第18話 縁談は、辞退させていただくと言う事で
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
ふわふわ……
精霊王が去った後、
小さな光が一粒だけ
エルフィナの肩のあたりを、
くるくる飛び回っていた。
「……あれ?」
メアリナが指差す。
「一匹残ってる」
光は
ぴょこん
とエルフィナの頭に乗った。
「え?」
エルフィナが固まる。
すると、小さな声が聞こえる。
「……みつけた……ママ……」
「え?」
「ママかえる?……私……いっしょ」
メアリナが笑う。
「エル姉、いつ子供産んだの?」
「バ、バカ……」
マックスが笑う。
「精霊に懐かれたんか?」
しかしアイラスは真顔だった。
「……ありえない……精霊は自由気まま……
契約でもしない限り精霊は人に従わない。
なのに……
自分からついてくるだと?」
「やだ、可愛いこの子……」
「可愛い?メルフィナ様……
これが何に見えるのですか?」
光ではなく?」
アイラスが驚く。
「この子?可愛い羽が生えていて、
小指ほどの大きさ…… 小さくて可愛いですよ?」
「普通の人には光にしか見えません」
アイラスが言う。
「貴方も唯の人ではないようですね」
「エルフィー」
マックスが言う。
「何鼻の穴広げてる」
「え?」
「お前がドヤ顔してどうする」
「だ……だって……」
「エル姉、そろそろ行かないと……」
「あらもうそんな時間?アイラスさん、
水晶とか精霊樹とか……
色々やりっぱなしで……
申し訳ありませんが……」
「構いませんよ。後の事はやっておきますから。
それより、ぜひ一度ゆっくり、
魔法の話をさせて下さい」
「……魔法苦手なんですけど……
剣のお話なら……
喜んでお手合わせしますよ」
アイラスが固まる。
「魔法より剣なのですか?……この上剣まで?
それはもう人ではありません……
神の領域……そうか……
そう言うことなのか……?」
「何のことです?」
「いえ、お気になさらず……
またお会いできる日を、
楽しみにしておおります」
精霊がエルフィナ達の後を追う。
「ついてきてるよエル姉」
「う〜ん……連れてっちゃっていいのかしら……」
ーーおじゃまでなければ、お連れください……
何かの役にたつやもしれません……
「聞こえた?」
「さっきの精霊王様だよな?この声……」
「エル姉、連れてこ」
「こう言う可愛らしいの好きよね?メアリーは。
でも何を食べさせたらいいのかとか、
育て方が分からないわよ?」
アイラスが言う。
「エルフィナ様、多分この子は、
貴方のそばにいるだけで、
漏れた聖魔力で満たされるはずです」
「そっか……だったら一緒に来る?」
〝コクッ〟
「あなた名前は?」
〝ブンブンブン〟
「ないと不便だから私がつけていい?
輝いてるから……エレーナでどう?」
満面の笑みを浮かべる精霊。
一瞬光が強く輝いた。
ーーーー
「アイラス先輩」
声が掛かった。
「誰なの?あの人達」
「アンカーか。エスティア王国の人たちだよ。
マックスは知っているだろ?
ちょっと、面白くなりそうだぞ。
お前の運命も大きく変わるかもな」
「また先輩の予言?あれ?あの子……」
「おい、お前達、コソコソ逃げるな。
精霊樹どうするんだ?
お前達がエルフィナ様を見下して、
失礼なことをするから……
この事は学院にきっちり報告するからな……
ああ、それと、水晶のこと忘れんなよ?」
「「「「…………」」」」
ーーーーーーーー
ーー帝国の王城
(デジャブか……どこかで聞いた台詞よね……)
(エル姉……それって、どこぞの王城?)
「ちょ、ちょっと待て!
お、お前は……まさか……」
第2皇子の目が、
信じられないものを見るように見開かれる。
「……エルフィナ、なのか?」
「アスター皇子、
この人は間違いなく私の姉、
エルフィナですよ?
