第十四話:副会長の平手打ちと、朝焼けの誓い
自らの慢心を悔いて涙を流すアイラに、リサの容赦ない叱咤が炸裂。
そして明かされる、ボロボロになりながらも仲間たちが仕掛けていた「逆転の布石」――。
瓦礫の部屋に朝焼けが差し込む中、ちっとも優雅じゃない生徒会が反撃の狼煙を上げます。
涙を拭ったアイラの覚醒をぜひご覧ください!
割れたガラス片と散乱した書類の海に膝をついたまま、私は震える両手で顔を覆い、しゃくりあげる。
「う、ぅ……っ、ごめん……ごめんなさい……っ!」
普段の快活さは跡形もなく消え去り、零れ落ちる大粒の涙が床の血痕を滲ませていく。
部屋中に漂う焦げ跡と薬品の刺激臭が、自らの慢心が招いた結果として容赦なく突き刺さる。
私が……私のせいだ……
応急処置を受けるタクトの痛々しい背中、包帯を巻くセリアの震える指先、割れた眼鏡を外してうつむくノアの姿を、直視することすらできない。
(私の力なら全部解決できるって……そう思ってた)
(全部私の思い上がりだった……一人で勝手に飛び出して、足止め食らって……)
圧倒的な「個の力」を過信し、仲間の警告を「杞憂」だと切り捨ててしまった自らの傲慢さに、内臓を素手で握りつぶされるような激しい後悔が襲う。
「力があるくせに……誰も守れなかった……居場所すら守れなかった……っ」
「私、生徒会長失格だよ……。こんなの、みんなの上に立つ資格なんてない……っ」
私の持ってた『完璧な優等生』『無敵の首席魔法使い』というメッキが完全に剥がれ落ち、自責の念と恐怖が止まらない。
私は完全に心を閉ざし、小さく丸まった。
荒れ果てた室内に、私の弱々しいすすり泣きだけが響き渡る。
誰も私のことを責めない、その事実がかえって私の胸を深く抉る。
そんな重苦しい沈黙の中、コツ、コツ、と静かに瓦礫を踏みしめながら、一人の人物が私の目の前へと歩み寄ってくる。
うずくまり震える私の前に立ったリサが、負傷してない方の右手を振り上げる。
パァンッ!
と、静まり返った生徒会室に鋭い乾いた破裂音が響き渡る。
思わず痛みに驚き、涙で濡れた瞳を大きく見開いてリサを見上げる。
「り、リサ……?」
リサは眼鏡の奥の切れ長な瞳を鋭く光らせ、厳しい声音で言い放つ。
「いつまでそうやって被害者ぶってメソメソ泣いているのですか、この頼りない会長は!」
「力押しが通用しなかったくらいで絶望するなんて、最初からご自身を何でも一人で片付けられる完璧な英雄とでも思い上がっていたのですか?」
いつもは冷静沈着なリサが感情を露わにして放つ痛烈な言葉が、私の胸に突き刺さる。
リサはフッと小さく息を吐き、静かに視線を落として私と目線を合わせる。
「私たちがあなたについてきたのは、あなたが無敵だからでも、失敗しないからでもありません」
「理不尽なルールに抗い、困っている生徒のためならどんな泥を被ってでも前に立つ、とびきりの大バカ者だからです。……その程度の失敗で折れるような器なら、最初からこの椅子に座らせていません」
包帯を巻いたタクトが、痛みを堪えて苦笑しながら口を開く。
「そうですよ会長。俺の背中の怪我、結構痛いんですから……会長に泣き寝入りされたら痛がり損です」
「ええ。あなたの無鉄砲さに付き合うって決めたのは、私たち自身よ」
「僕の端末を踏み潰した落とし前、きっちり回収してもらわないと困るっす」
思いもよらない、生徒会メンバーからの責め苦ではない、変わらぬ信頼と覚悟の言葉を受け、私の瞳から再び涙が溢れ出すが、それはさっきまでの絶望の涙とは違う、熱を帯びた涙だった。
