第6話 男一人と女二人で一泊お願いします、いや同室で
サマリの冒険者ギルドの受付で、周りの冒険者の視線を受けながら俺達は受付の人の説明を聞いていた。
エロイ視線で見られるなら解るが、奇異の目で見られているのには納得がいかない。
「(ダイスケさん。受付の人の言葉って日本語ですよね)」
イシスと受付嬢さんとの会話は俺も理解出来ていたのでヨッちゃんの言葉に頷く。
「(それに、壁にある張り紙も日本語だな)」
「(……そうですね、どう見ても日本語ですね)」
「(その辺りも後でイシスに詳しく聞いてみるか)」
頷くヨッちゃんから視線をイシスへ戻すと受付嬢さんが。
「ちゃんと聞いて下さいね、新人さんが一番死にやすいんですから。冒険者登録したからには私達も全力でサポートします。ですが、お話をちゃんと聞いてない人が本当に一番死にやすいんです!いいですか!?」
……コクリ。
「いいですか?」
……コクリ。
「喋れないんですか?ちゃんと返事して下さい。もう一度聞きますね、いいですか?」
「ハイ”!」
頑張って声高めで返事したら鳥が潰された感じの声が出てしまった。
「……声帯に問題があったんですね、すみません。問題があるなら今度からはちゃんと言って下さいね」
だから声出せないといっとろーが。
――それから眼鏡三つ編の冒険者ギルド説明が始まった。
要は規約みたいなもので、冒険者同士の喧嘩がご法度だとか。上位冒険者の依頼と魔物の狩場が被ったら上位が優先だとか。上位冒険者は下級冒険者を助けないといけないとかそんな感じ。
冒険者の階級はFから始まりE→D→C→B→A→Sと上がっていく。
基本的に成功報酬制の依頼はA~Fまでの依頼のどれを受けても問題ないが、死亡率が上がるのでギルドとしては推奨していないそうな。まぁ重要なのはそんな所だな。
「では最後に冒険者カードを作成しますね。ではカード作成用のこちらの台に手を置いて下さい」
見ればそこには鉄の枠に水晶が置かれた小さな台が置いてある。
「(これはなんだ?)」
イシスに耳打ちすると。
「アーティファクト技術の一つね。これが発見された事でこの世界は大きく発展したのよ」
「(どんな機能があるの?)」
今度はヨッちゃんが質問する。
「(主に通信だとかだけど、ギルドだと相手のステータスを映し出したり出来る優秀な物よ)」
「(おいおい、俺達のスキルだとか大丈夫なのか?色々隠しておいた方がいいんじゃないのか?)」
「大丈夫、これ私が作ったやつですし」
「(は?)」
「それにステータスだけど、既にスキルと名前は弄ってあるからなんら問題ナッシングよ♪」
ここで音符か!こいつの音符は危険が伴うから信用出来ないが、弄ってあるならまぁいいのか?
――最初にイシスから台に手を置く。
「(これで女神イシスとか名前でたら私殴るね)」
「(流石にそれはないだろ)」
俺とヨッちゃんの会話が聞こえたのかイシスはそっと台座から手を離し、目の前の空間でなにやら弄っていた。――おまっ……。
――三人のステータスが記載されたカードが発行された。
先ずイシスだが。
名前 イシス=ゴッド
職業 魔法使い
強さ250 体力80 魔力250
スキル なし
名前についてコイツは妥協したはずなんだが、妥協点が妥協してない所がコイツらしいと言えばコイツだ。てか神だと昇格してんじゃねーか。
次に俺だ。
名前 ダイスーケ
職業 剣士
強さ380 体力250 魔力50
この世界の強さ数値の平均が分からないのでなんとも言えないが、魔力が俺にもあるのか。名前は……まぁ女ぽくなってない事もないな。
次はヨッちゃん。
名前 ヨーマ
職業 拳闘士
強さ100 体力50 魔力240
あれ?強さの数字えらく低くないかコレ。
「(イシス、この数字は今の俺達の数字なのか?)」
「はい、お二人のは中身の方ですけどね」
そう言う事か。姿は変わってもヨッちゃんは20歳の女性だもんな、こんなもんか。どちらにせよ、受付のお姉さんが俺達のカードを見て騒ぎ立てるイベントも、冒険者が絡んでくるイベントも起こらず胸を撫でおろす。
カードの代金は初回無料で、先ほど街へ来る途中にヨッちゃんが殴り飛ばしたイノシシ風魔物が売れると聞き、隣の買取所へ向かい現金も得る事が出来た。
買取価格は魔物の体内にある魔石の欠損が無かったのと、殴り一発で倒していた事もあり5万ゼニで売れた。ゼニの価値的には1ゼニ1円くらいとイシスが言っているので、5万円で売れた事になる。ありがとうヨッちゃん!
――空を見上げれば既に夕方となっており、早めに宿を見つけて今日は休みたいと言う事になった。
あらかじめイシスに食事の美味しいお勧め宿の場所を受付から聞く様に頼んでいた事もあり、早速宿へ向かう。
――カランカラン。
戸を開けると、涼やかなベルが鳴る。
「いらっしゃい!」
三人で宿屋へ入ると、これまた宿屋の女将って感じの恰幅のいい女性がカウンターから顔を覗かせる。
「あんたら見ない顔だね、その恰好だと新人冒険者って感じかい?」
――コクリ。コクリ。「はい」
「ん?声が出ないのかい?まぁいいさね、で、一人一部屋だと一泊朝夕付きで3千ゼニ、男一人に女二人だから女性陣は同室でも構わないかい?」
「ええ、かまいません」
「じゃ男一人一部屋で、女性が二人部屋でしめて6千ゼニだね」
その時、突然ヨッちゃんの声が俺の後ろから飛ぶ。
「全員同じ部屋でお願いします!」
「(え?)」
そう、その声は正しく俺の姿をしたヨッちゃんから発せられた物だが、女将は俺が言った物と勘違いしたのか。
「そっちの魔女さんもそれでいいのかい?」
「はい、どのみち私は彼に逆らえませんし」
おい!言い方!
「はぁあんたモテモテだね。じゃ三人部屋で朝夕付き5千ゼニでどうだい?」
――コクリ。「はい」
イシスが代表して部屋の鍵を受け取り、俺達は宿の階段を上がっていく。
「そこの道着のにいさん!あまりシーツを汚さないでおくれよ!」
見れば俺の顔のヨッちゃんの耳が真っ赤になっていた。
――しかしどう言うつもりだヨッちゃん。三人同室で、だなんて…………そうなのか?そう言う事なのか?――その時俺も別の意味で耳を真っ赤にしていた。




