盤面
亡霊が動く。
同じ軌道。
同じ速度。
同じ間隔。
力嶽は、動かない。
見る。
観察する。
繰り返し。
そして――
足元。
違和感。
わずかな変化。
その瞬間。
地面が、光る。
黒と白。
規則的に分かれる。
広がる。
「……盤か」
力嶽が言う。
足元一帯に、白と黒の正方形。
均一に並ぶ。
空間全体が、変わる。
亡霊も、止まる。
そして。
周囲に、現れる。
駒。
白と黒。
人型に近いもの。
だが、形が違う。
種類がある。
「……なるほど」
力嶽が言う。
自分の周囲。
白い駒。
亡霊の周囲。
黒い駒。
そして――
中央。
自分。
亡霊。
「……キングか」
確信。
その瞬間。
頭に流れ込む。
強制的に。
理解させられる。
動きの制限。
位置の意味。
攻撃の順番。
全て。
「……チェス」
亡霊が動く。
今度は違う。
一直線ではない。
斜め。
限定された動き。
盤に従っている。
力嶽が、一歩動く。
制限がある。
自由じゃない。
だが――
読める。
「……そういうことか」
駒が動く。
白が前に出る。
黒が迎える。
ぶつかる。
消える。
ルール通り。
完全に。
戦場が変わる。
これはもう、ただの戦闘じゃない。
思考戦。
「……面白い」
力嶽が言う。
亡霊がこちらを見る。
揺れる。
だが、確実に“意志”がある。
「……やってやる」
力嶽が構える。
盤の上で。
戦いが始まる。




