第15話 noって言えないじゃない
オークそっくりと蔑まれていた少女メアリナ。
その正体は、特別な力を持つ女神の生まれ変わりだった。
神々が道を外れた時――
世界は一人の少女を呼び覚ます。
「王妃様は、私のこといつも可愛いって、
言ったくれてたわよね?
私の両親でさえ醜く見えていたのに、
どうして私の事、
綺麗だって言ってくれてたんだろ?」
「あの人、昔から病気がちだったろ?
静かに寝ている事が多かったからか、
他人にはない、
感性みたいなものが有るんだよきっと……」
「あっ、それ、この前お会いした時に私も思った……
でも貴方はどうして醜く見えてなかったんだろ?」
「前も言ったけど……
俺は、お前が綺麗だとか醜いだとか、
そう言う事を気にしていなかったからな。
だから本質が見えていたんじゃないかな?
それにしても……
お前にあんな酷い呪いを掛けたのは、
誰なんだろうな?」
「アルガルド先生が、
呪いを解こうと随分調べて下さったのだけど……
全く分からなかったんだって。
この世の者が掛けたとは思えないって仰ってたわ」
「赤ん坊の頃からだろ?不思議だな……」
「……ねえマックス」
エルフィナが聞く。
「私の呪いが解けて……
綺麗だから一緒になりたい……
とかじゃないってことよね?」
「ああ、もちろん。
俺にはお前の姿が変わった様には見えないぞ?
……だからもう一度言う」
真剣な声。
「お前を失いたくない。俺の嫁さんになってくれ」
「もう……」
エルフィナが苦笑する。
「 noって言えないじゃない……」
「そ……それじゃあ?」
「陛下のお許しが出ているの?」
「ああ」
「だったら私も、両親に、ちゃんと話さなきゃ……
でも……心は決まったわ。
そのお話し、喜んでお受け致します……マックス王子」
「よっしゃ~!」
「ちょっ……痛い痛い……」
力任せに抱きしめられるエルフィナ。
「あっ、ごめん……」
ーーーーーーーー
「ファイア! ファイア! ファイアボール!
ウインドカッター‼︎」
エルフィナが手を前に突き出す。
すると――
手のひらの前に、淡く輝く魔法陣が浮かび上がった。
だが……それだけだった。
何も起きない。
火も出ない。風も起きない。
ただ魔法陣が虚しく消えるだけだった。
「あ~もう!」
エルフィナが頭を抱える。
「どうしてよ?
これじゃあ前と何も変わらないじゃ無い……
少しは魔法が使える様になったかと思ったのに……」
「エルフィナお姉様。何してるの?」
後ろから声がした。
「メアリー?」
振り返ると、メアリナが腕を組んで見ていた。
「何してるの?」
「魔法の練習よ……」
エルフィナがため息をつく。
「でも全然ダメ。
前と何にも変わってなの……
初歩の魔法すら使えないわ……
サンブルズ帝国に行く迄に、
何とかしたいんだけどね」
「今やってたのがそれ?見てたけど……」
少し考えてから言った。
「あれだと根本的に、
お姉様には合ってないんじゃない?」
「……どういう事?」
「魔族に光を放った時も、王子を黙らせた時も……」
メアリナは指を一本ずつ折る。
「お姉様、詠唱なんてしてなかったじゃない?
魔法陣も出してなかったでしょ?」
「まあ確かに……そうだったわよね……」
「お姉様の魔法は、詠唱したり、魔法陣出したり、
そういう学園で習う魔法とは、
根本的に違うんじゃないかな……
思うだけで発動するかも……って、
自分でも言ってたじゃない」
「うーん……」
エルフィナが手をかざす。
「火が出ろ火が出ろ!」
「……」
「……」
ーー沈黙。
「……あ~何も出ない……
やっぱり思うだけじゃダメ……出来ないわ……」
「自分でも自分の魔法の事、
信じきれてないから……
そこなんじゃない?」
「自分で自分の魔法を信じる……か……?」
「そうよ……
王妃陛下の病も治せたんでしょ?
自信を持って」
ーーーー
「あ~~潮風が気持ちいいな!」
マックスが船の手すりに寄りかかる。
「エルフィー?」
「何で船なのよ?」
エルフィナが呆れる。
「パパッと空間転移魔法で、
瞬時に行けるって言ったのに」
「エルフィー?
本当に、空間魔法使えるようになったのか?」
「だから、出来るって言ってるじゃない?」
エルフィナがむくれる。
「あれから1ヶ月、必死に魔法練習したんだから」
「でも未だ思うようにいかなくて悩んでるって、
メアリナから聞いたぞ?
空間魔法とか、
上位の魔導士ですら使える奴が少ない魔法で、
隣国に行くとか、
万が一失敗したら、危ないんじゃ無いか?」
「ああ、それね……」
エルフィナが空を見上げる。
「思った事が、実現するって言うのは、
相変わらずよく分からないの……
出来る事も何だかチグハグ……」
「思った事が現実になるなんてのが本当だったら、
お前のその魔法、異常だぞ?
歴史を辿ったって、そんな事出来る奴は、
誰一人いなかったんだからな?
出来なくて当然。
悩む必要なんてないぞ?」
「空間転移なんて難しいのが出来たかと思えば、
初歩の魔法が未だに使えなかったり……
どうなってるのかしらね?」
「いつから空間転移なんて出来る様になったんだ?
思った事が……って言うけど、
何がきっかけだったんだ?」
マックスが聞く。
「……ホホホ……」
エルフィナが誤魔化すように笑う。
「ホホホ?」
「トイレ我慢出来なくて、なんだって」
メアリナが即答した。
「ちょ!メアリー!」
「だって本当でしょ?」
メアリナが笑う。
「ほら今、学園、あちこち、
魔族襲来の事件で壊されてるでしょ?
使える数少ないトイレが大行列なのよ。
も……漏れる~て思ったら、
家のトイレに転移してたんだって」
「オ~ホホホ……」
エルフィナが取り繕う。
「何を言ってるの?メアリー?
私トイレなんかしないわよ……」
「ションベン漏らしそうになってか~」
マックスが笑う。
「そりゃあ一大事だもんな?」
「ションベ……だから私しないって……」
「ん?」
マックスが首を傾げる。
「おっきい方か?」
「おい!マックス!」
エルフィナが顔を真っ赤にする。
「お前との婚約を、ここに破棄する~!」
「ば、ばか、冗談だって」
「も~~デリカシーが無いんだから……」
エルフィナが怒る。
「悪い悪い……」
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