第十三話:踏みにじられた隠れ家と、首席会長の涙
第十三話です!
踏みにじられた生徒会室、奪われた証拠品、そして流された仲間の血。
駆けつけたアイラを待っていたのは、自らの過信が招いた最悪の結末でした。
「力さえあれば守れる」と思い上がっていた首席会長が、初めて味わう痛烈な敗北と涙をぜひ見届けてください。
生徒会室の重厚な扉が、黒い魔導パルスによる爆縮で蝶番ごと吹き飛ぶ。
煙煙と立ち込める粉塵の中から現れたのは、黒と金の制服に身を包んだ四名の第一魔導執行部の精鋭突入班。
全員が無言のまま、規律正しい隊列で瞬時に室内へ散開し、杖と魔導短剣を構える。
「室内の確保、並びに指定重要証拠の回収を開始する。抵抗する者は反逆分子とみなし実力行使」
「総員、迎撃配置! 会長が戻るまで、ここを死守します!」
リサの冷静な号令とともに、各メンバーが即座に動く。
タクトが床に魔力杭を打ち込み、幾重もの『多層衝撃吸収結界』を展開して突入の勢いを殺す。
セリアは投擲した閃光錬成ポーションが炸裂し、執行部の視界を奪う。
セナは身軽な体術で影から飛び出し、撹乱の短剣撃を繰り出す。
アイラ不在の穴を埋めるべく、全員が持てる技術をフル回転させて立ち向かう。
しかし、相手は魔法省直属の訓練を受けたエリート集団。閃光や目眩ましにも動じず、バイザー越しに魔力探知で的確に対処してくる。
執行部の詠唱が重なり、タクトの結界が「魔力分解術式」によって紙のように裂かれる。
「ぐああっ!? 結界の波長を……一瞬で合わせられた……!?」
「くっ、動きに一切の無駄がない……! まるで機械と戦ってるみたい……!」
セナの刺突も、相手の統率された盾の連携と衝撃魔法で軽くいなされ、壁際へ弾き飛ばされる。
執行部の一人が、端末でデータ消去とバックアップを急ぐノアへ向けて高出力の魔力弾を放つ。
「しまっ――」
「ノア、伏せろぉっ!!」
タクトが身を投げ出してノアを庇い、背中に直撃を受けて激しく吐血しながら倒れ込む。
「タクトくん!?」
隙ができたセリアとリサの前にも執行部が肉薄し、圧倒的な体術と魔力刃の前に次々と制圧されていく。
必死の抵抗も虚しく、生徒会室の防衛ラインは完全に崩壊していく。
生徒会メンバーたちは床に倒れ伏す。
執行部の団員がノアのメインデスクへ土足で上がり込み、端末の魔導ドライブを力づくで引き抜く。
鍵のかけられた保管庫の頑丈な鉄扉も、魔導カッターで易々と焼き切られ、バルトロメウスから押収した「試作薬データ」と「予備アンプル」が銀色の回収ケースへと収められていく。
「くそっ……僕たちの……集めた記録が……っ!」
ノアが悔しそうに拳を地面に叩きつける。
「貴様ら素人が持っていても害悪でしかない。これは国家の管理下に置かれる」
証拠品を探す過程で、部屋中の家具が無残に破壊されていく。
セリアが手入れしていた薬草の植木鉢が蹴り倒されて割れ、タクトがいつも座っていたソファは裂かれ、アイラたちがさっきまで食べていた限定シュークリームの箱が靴底で無慈悲に踏み潰される。
仲間たちにとってかけがえのない「居場所」が、単なる捜索現場として乱暴に蹂躙されていく。
「やめろ……っ! そこはアイツらの……居場所なんだぞ……っ!」
立ち上がろうとするセナの背中を、執行部のブーツが容赦なく踏みつけて組み伏せる。
「がハッ………!!」
腕から血を流しながらも、リサは鋭い視線で執行部の指揮官を睨みつける。
「……あなたたちエリートは、他人の積み上げてきた誇りを踏みにじることしかできないのですか」
執行部の隊長格は冷たい視線でリサを一瞥し、感情のない声で言い放つ。
「誇り? 笑わせるな。国家の秩序の前には、田舎学生の仲良しごっこなど塵に等しい。……目的の物品は全て確保した。撤退する」
回収ケースを抱えた執行部が無機質な足音とともに去っていく。
煙と埃が立ち込める中、壊れた蛍光灯がチカチカと不気味に明滅する。
息も絶え絶えのタクトの呻き声と、荒れ果てた部屋の惨状だけが残された。
________一方私。
インカムからノアやリサの悲鳴が途絶え、ザーッという無機質な砂嵐だけが響く。
許せない、許せない……!!!!
