第十七話:戻った日常と、茜色の決意
痛快なリベンジを果たしたのも束の間、荒れ果てた生徒会室の大掃除がスタート!
軟膏を塗られて悶絶する会長と、容赦なく小言を飛ばす仲間たちの賑やかな掛け合いが描かれます。
そして明かされる、レオンの背後に潜んでいた真の首謀者。
一人きりの戦いを終え、本当のチームになった6人の揺るぎない覚悟にご注目ください!
朝の柔らかな光が差し込む学園の生徒会室に、ボロボロになりながらも誇らしげな6人が戻ってくる。
私は中央の大きな執務机へ、奪還した銀色のアタッシュケースをドンと置く。
「ただいま、私たちの生徒会室! ……うぅ、やっぱり中はめちゃくちゃだけどね!」
散乱した書類や倒れた椅子を見渡しつつも、全員の顔には安堵と達成感の笑みが浮かぶ。
誰からともなく腕まくりをし、荒らされた部屋の修復と片付けがスタート。
セナが身軽に本棚の上に飛び乗って散らばった書類をまとめ、タクトが魔力で歪んだスチール棚を『偏向力場』で器用に押し戻す。
「タクト、結界魔術の無駄遣いだよ」
「いいだろ、実用的なんだから! ノアこそ早くその配線直してくれよ!」
男子組のいつもの小競り合いに、部屋の空気が一気に日常の温かさを取り戻していく。
片付けが一段落したところで、セリアが湯気の立つティーカップを全員分トレイに乗せて運んでくる。
「はい、みんなお疲れ様。魔力枯渇と筋肉疲労に効く特製ブレンドよ。……タクトにはちょっと苦めにしてあるから」
「えっ、なんで俺だけ!?」
一同からどっと笑いが起き、温かいお茶の香りが満ちる中、全員がソファや椅子に深く腰掛けて息をつく。
綺麗に整えられた生徒会室を見渡し、私は満ち足りた表情でお茶を口にする。
しかし、激戦で酷使した私の右拳には、包帯越しに痛々しい赤黒いアザと擦り傷が残っていた。
まぁこれくらい大したことないってもんよ。
そう思ってソファに座る私の右手に、セリアが緑色の特製軟膏をペタペタと遠慮なく塗りたくる。
「いったぁぁい! セリア、もうちょっと手加減ってものをさぁ!」
「自業自得よ。敵の多重障壁を素手同然の打撃でブチ破るなんて、無茶にも程があるわ。骨にヒビが入ってないだけ奇跡なんだから」
包帯を巻かれながら涙目で唸る私を見て、タクトとノアが苦笑いを浮かべる。
「本当ですよ。俺が射線を逸らした瞬間に突っ込むんだから、心臓止まるかと思いましたよ。会長のブレーキ壊れてるのは仕様ですか?」
「ですね。僕の計算でも、あと0.1秒遅れてたら障壁の反動で腕が吹き飛んでました。……まあ、決めたから格好はつきましたけど」
「でもすっごくスカッとした! レオンの顔、漫画みたいに歪んでたもんね!」
セナだけが無邪気に拳を振り回してはしゃぎ、部屋に和やかな笑いが広がる。
腕を組んで一連の騒ぎを眺めていたリサが、やれやれと眼鏡の位置を直す。
「まったく……手のかかる会長です。ですが、一人で抱え込まずに全員の攻撃を信じて踏み込んだ点だけは、評価してあげます」
「えへへ……リサに褒められた!」
「褒めていません、事実を述べたまでです。さあ、痛みが引いたら仕事ですよ」
手当てを終えてぐるぐる巻きの右手を掲げ、私は仲間たちを見渡して満面の笑みを浮かべる。
仲間からの小言もツッコミも、すべて自分を気遣ってくれる証拠だ。
「みんな、本当にありがとう! ……よし、それじゃノア、奪い返したデータの中身を見せてもらおうかな!」
ノアが生徒会室の中央テーブルに端末を接続し、プロジェクターを展開する。
青白い光のグリッドが部屋いっぱいに広がり、鷲宮のサーバーから吸い上げた膨大な暗号化データと学園都市の魔力流通図が浮かび上がる。
一気に真剣な表情へと切り替わる6人。
「僕たちの生徒会から盗まれたデータ……それはただの生徒名簿や予算表じゃありませんでした。この学園の地下に眠る『第壱魔導炉』のアクセスキーの断片です」
「やはり……。レオンたちが狙っていたのは、単なる学園間の嫌がらせではなく、都市規模の魔力インフラそのものだったわけですね」
鷲宮高等学院・執行部が動いていた本当の目的が、学園都市の魔力供給を一手に掌握する大規模テロに近い計画だったことが判明する。
ノアがさらに解析ログの最深部を開くと、レオンに指示を出していた発信元のプロファイルが表示される。
「そして……レオンにこの作戦を指示していた上位権限者です。通信ログの署名はひとつだけ」
画面に浮かび上がるのは、鷲宮高等学院・生徒会長のコードネームとシルエット。
「あんな怪物を前衛で使い捨てるなんて、トップは一体どれだけ規格外なんだ……」
レオンを打ち倒した達成感の直後に、それすら氷山の一角に過ぎなかったという圧倒的な底知れなさが突きつけられる。
「計画の最終実行予定日……来月開催される『学園都市親善交流戦』の開幕日になってるわ」
全校生徒や外部からの観客が集まる大イベントの裏で、大規模な魔力強奪が決行されようとしていることになる。
私は険しい表情で画面を見つめ、包帯を巻いた拳をぐっと握りしめる。
窓の外は夕焼けに染まり、茜色の光が綺麗に整えられた生徒会室を包み込む。
判明した陰謀の巨大さに一瞬息を呑んでいた一同だったが、誰の瞳にも恐れや絶望の色はない。
激闘を共に乗り越えたことで、全員の顔つきには確かな自信と覚悟が宿っている。
包帯を巻いた右手を胸の前に当て、私は生徒会長として全員を見渡す。
「鷲宮のトップがどれだけヤバい奴でも関係ない。この学園も、生徒たちの居場所も……私たち生徒会が絶対に守り抜く!」
リサが眼鏡を直しながら続ける。
「ええ。今度は防衛だけでなく、親善戦の舞台で彼らの不正を完全に白日の下に晒しましょう」
タクトも自信満々に続ける。
「俺の障壁も、もっと分厚く鍛え直しておきますよ」
セリアも微笑みつつもその瞳にはやる気が満ちている。
「私も特効薬のストック、山ほど作っておくわね」
ノアも続ける。
「情報戦なら任せてください」
最後にセナが
「アタシだって潜入捜査なら任せてよ!」
と締める。
私が中央に右拳を突き出すと、リサ、タクト、セリア、ノア、セナが次々とその上に手を重ねていく。
一人の無茶な力押しから、互いを信頼し背中を預け合う「真のチーム」へ。
「みんな、行くわよ――親善戦、完全勝利で迎え撃つ!」
「「「おーっ!!」」」
夕暮れの空に響く生徒会全員の鬨の声。
_________一方鷲宮高等学園の最上階。
学園都市を見下ろす謎の『生徒会長』の後ろ姿だけが見える。
レオンを倒したことで一区切り……かと思いきやその裏に渦巻く陰謀。
レオンはまだ前哨戦に過ぎなかったのです。
ところでプロットを書いてる最中、脱線してリサアイが生まれそうになったので急いで軌道修正しました。
本編に持ち込むな、番外編でやれ。




