第9話 ビキニアーマーはビキニじゃなくてアーマーだ
ダンジョンへ向かう道中。昨日の様にヨッちゃん無双でもいいのだが、冒険者、いや、男としてヨッちゃんにばかり頼る訳にもいかないと、全員の戦闘スタイルについて確認をする事にした。
――先ずはこの女神だな。
「女神イシス」
「はい!」
いい返事だ。
「今後魔物と戦う上で、君はどうやって戦うつもりか教えてくれるか?ずっとその黒いドレス姿だし、やっぱり敵を近づけず神的なパワーで消滅させたりとかなのかな?」
「はい?なんですかその神パワーって(笑)」
その(笑)はやめようか、なんか腹たつ。
「じゃどうやって戦うつもりなんだ?」
「そすですねぇ。一応精神生命体と位置付けられる私達神族が地上へ降臨すると、その力が殆ど失われてしまうんですよぉ」
「ふむふむ」
「…………」
「…………」
「え!終わり!」
「えっ!何か言わないといけなかったですか!?」
「いやいや、だからどうやって戦うんだって話しをだな。てか冒険者登録の時、魔法使いって出てただろ」
「ぁあー人間の使う魔法ですね」
「それ!」
「いままで人間世界に興味がなかったので、人間の使う魔法の事はよく知らないんですよねぇ。あ、でも#付与魔法__・__#とかこんなのは出来るかもです」
――イシスは目を閉じると、両手を空へ向ける。
その両腕の先には、小さな火の玉が回転しながら現れる。その火の玉は回転速度を徐々に早め、超高速と言って良いほどのスピードで回転し。
「ちょ、イシスさん?」
「デス・ファイヤーーーー!」
――――チュイン。―――――――――――ドーーーーーーーーン!!!
光が数百メートル先で破裂すると、数秒後、爆風が俺達三人を襲った。
「「「あばばばばばばば」」」
――――
――
「女神イシス」
「はい!」
「あれだと対軍隊魔法とか広域瞬殺魔法とかになっちゃうから、今後はあれの10分の1いや、100分の1くらいの威力でいいからな」
「頑張ります!」
いい返事だ。とにかくだ、敵が多い時はこいつに任せようと思う。
――次、ヨッちゃん。
「ヨッちゃんの攻撃スタイルは昨日の感じで格闘?みたいなのでいいとして、防御面はその道着だけだし打たれ弱い気もするんだけど、どうだろ」
昨日魔物イノシシを狩った時は迫り来るイノシシを正面からワンパンで倒していた。しかしもし不意の攻撃にあったりした場合、大けがを負いかねないので相談してみる事にしたのだ。――が。
「大介さん、女神の私が用意した装備が信用出来ないんですか?」
「いやいや、いくら女神と言ってもだな彼……彼女の装備は道着だぞ?あれは防御どうのと言う以前の問題だろ」
俺はヨッちゃんの道着じゃ正直本格的に戦闘になったら危険じゃないかと危惧しているのだが、思わぬ方向から。
「いやいやいやいや、ちょっと待って下さい大介さん。私の防御面を心配してくれるのは嬉しいですけど、それの方が絶対ヤバイですって」
俺を指さすヨッちゃん。
「それって、このビキニ?」
「自分でビキニって言っちゃってるじゃないですか。ビキニですよ?アーマーって付いてますけどビキニなんですよ?一体その装備で何を何から守るって言うんですか」
「……乳首とか?」
「これだからおっさんは……。魔物から乳首守ってどーすんですか」
痛い所を突いて来るな――だがしかし。
「ヨッちゃんはやっぱりまだ若いね」
「む?」
「見てみろよこのビキニアーマー。肩に羽根の様なパット!腰の両サイドに据えられた腰アーマー!腕の手甲に足の装甲ブーツ!それとこの白いマント!あとは胸!ケツ!守らないといけない所は最低限守ってるだろ。これはな敵を錯覚させる恐ろしい装備なんだ。お腹と鎖骨、内太ももが露出しているから防御面に脆弱じゃないかと錯覚を起こすが、その実、剣士がその身軽さを持って敵を討つ場合最適解となっているんだ」