廃倉庫の中央、粘つく『深層遅延結界』に囚われていた私の全身から、怒りと焦燥の魔力が逆流するように噴き上がる。
瞳が爛々と光り、普段の軽薄さは完全に消滅。全身の血管が浮き出るほどの魔力が臨界点を超える。
遅延結界を維持していた執行部員たちが、アイラから放たれる規格外の魔力圧に息を呑み、肌を粟立たせる。
「なっ……!? 遅延術式の許容値を魔力総量だけで超えてくるだと……!?」
「空間が重いなら……全部まとめて凍りついて砕けろぉぉぉっ!!」
私は足元の床を渾身の力で踏み抜く。
展開されていた遅延結界そのものを『絶対凝固』で丸ごと結晶化させ、そのまま拳を真横に一閃させる。
バギィィィン!! と巨大なガラスが割れるような轟音とともに、術式ごと空間の粘性を力づくで粉砕する。
その衝撃波で四方の術士たちが壁へ吹き飛ばされた。
拘束を破った私は、吹き飛んだ術士たちを一瞥もせず、割れた天窓から夜空へ跳躍する。
空中に次々と不可視の凝固足場を生成し、音速に近い初速で学園へとカッ飛ぶ。
「間に合って、お願いだから間に合って……!」
肺が焼けつくように痛み、喉の奥から鉄の味が競り上がってくるが、足の回転を一切緩めない。
遠くに見えてきた学園の校舎。
いつもなら温かいオレンジ色の灯りが漏れているはずの生徒会室の窓が、真っ暗に沈んでいる。
________そんな。
窓ガラスには無残な亀裂が入り、煙が夜風に流れているのを目撃し、私の心臓が嫌な音を立てて跳ねる。
恐怖で震える指先を握りしめながら、私は生徒会室のベランダへとダイブする。
私は割れた窓から生徒会室へ転がり込むように着地する。
焦げ臭い煙と、鉄錆のような生々しい血の匂いが鼻をつく。
吹き飛んだ扉、真っ二つに割れた長机、床一面に散乱した書類と割れたティーカップ。
かつて自分たちの笑い声で満ちていた「温かい隠れ家」は、見る影もなく無残に破壊されていた。
間に合わなかった______
壁際では、背中を赤く染めたタクトがぐったりと倒れ、セリアが震える手で止血の包帯を巻いている。
ノアは眼鏡を割られ、破壊された端末の前でうずくまり、セナも壁にもたれて苦痛に顔を歪めている。
そしてリサが、血の滲む腕を押さえながら、息を切らして私を見上げる。
「……かい、ちょう……」
「あ、ああ……みんな……っ、なんで……!?」
私はその場にへたり込み、震える自分の両手を見つめる。
どれだけ個人の力があっても、どれだけ強力なパンチを打てても、敵の策略に踊らされ、守るべき仲間を誰一人守れなかった。
私が……調子に乗って一人で飛び出したから…
私がみんなの忠告を聞かずに、自分の力に溺れていたから……!
最強の生徒会長」という全能感は粉々に砕け散り、自分の愚かさと無力さだけが鋭利な刃物のように胸を突き刺す。
「ごめん……なさい……っ、私のせいで……私が、バカだったから……っ!!」
琥珀色の大きな瞳から、大粒の涙がボロボロと溢れ落ち、瓦礫の床を濡らす。
普段のドヤ顔も、威勢のいい減らず口も完全に消え去り、私はまるで迷子の子供のように肩を震わせて泣き崩れる。
完璧だった首席会長の「完全な挫折と敗北」を刻みつけた瞬間だった。
あーあ……やっちゃったねアイラ……
完全無敵の子が流す涙って可愛くってぇ(?)
あと最強だと思ってた仲間たちがボロボロになる姿も良くってぇ(?)
え?つまりこの章は私の性癖が詰まってますよ?はい。
あんな完璧に魔法省に乗り込んだ生徒会役員たちがこんなボロボロになるなんて思いもしないじゃないですか。
しかもタクトなんてノアを庇って……フォロワーに「1組くらいホモ入れろ」って言われたからここでいいですか?(?????????)
バカなこと言ってないで書き進めます、はい。




