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第20話 食べちゃダメ!

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

「お風呂広いわね?離宮とは思えないわ……

 アンカー皇子のお母様って、

 お風呂好きだったのかな?」

 湯気の立ちこめる大浴場を見渡しながら、

 エルフィナが感心したように言う。

 離宮とは思えないほど立派な浴場だった。

 大理石の床、広い湯船、

 天井には柔らかな光を放つ魔石灯。


「そうかもね?

 それにしても一緒にお風呂入るなんて、

 何年ぶりかしらね?」

 メアリナが肩まで湯に浸かりながら笑う。

「ねえ、そういえば精霊のエレーナちゃんは?」

「いつも頭の周りを、

 光がクルクルしてたら変でしょ?

 普段は、隠れてもらってるの。

 そもそも、まだ生まれたばかりだから、

 ほとんど寝てるだけみたい」

「誰に聞いたの?」

「エレーナ本人よ。

 なんか名前をつけてから、

 急に流暢に話せるようになったのよね」

「へ〜そんなことあるんだ?」

「あれ?何これ?」

「ん?……何?」

「ううん、何でもない……」

(これって聖紋よね?)

 メアリナの首の後ろに、

 広げた羽のような模様が、

 淡く浮かび上がっていた。


「……それにしても……」

「キャッ!どこ触ってるのよ?」

「15歳にしては育ちすぎじゃない?

 〝プニプニ……〟

 きめが細かくすべすべで、

 透き通る様に白い肌」

「だからどこ触ってるのよ?」

「柔らかおっぱい。

 いつの間にこんなに育ったのかしら?」

「エル姉こそ、16歳にして、

 私より立派に育ってるじゃない……

 それに凄く綺麗だし」


「お~い!」

 突然、壁の向こうから声が響いた。

「ただでさえ1人で寂しいのに。

 なんちゅう会話してるんだよ?

 俺もそっちに行かせてくれ」

 マックスだった。

 浴場は男女で壁を隔てているが、

 上は吹き抜けになっており声が筒抜けなのだ。

「お馬鹿がまたなんか言ってるわよ?

 覗いたら許さないわよ?マックス!」


 ーー


「「キャァ~!」」

 突然何かに驚き叫ぶ2人。

「ど、どうした~!」

「「入ってくんな~変態!」」

 2人が投げた桶が、

 2個とも見事にマックスに命中する。

 〝ボコボコッ!〟

「イッテ~!」

「聖獣2匹が入ってきて驚いただけよ!」

 エルフィナが叫ぶ。

「大丈夫だから向こうに戻りなさい!」

「チェ……何だよ?心配してやったのに……」

「いいから目え(つぶ)れ~!

 桶よりもっと痛~い魔法が飛ぶわよ?」

「分かったよ。

 でも、お年頃の男子が居るんだから、

 ああいう会話はNGだぞ。

 想像して夜寝れなくなるだろ?」

「わ~マックス、エッチ~」

「マック兄、最低~」

「メアリー。

 男はこれが普通だからな?ふ・つ・う」

「お馬鹿は、ほっといて、

 この子達洗ってあげよ?」

 この後も続く〝キャピキャピ〟した声に、

 その夜は寝れなくなるマックスだった。

「おっぱいが1つ……おっぱいが2つ……

 ね、眠れん……」


 その少し前――

 夕食の時間。


「わ~美味しそう。全部サンブルズの料理?

 スパイスが効いていて良い香り~」

「今夜は、なにぶんにも急だったので、

 たいした料理は出せませんが……」

 アンカーが少し申し訳なさそうに言う。

「いや、十分()()()()料理でしょ?

 シェフの方々にお礼を言っておいて」

「ありがとうございます」

 アンカーは微笑み、ポタージュを指差した。

「このポタージュは、帝国特産のポテトを、

 冷温倉庫で、1月(ひとつき)ほど寝かせて、

 まろやかな甘みを出した物です」

 そう説明しながら、スプーンを口へ運ぶ。

 エルフィナの頭の上でエレーナが光った。

「ちょっと待って!!」

 アンカーが固まる。

「それ、食べちゃダメ!」

「えっ?どうしました?」

「それ毒が入ってるわよ?」

「ま、まさか……だ、誰か!

 今直ぐ、これを料理した者を呼んでくれ!」

 アンカーが立ち上がる。



「殿下……」

 使用人が青ざめて報告する。

「ポタージュを料理した男、

 どこにもおりません……

 最近入ったばかりの奴です。

 申し訳ございません」

「どうやらその男、怪しさマックスね」

「マックスとか言うな……」

「申し訳ありません。決して私の命じた事では……」

 アンカーが深く頭を下げた。

「当たり前じゃない?何も疑ってないわよ?

 貴方、真っ先にポタージュを、

 口に入れようとしたんだから。

 それよりお腹減ったから、

 残りの料理を頂きましょ?」

 椅子に座り直す。

「いえ……しかし……」

「他のは大丈夫だって言ってるもの」

「え?大丈夫?言ってる?

 あ、あの……残りが大丈夫って言うのは?

 それにポタージュに毒が入ってるって、

 何故分かったのですか?」

「この子と……」

 精霊のエレーナを指差す。

「あと、この子達も、そう言ってるもの」

「聖獣がですか?」

 エルフィナの足元で2匹の聖獣が、

 尻尾を振りながら楽しそうに食事していた。

「そうよ?この子達、

 犬以上に、鼻が利くって言ってるわよ」

「ああ、それで……って、

 なぜこの子達の言っている事が分かるのですか?」

「私ずっとオークそっくりって言われていたのよ?

 動物とか魔物……聖獣だって意思疎通できるわよ?」

「え?本当ですか?」

「やだ」

 エルフィナが笑う。

「冗談に決まってるじゃない。

 もうアンカー皇子ってば……

 貴方、素直すぎよ?

 すごく良い人なのは分かるけど、少し心配ね?

 メアリーの旦那さんになる人は、

 もう少し慎重になってもらわないと」

「「えっ?」」

「な……何でもありません」

 エルフィナが慌てて言う。

「それよりほら、冷めないうちに頂きましょう?」

 メアリナが、顔を赤くして、俯いていた。

「でしたら、何故分かったのですか?」

「何となく、

 この子達の思ってる事が分かっちゃった……

 何でだろ?」



「だ、誰だ!」

 護衛が叫ぶ。

 扉の向こうから――

 ぼーっとした表情の男が、ひょっこり現れた。

「あっ!」

 使用人が叫ぶ。

「こいつです!最近雇った料理人!

 お前だな!?これを作ったのは!」

「あ……は、はい……私です……」

「なぜ戻ってきた!?

 逃げたんじゃないのか!」

 あっ、まさか、あの……これも……

 エルフィナ様の魔法でですか?」

「えっと……どんな奴か見てみたいわ……

 とは、思ったかな?」

「思うだけで魔法が発動するって、

 本当だったのですね……」

「時々よ?時々……」

 エルフィナは肩をすくめた。

「反則だろ?エルフィーの魔法は」

 マックスが笑う。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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