糸
地面に倒れたまま。
呼吸が荒い。
身体が重い。
だが――
終わっていない。
龍は、ゆっくりと起き上がる。
「……まだだ」
かんたも動く。
「マジでしぶてえな俺ら」
幸人は弓を拾う。
腕が震えている。
「……だが、見えた」
全員が、同じ方向を見る。
上。
悪魔。
そして――
糸。
「……あれか」
かんたが言う。
細い。
だが、確実に繋がっている。
人形と、本体。
「全部、あれで繋がってる」
幸人が言う。
「操作も、防御も」
龍が頷く。
「つまり」
「切ればいいってことだな」
かんたが言う。
単純。
だが――
難しい。
人形が動く。
遮る。
守る。
簡単には届かない。
「……正面からは無理だ」
幸人が言う。
「ならどうすんだよ」
龍が答える。
「一瞬でいい」
短い言葉。
「糸を切る隙を作る」
かんたが笑う。
「またそれかよ」
「それしかねえ」
配置が変わる。
龍が前。
かんたが左右に動く。
幸人が後方。
「行くぞ」
龍が踏み込む。
人形が来る。
無視。
受ける。
斬る。
押し込む。
かんたが横から突っ込む。
引きつける。
動きを乱す。
人形が分散する。
その瞬間。
幸人が狙う。
糸。
一本。
放つ。
矢が走る。
一直線。
だが――
人形が割り込む。
防がれる。
「……っ!」
悪魔が上昇する。
距離を取る。
完全に防がれた。
「……まだ足りねえか」
幸人が言う。
龍が歯を食いしばる。
「いや」
短く言う。
「届いてる」
「は?」
かんたが言う。
龍が指す。
一本の糸。
わずかに。
揺れている。
「……かすった」
幸人が言う。
「完全には防げてない」
つまり――
「いける」
龍が言う。
悪魔は、まだ余裕だ。
だが。
確実に、崩れ始めている。
戦いは、次で決まる。




