第17話 精霊王
オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
〝ド〜ン!ドン!ドカ〜ン!〟
「何の音かしら?」
エルフィナが港の奥を見る。
「前来た時は静かな港だったわよね?エル姉」
「ああ、これは多分、
魔法科の生徒が練習でもしてるんじゃないか」
「貴方が留学していた学校?」
「帝国魔導学院ーー
サンブルズ帝国の最高位の学校だな。
俺は帝国騎士学院。姉妹校なんだ」
「マックス!」
「あれ?アイラスか?」
振り向くと、一人の青年が走ってきた。
「どうしたんだよ?帰国したんじゃなかったのか?」
「ちょっとな。婚約者の付き添いでな」
「えっ?お前婚約したのか?」
「おう、この子が俺の婚約者のエルフィナだ」
マックスがエルフィナの肩に手を置く。
「この方は?」
「帝国魔導学院のアイラスだよ。
俺の数少ない帝国の友人だ」
「初めまして、アイラスです」
「こちらこそ、初めましてエルフィナです」
「マックス、
お前いろんな女子から言い寄られてたけど、
相手にしなかったのは、
こんなに綺麗な彼女がいたからか?」
「へ〜、お前、エルフィーが綺麗に見えるんだ?」
マックスがニヤッと笑う。
「ん?マックス何言ってんだ?
誰が見ても、とびきり綺麗なんじゃないか?」
「こいつ、認識阻害かけて、
醜く見えるようにしてるんだよ。
さすがだなアイラス。
上辺だけ見てないってことだな」
アイラスが驚く。
「認識阻害ってかなり高度な魔術だが……」
「アイラスは、
大賢者候補の天才魔導士って言われたるんだ。
もちろん学院首席」
「で、ここでなにしてるんだ?」
「城に行かなきゃならないんだけど、
少し早く着いてな。
どこかで時間潰しを……って思ってたところだ」
「だったら、ここに寄ってけよ」
アイラスが指差す。
「学院のラウンジ、
そこらの店よりスイーツが美味いぞ」
「部外者が入ってもいいのか?」
「ああ、俺と一緒なら誰も文句言わない」
「ん?どうした?メアリー?」
「ああ、この子、スイーツ大好きだから……」
「だったらぜひ寄っていってください」
アイラスが笑う。
「ところで貴方は?」
「妹のメアリナです」
「ん?もしかしてオスカー皇子のご婚約者?」
「はい、そうです」
「もしかして!貴方がエルフィナ様?」
アイラスが目を見開く。
「なに言ってんのお前、
さっきそう紹介しただろが?」
「そうじゃなく……」
アイラスの声が震える。
「魔族1000人を1人で殲滅したっていう?
あの、エルフィナ様?」
「へ〜やっぱ、こっちにも噂が広まってるんだな」
マックスが肩をすくめる。
「お会いできて光栄です」
「あれが噂のエスティア王国の令嬢?」
「魔族を一撃で消したって噂の?」
「本当か?化け物みたいな女じゃないか」
「あんな話、信じてる奴は1人もいないぞ」
周囲の学生がざわつく。
「そこのお前達」
アイラスの声が低くなる。
「いい加減にしろ……失礼だぞ」
「つっ……アイラス先輩……でも……」
「お前達には分からないのか?」
「何がですか?」
「この方の周りだけ空気が違う…… 」
静まり返る。
「エルフィナ様、貴方は本当に人なのですか?」
「あ、はい……そうだと思います……」
上目遣いで言った。
「オークじゃありません……」
「プッ……」
笑い声が漏れる。
「どっから見てもオークだよな」
周りから又中傷が入る。
「だから、お前達!……」
その時――
「だったら」
一人の学生が言う。
「勉強のために、
魔法を見せてもらえませんかね?」
「できません……ここでは……
万が一暴走でもしてしまったら……」
「はあ?」
学生が馬鹿にしたように笑う。
「どんだけの魔法量だというんだよ?
まあいい……
だったらそこの魔力測定器の水晶に、
触れてみてくれよ?」
「やめた方が……幼い頃から何個壊したことか……」
「けっ、逃げるのか?
どうせ大したことないんだろ?」
「エル姉、やっちゃえば」
「この水晶高いのよ?家一軒建つくらいに……」
「ふん……」
学生が鼻で笑う。
「万が一壊れたら俺が弁償するさ」
マックスが笑う。
「言質が取れたな」
ずっとニヤニヤ見ていたマックスが言う。
「少し離れていて下さい」
「インチキしようってか?」
「飛び散るので危ないですよ?」
「構わんやれよ」
恐る恐る、そっと水晶に指を近づける。
次の瞬間ーー
〝ガッシャ〜ン‼︎〟
水晶が粉々に砕け散った。
「俺これ見るの三回目だな」
マックスが呟く。
その時だったーー
小さな光がエルフィナに集まってきた。
「わ〜何これ?綺麗……」
「中庭からじゃないか?」
「まさか……精霊樹?」
「ここに、そんなのあったっけ?」
「ん?知らなかったか?それが有ったから、
ここが訓練所になったんだよ。
精霊の力を借りるんだ」
「エル姉、行ってみよ」
エルフィナが中庭に入った瞬間。
ふわっ……
光の粒が舞い始める。
「……え?」
メアリナが驚く。
次の瞬間。
小さな光が
次々とエルフィナの周りに集まる。
火の精霊
水の精霊
風の精霊
土の精霊
アイラスがが呟く。
「精霊が……集まってくる……」
さらに――
一本の大きな光。
中から威厳ある男が現れる。
「あ、あれは精霊王様……」
アイラスが震える。
精霊王はエルフィナに近づき、
そこで突然片膝をついた。
「聖なる母よ……」
「へっ?母?私の事?」
「全て見ておりました。
聖なる母を蔑む言動……
ここの者達は、心が汚れております。
我ら精霊が、
この者達に力を貸すことは、
もう二度とありません」
風が吹く…… サラサラと光の粒となり、
その風にのって、精霊樹が消えていった。
「またいずれお会いできる日を……」
精霊王も小さな光の粒も消えた。
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