壁にもたれていたセナが、痛む肩を回しながらフッと不敵な笑みを浮かべる。
「おーい、湿っぽい空気はおしまい?泣き虫生徒会長サマのためにとっておきの手土産を残しておいてやったよ〜」
セナは懐から小型の追跡モニターを取り出し、机の破片の上にコトッと置く。
画面上には、一定の速度で移動し、ある地点で停止している赤い光点が点滅している。
「アイツらが奪っていった銀色のアタッシュケースの底にさ、アタシの特製『魔力封入式発信機』を忍ばせておいた」
部屋の隅で縮こまっていたノアも立ち上がる。
「ナイスですセナさん! ……実は僕も、強奪される寸前にメインサーバーのアクセス権をロックして、一番重要な『魔導薬の配合式コアデータ』はダミーとすり替えておきました」
ノアが割れた眼鏡を指で押し上げ、予備のタブレットを叩く。
「相手がエリートだろうと、暗号解読には最低でも明日の昼まではかかるはずです」
セリアも続けて言う。
「それなら、私にもできることがあるわ。さっき相手が使っていた遅延結界の残留魔力を採取しておいたの。あれの粘性を一瞬で中和して無効化する『溶解薬』なら、夜明けまでに調合できる」
タクトが床の瓦礫を払いのけ、学園周辺の魔力構造マップを広げる。
「発信機の反応がある場所は、旧市街の外れにある帝国魔導院の『臨時中継拠点』ですね。防衛結界は強固ですが、構造上、裏手の魔力排出口はセナさんなら侵入できるはずです」
セリアの薬品で敵の特殊結界を無効化し、ノアが監視網をジャック、セナが潜入して鍵を解除、タクトが退路の隠蔽結界を張る。
それぞれのピースがカチリと噛み合い、完璧な奪還ルートが組み上がっていく。
仲間たちの見事な連携と機転を目の当たりにし、私は胸の奥が熱くなるのを感じた。
(私一人じゃ、罠にハマって終わりだった)
(でもみんなとなら……あいつらにやり返せる!)
単なる『腕力担当の首席』ではなく『仲間を信じて背中を預ける生徒会長』へと、私の意識が完全にシフトする。
私は制服の袖で乱暴に両目の涙を拭い、グッと奥歯を噛み締める。
赤く腫らした目元とは裏腹に、その琥珀色の瞳には迷いや恐怖が消え去り、かつてないほど鋭く澄んだ光が宿る。
スッと背筋を伸ばして立ち上がるその姿は、先ほどまでの弱々しい姿ではなく、学園を背負う「生徒会長」そのもの。
「……ごめん、もう泣かない。私の背中は、みんなに預ける」
割れた東側の窓から、薄紫色の夜明けの光が荒れ果てた生徒会室に静かに差し込む。
瓦礫や散乱した書類を照らす光の中で、傷を負ったリサ、タクト、ノア、セリア、セナの5人が私を囲むように立つ。
絶望の暗闇を抜けた生徒会室に、静かな覚悟と熱気が満ちていく。
私は右手で力強く拳を作り、仲間たちを見据えて不敵な笑みを浮かべる。
「奪われたデータも、荒らされた生徒会室も、みんなにつけられた傷の落とし前も……全部まとめて、特大の利子をつけて返してもらうわよ!」
「ええ。完膚なきまでに叩き潰して、二度とこの学園を舐められないようにしてやりましょう」
「へっ、そうこなくっちゃね」
と、締めにセナが笑う。
壊れた円卓の真ん中に、私を筆頭に全員が拳を突き出し、コツンと合わせる。
私は孤高の首席会長から、仲間と背中を預け合う「真のリーダー」へ一歩前進した。
私は厨二病なのでね、こいつらを最強に作り上げてるんですよ。
誰にも負けない無敵のメンバーを揃えてるつもりです。
アイラは1人じゃないよ〜みんながいるよ〜
ところで脳内をずっと百合が占めてて辛いのでそのうちスピンオフ書きます。




