみて」
「腕?ですか?」
「そうよ。で、マックス」
エルフィナがマックスを見る。
「アンカーの腕を、貴方の剣で切りつけてみて」
「はぁ!?」
マックスが素っ頓狂な声を上げる。
「何言ってんだ?
これでも、俺の剣技は、
王国で並ぶものが居ない程なんだぞ?
そんな事したら、簡単に腕が落ちるぞ」
「良いからやって!
ああ……でも、全力で切りつけたらダメよ?」
「いや、本気じゃなくてもさ~。
アンカーに何かしたのは分かるけど、
危な過ぎるだろ?」
「違う、本気でやったら危ないのは、
貴方のほうよ?マックス」
「はあ?どう言う事だ?」
マックスが眉をひそめる。
「あの結界と同じものを、
アンカーの身体表面に貼ってみたの。
思いっきり切りつけたら、
弾かれた反動で、むしろ貴方が怪我するわよ?」
「本当に大丈夫なのか?」
「当たり前でしょ?大事な弟に、
怪我させる様な事させる訳ないじゃない」
「エル姉。でもちょっと怖い……」
メアリナが口を挟む。
「念の為、何か他のもので試してみたら?
たとえばこの花瓶とか?」
「それもそうね……」
エルフィナが頷く。
「じゃあ――」
一瞬考えて。
「私で試すわ」
「はぁ!?」
「お前に切り付けるなんて、
天地がひっくり返っても出来んわ」
「姉上を信じてますから、
どうぞこの手を切ってみて下さい」
アンカーが真剣な顔で言う。
「んん~ん……もう良いわ。えいっ!」
〝パッキ~~ン!〟
エルフィナは自分に結界を貼り、
その光が収まると、
エルフィナはマックスの剣を奪い、
自らの腕へ叩きつけた。
「お、お前何を……だ、大丈夫……なのか?」
「ほらこの通り」
エルフィナが腕を見せる。
「いやいやいや!」
マックスがツッコむ。
「この通りって、お前……かなりの勢いで、
剣を振り落としたじゃないか……」
「効果絶大でしょ?」
「姉上、こんな危険な事はもうおやめ下さい」
アンカーが真顔で言う。
「驚いて、心臓が止まるかと思いました。
お願いですから、
危ない事には、私を使って下さい」
エルフィナが笑う。
「もう……アンカーてば……ありがとう……」
「それにしても、凄い効果だな?
当たった衝撃の痛みも無いのか?」
マックスが感心する。
「全然よ?」
「マジか?凄いな……その結界、
どれ位の時間持続するんだ?」
「さあ?」
「〝さあ?〝って……
持続時間、分からないのか?」
「初めて使う魔法だからね。
多分だけど……私が解除しない限り半永久的?」
「なんで疑問形? それにしても、
それがはっきりしないとまずいな。
俺達が帰国したら、対応出来ないぞ?」
「大丈夫よ?私にかけた結界が切れたら、
アンカーの元に、飛んで来てかけ直すわ。
持続時間は大体同じでしょ?」
エルフィナが軽く言う。
当然貴方達2人にも貼るから、
誰か1人でも切れたら……ね?」
エルフィナは、にっこり笑う。
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