「……言われてみればそんな気も……しないでもないですね」
「だろ?だけどその道着。道着とは武道を行う上で着る衣服、要はただの服なんだぞ?そもそも装備でもなんでもないじゃないか」
「むむむ」
「そこでだ」
俺はイシスへ振り向く。
「な、なんですか!?」
「女神イシス」
「はい!」
いい返事だ。
「君は条件の一つとして装備と言った。覚えてるな」
「もちろんです。お二人には最高の装備をお渡し……まさか」
「そう、そのまさかだ。あれは服、だよな」
「ぇえ~でももう無理ですよぉ、一度渡した物に変更とか出来ないですよぉ」
「まぁそうだろうな。そこでだ、イシス」
「はい?」
「付与魔法が出来るんだよな」
「ええ、出来ると思いますけど……道着にですか?」
「この仮面があるって事は持ってるんだろ?俺の女騎士装備」
「ありますけど……なるほど、あれに付与魔法を掛けて玉木さんの追加装備にするんですね!」
「頭いいじゃないか女神イシス」
「はい!」
そんな俺の提案に異を唱える者が一名。
「いやいやいやいやいやいや、私道着OK?」
「「OK!」」
「道着の上から女騎士鎧とかおかしいから!」
「ヨッちゃん、ここは異世界だぞ?コーディネートうんぬんより、命の方が大事だろ」
「いやいやいやいや、モデルは命掛けでコーディネートしてるんです!道着に騎士鎧とかダサイ超えてますから!」
「今は俺の顔と身体じゃないか」
「心まで奪われた積りはありません!」
そんなやり取りを10分程していたが、結局ヨッちゃんが折れる事は無かった。
――――
――
「仕方がないか。イシス、いざとなったら道着に付与魔法掛けてくれる?」
「永続付与ありますから今でもいけますけど?」
「……便利だな。じゃお願いしてもいいか?」
「一応大介さんのビキニアーマーと同じ効果のある魔防御と衝撃吸収掛けときますね」
「おう、そうして……って、今なんて言った?」
「え?防御と衝撃吸収、あ、対斬撃もありました」
「おま……」
そんなのがあるなら先に言えと言いたかったが、ヨッちゃんとのやり取りで既に疲れていた俺はそれを言う気になれなかったが、今度ホウレンソウだけでも教えておこうと心に誓った。
――――
――
ついでですからと、結局女騎士の鎧にも付与魔法を掛け終わり俺達はダンジョン目指し歩き出した。
俺の戦闘スタイルについてだが。
「女剣士なんでしょうけど、結局の所剣が無いと何も出来ないただの露出魔ですもんね」とヨッちゃんの一言で先へ進む事になった。――辛い。
辛いと言えば、照り付けるこの日差し。
「なにも居ませんね」
「そうだね」
冒険者ギルドの掲示板から、魔物イノシシ3頭の討伐依頼を受けてはいたが。ダンジョンへ着くまでに倒してしまおうと言う打算も今の所外れそうだ。
「そろそろダンジョンが見えてもいい頃だと思うんだが」
「そうですよね」
「玉木さん、大介さん、そのダンジョンから何か近づいてきます……と言うかこの反応、魔物ですね」
イシスの目の前に現れたスクリーンに、赤い点滅が三つの青い点へ向かって一直線に進んでいた。
「カス女神、一応聞くけどそれ何」
「え、一応お二人のナビなんでレーダーとかもありますけど?」
「へぇ~そのレーダーで魔物とかの居場所とかわかるんだ」
「凄いでしょ!ほら、この赤い点滅が魔物で、青いのが私達です。こうやって、広域にすれば――ほら!これが魔物イノシシで――痛い!痛いです!玉木さん!耳がちぎれます!!」
「最初からそれを出せ!魔物イノシシがいつ出るかとか身構えて進んでたのあんたも見てたでしょーがぁ!」
魔物が迫っている最中騒がしい二人を眺める俺は――あんな事になってしまうなんて思いもしなかった。
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