第十八話:漆黒の指名状と、特訓の号令
仲間同士のガチンコ模擬戦を経て、見えてきたのは次なる連携への課題。
そこへ届いた不気味な挑戦状を前に、アイラの闘志に火がつきます!
大荷物を抱えて向かうは、過酷な山間演習場。
相変わらずの賑やかな掛け合いとともに、6人が一丸となって特訓へ挑む新章の幕開けをお楽しみください!
窓の外に夕暮れのチャイムが響く生徒会室。
ノアが前回の戦闘データと鷲宮執行部の戦力分析をまとめた分厚いレポートを机に並べる。
「前回のレオン戦は奇襲と特効薬がハマりましたが、親善戦は完全な公開試合。手の内が割れた状態では、同じ手は通用しません」
鷲宮本隊の層の厚さを前に、一同の表情が引き締まる。
リサが眼鏡を押し上げ、手帳を開いて淡々と切り出す。
「ええ。個々の出力向上はもちろんですが、何より必要なのは不測の事態にも即応できる『複合戦術』の完成です。……そこで提案があります。今週末、集中強化合宿を行いましょう」
「が、合宿!? 急ですね……」
「でもいい考えね。私の調合室も丸ごと持ち込めるような広い演習場なら、新しい支援薬の実験もできるわ」
合宿という響きに、私の目がパッと輝く。
「賛成! やろう合宿! 学園の裏手にある山間第伍演習場なら、派手に魔法をブッ放しても怒られないしね!」
「山なら地形を使った隠密や奇襲の訓練もいっぱいできる!」
セナも乗ってきた。
厳しい特訓の提案でありながら、どこかワクワクした空気が混ざり始める生徒会。
「ただし、浮かれるのはそこまでです。合宿のメニューを組む前に、まずは今の私たちがどれだけ動けるか――直ちに第3演習場で実力測定を行います」
リサの容赦ない宣告にタクトが小さく悲鳴を上げつつも、全員が頷いて立ち上がる。
生徒会内部でのガチンコ模擬戦へ向け、演習場へと移動を開始する。
防護結界で囲まれた無人の第3演習場。
ノアが審判兼データ計測役として観覧席に陣取り、フィールド中央で5人が向かい合う。
「チーム分けは【アイラ・タクト組】対【私・セナ・セリア組】です。制限時間は10分、手加減は一切不要とします」
「望むところ! タクト、前衛の背中は任せたよ!」
「うぅ……リサ先輩とセナを同時に相手するなんて胃が痛い……」
タクトがしょもしょもと縮こまる。
ノアの合図と共に、セナが煙幕弾を使って一瞬でアイラの死角へ回り込む。
私は反応して拳を構えるが、セリアが投げた『魔力拡散アンプル』が空中で炸裂し、アイラの魔力集中が一瞬乱される。
隙を突いてリサの『霜華縛鎖』が地面を伝って迫るが、タクトが即座に割り込む。
「させません! 『三重偏向障壁』!」
氷の鎖を完璧に弾き返し、私が障壁を蹴ってリサへ肉薄、寸止めの一撃を繰り出す。
目まぐるしい攻防の末、タイムアップのブザーが鳴り響く。
息を切らす一同に対し、ノアが手元のホログラムデータを投影しながら冷静にフィードバックを行う。
「データが出ました。タクトの障壁展開とアイラさんの突撃速度は向上していますが……タクトの魔力消費効率が悪く、長期戦になると障壁の強度が激減します」
リサは息を整えて冷静に続ける。
「ええ。それに、セリアの中和薬や私の拘束魔法も、初見殺し以上の相手には読まれやすい。敵のトップ層を崩すには、二重、三重の『複合連携術式』が必須です」
各自が自分の限界と課題を突きつけられるが、場の空気は暗くならない。
「課題がはっきりしたなら、あとは合宿で叩き直すだけ! ……みんな、とことん付き合ってもらうからね!」
仲間たちも気合の入った表情で頷き、演習場を後にして生徒会室へ戻る。
汗を流し、息を整えながら生徒会室へと戻ってきた一同。
綺麗に片付いたはずの中央テーブルの上に、見慣れない漆黒の高級封筒が一通、ポツンと置かれている。
封蝋には、鷲の紋章――鷲宮高等学院の公式エンブレムが刻まれている。
「あれ……? 部屋を出る時はこんなの無かったのに」
「合宿の話で盛り上がってる間に、何者かが忍び込んで置いたってことですか……!?」
リサが慎重にペーパーナイフで封を切り、中から銀箔押しの便箋を取り出して読み上げる。
「……『学園都市親善交流戦・特別代表戦の指名推薦状』」
表向きの一般生徒向け競技大会の裏で、各校の評議員・魔導関係者のみを立会人として行われる非公開の魔導戦。
そのメインカードとして、鷲宮第一選抜隊の対戦相手に我が校の生徒会チームが名指しで指定されている。
「一般の目がない特務結界の中……。つまり、先日のデータ強奪の落とし前をつける名目で、結界内に僕たちを閉じ込め、合法的に再起不能へ追い込む気です」
「魔導上層部が見守る前で私たちを叩き潰せば、あちらの『計画』を告発しても揉み消せるだけの発言力を握れる……狡猾な手ね」
魔法の隠匿を逆手に取り、閉ざされた舞台で確実に仕留めようとする鷲宮生徒会長の底知れぬ悪意が浮き彫りになる。
私は推薦状を受け取ると、迷わずそれを机へ叩きつけるように置く。
「裏でコソコソ仕掛けてくる連中を、魔導上層部の目の前で堂々と叩き潰す絶好のチャンスじゃない!」
密室の罠と知りながら、真正面から受けて立つ覚悟を決める。
「この合宿で全員の連携を完璧に仕上げて、結界ごとあいつらの企みを粉砕してやるよ! ……合宿の準備、急ぐよ!」
立ち込める朝靄と、冷涼な森の空気に包まれた山道。
巨大な防護結界の門扉の前に、大荷物を背負った6人が集合する。
ノアの大量の観測機器やセリアの調合機器のトランク、タクトの防護具などの各自の装備や荷物が並ぶ。
「ノア……そのトランク、中に小型サーバーでも詰まってない? 重すぎない?」
「合宿中の全魔力消費と連携タイムを0.01秒単位で記録するための必須装備です。タクト、持って」
「私も特訓用の劇薬……じゃなくて、栄養補給アンプルを30本持ってきたわよ」
「今、劇薬って言いませんでした!?」
重い空気になりがちな特訓の直前でも、変わらない軽口の応酬で緊張を解きほぐす一同。
リサが管理符をかざすと、第伍演習場を覆う頑丈な魔導結界のゲートが重低音を響かせて開く。
広大な原生林と岩山が広がる、過酷な実戦訓練フィールドが目の前に広がる。
私は先頭に立ち、拳をぐっと握りしめて仲間たちを振り返る。
「特務結界の代表戦まで、あと二週間。泣き言はなし! 全員で限界をブッ壊して、鷲宮の鼻を明かしてやるよ!」
「「「おーっ!!」」」
朝日を浴びながら、6人が一斉に演習場の奥へと駆け出していく。
挑戦状を叩き返した生徒会の、熱い強化合宿編のスタートを告げた。
合宿へーーーーーーーーーん!!!!!!!!!
やっぱさ、学園モノに合宿は欠かせないっしょ!(セナ並感)
番外編ばかり書いてたので調子が狂いそうになったのですが(カス)なんとか書き終えました。
いい加減本編に向き合えと……自らの尻を叩き進めてます。
多分二十話で二章も完結すると思われます、想定外がなければ。(プロット組んでるんだよね?)




