表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/74

第16話 海竜

オークそっくりと蔑まれていた少女エルフィナ。

その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。

神々が道を外れた時――

世界は一人の少女を呼び覚ます。

 マックスが笑う。

「それにしても……」

 エルフィナが腕を組む。

「最初に使った様な、

 極大魔法とか、大きな魔法も当然出来ないし……

 こんなに魔力量が有り余ってるのに……

 心から思った事が実現するって言っても、

 その、心から思うって言うのが、

 思いの外難しいのよね」

「いや、戦争しに行く訳じゃ無いんだから、

 そんな大きな魔法使えなくても、

 何の問題もないだろ?」

「……確かにそうなんだけど……

 いざという時にメアリーを守れないと……

 そう思うと、なんか不安で……」

「相変わらず、妹が何より大切なんだな……」

 横でメアリナが、もじもじしてる。

「でも何だ……万が一、いざという時が有れば、

 お前はとんでもない魔法を放つと思うぞ?

 トイレのときみたに」

「あ゙?」

 エルフィナが睨む。

「私もそう思うわ……エルフィナお姉様」

 メアリナが笑う。


「ハハハ……まあ空間転移魔法が、

 問題なく使えるのは理解したけど、

 船旅も良いじゃないか?見ろよこの景色。

 キラキラ輝く海に、透き通った青い空。

 それに陸伝いに行くよりは良いだろ?

 馬車の長旅は尻が痛くなるぞ」

「まあ、馬車よりはね?それだけで、

 夏の長期休暇終わっちゃうかもだしね?

 でもこの揺れ、なんとかなんないのかしら?」

「急に風が強くなったから、波が高くなったんだよ。

 何だか暗くなったし、一雨くるかもな?

 あ、あれ?何だ?風が治ってきたぞ?」

 マックスが空を見る。

「エルフィー何かしただろう?」

「え?」

 エルフィナが顔を青くする。

「あれれ?気持ち悪い……吐きそう……

 なんとかなんないかな~って」

「ああ、それか……

 やっぱり出来るじゃ無いか……チート魔法……

 でも、少し自重してくれよな?爪を隠すんだろ?

 あんまり凄い魔法見せると、

 帰れなくなるかもって……

 誰でも使えるような魔法以外使わないって、

 決めただろ?」

「誰でも使える様な魔法か……

 それが使えないから困ってるのよね…… 」

 少し考えて言った。

「船の揺れ戻す?」

「……え……っと……それは……このままで……」


 ーーーー


 船の揺れが落ち着き、

 空には再び青空が広がっていた。

 その時だった。


「……あれ?」

 メアリナが海を指差した。

「ねえ、お姉様……あれ何?」

「ん?」

 マックスも身を乗り出す。

 海の表面に――

 巨大な影が見えた。


 ゆっくりと。

 船の下を横切る影。


「おい……」

 マックスの顔が引きつる。

「おいおいおい……」

「これ……」

「かなりデカくないか?」

 次の瞬間。

 ――ドォォォン!!

 海面が爆発した。 巨大な水柱。

 船が大きく揺れる。


「きゃあ!」

 乗客達の悲鳴。

 海から姿を現したのは―ー巨大な魔獣だった。

 全長20メートルはある。

 鱗に覆われた体。巨大な牙。

「海竜だ……!」

 船員が叫ぶ。

「海竜が出たぞ!」

 船内が一気にパニックになる。

「くそ……!」

 マックスが剣に手をかける。

「こんな所でかよ……!」

 だが。

 その時だった。

 エルフィナが小さく呟く。

「……やめて」

 静かな声。

 まるで海に話しかけるように。

「この船には、

 私の大切な人がいるの」


 その瞬間ーー

 海竜が動きを止めた。

「……え?」

 マックスが固まる。

 海竜がゆっくりとエルフィナを見た。

 そして――

 ほんの少し(こうべ)を垂れたように見えた。

「……は?」

 マックスが目を丸くする。

 海竜はそのまま静かに海へ潜っていった。

 まるでエルフィナの命令を聞いたかのように。


 船の上。

 全員が固まっている。

「……エルフィー」

 マックスが聞く。

「お前……今……何した?」

「え?」

 エルフィナは首を傾げた。

「何って……

 海竜さんにお願いしただけよ?」


ーーーー


「うわっ!キモ……」

「す、すげ~な?オークとのハーフとか?」

「うげっ!」

 通りすがりの人々が、顔をしかめて距離を取る。


「お姉様……」

 メアリナが小声で聞く。

「あれやってるの?認識阻害魔法……

 それは出来る様になったんだ?」

「どお?」

「いつも通りの、美人さんだけど?」

「あれ?」

 エルフィナが首を傾げる。

「メアリーには醜く見えてないの?

 魔法上手く出来てない?」

「俺にも、いつもの可愛いエルフィーだぞ?」

 マックスが周囲を見回す。

「でも周りの反応は……

 これ見る限り失敗は、してないな」

「自分がずっと掛かってたからなのか、

 認識阻害は簡単に出来る様になったのよ?」

 エルフィナが小さく笑う。

「でもこれ、精神に干渉するからか、

 やっぱり人によって見え方違うのね?」

 そして少し悪い顔をする。

「上辺だけしか見えていない人には、

 効果てきめんね」

「でもそれ王城行ったら、

 やっちゃダメよ?エル姉」

 メアリナが釘を刺す。

「うん分かってるわ……

 あれ?エル姉?良いわね?

 これからはそう呼んで?」

「マックスばっかり、

 エルフィーとか呼ぶんだもん……

 私だって……」

「俺は呼び捨てかよ?」

 マックスが苦笑する。

「ダメ?エル姉だって呼び捨てだから……

 正式な席では、

 勿論〝マックス王子〟って呼ぶわよ」

「いや良いよ。

 メアリーはもう俺にとっても、もう妹だからな」

「〝メアリー〟は、止めて下さい。

 そう呼んで良いのはエル姉だけですから」

 メアリナが真顔で言う。

「えっ?ダメ?兄貴だぞ?俺は……」

 マックスが固まる。

「フフフ……ウソウソ、冗談。

〝メアリー〟で良いわよ?マック兄」

 この3人の絆は、確実に深まっている。

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