貴方に〝化け物〟と呼ばれた……」
「…………」
「なるほど……噂は本当だったようだな?
どうする?オスカー」
「はい、仰せのままに……」
帝王ブライアンは口を歪めながら言った。
「どうだ?エルフィナ嬢?
其方が王妃で、
メアリナ嬢が、側妃。
良い話ではないか?
姉妹ずっと一緒にいられるぞ?」
「申し訳ございません。
私、すでに婚約しておりまして」
メアリナの婚約者ーオスカー皇太子が言う。
「婚約だろ?そんなの破棄すればいいじゃないか?
そいつ……何だっけ?……マックスだったか?
そんな奴より俺の妃になる方がずっといいだろ?」
(やっぱり理不尽なゴリ押し、してきたか……
ごめんメアリー……
大人しくしてるのは無理みたい)
(やっちゃえ、エル姉)
「ん?どうした?」
皇太子が眉をひそめる。
「何を姉妹でコソコソ……
ウグウグウグッ……ウグウグウグッ」
皇太子の口が動かなくなった。
「どうしたんだ?兄上」
「ウグウグウグッ……」
「ま、まさか……き、貴様」
アスターがエルフィナを睨む。
「兄上に何かしたのか?
王宮のこんな場所で魔法を使うとは、
覚悟は出来て…………
ウグウグウグッ……ウグウグウグッ」
今度はアスターも話せなくなる。
「エルフィナ嬢」
帝王が低く言う。
「これは其方が?」
「申し訳ありません。ブライアン帝王陛下……」
エルフィナが頭を下げる。
「それが……よく分からないのです……
この話……余り聞きたくないな……
そう思ってしまうと、この様な事になる事が何度か……
まだ上手く能力を制御出来ておりませんで……」
「ふざけた事を申すな……」
帝王の声が更に低くなる。
「自分や自分の国の立場を分かっておらん様だな?」
ーーその時だった。
〝gooooooo…………gtagtagata……〟
「じ……地震だ~~」
「で、でかいぞ!!」」
〝立場を分かっておらんのは、お前達……〟
お腹に響く、低く重い声が天から届く。
〝その娘は、我が愛し子……
お前達、国ごと滅びたいのか?〟
気付けば、足元は雲の中の様に白い雲谷が漂っていた。
「め、滅相もございません……」
皇族全員が平伏する。
メアリナにウインクするエルフィナ。
(フフフ……私の声よ……)
(え?全然違うわ……声色を変えてるの?
どうやって地を這うような低い声出してるの?)
(ううん。声は一緒。聞こえ方を変えたの……
認識阻害の応用よ?上手でしょ?)
(プププッ……認識阻害の応用?
そんなのばっかり出来る様になって……)
「あー!エルフィナお姉様ー!そ、外を見てー!」
「あー……これはー地震じゃなくて、
城が宙に浮いていたのー?」
(認識阻害は得意よ?)
「プププッ……お前ら芝居が下手……」
「し~~……」
「あああぁぁぁ~~…………
お、お許しを~~……」
笑いを堪えるのに必死で、
顔を真っ赤にして、
脂汗をかいているマックス。
〝ズシ~~ン……!〟
「あら?無事に着地した様ね?」
改めて、皇族を見て言う。
「縁談は、辞退させていただくと言う事で」
「コクコクコク……」
「アレックス皇太子殿下。
私達の婚約も白紙という事で……」
「コクコクコク……」
「プゥゥ~~」
「マックス、し~~……プププ……」
「自分だって……」
「皆んな、狼狽まくってるから大丈夫よ?エル姉」
「あ~~スッキリした~~!!」
「婚約破棄して良かったの?
なんて聞くまでもないわね?あのバカ皇子……
側妃だって?どこかのバカ王子といい勝負よ」
「俺じゃないよな?」
「……バカ……そんなのと婚約するわけないでしょ?」
「あ…あの……申し訳ございませんでした」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




