歪み
密林の中。
いつも通りの狩り。
だが――
視界が、揺れた。
「……っ?」
龍が足を止める。
空気が歪む。
光が曲がる。
「なんだこれ……」
かんたが言う。
立ち眩み。
足元が不安定になる。
そのとき。
森の奥から、何かが出てくる。
人間。
傷だらけ。
血だらけ。
「……生きてるのか?」
幸人が言う。
近づく。
その瞬間。
人間が、倒れる。
同時に――
“浮かぶ”。
その上に。
巨大な影。
人型。
だが、人ではない。
細い。
長い。
糸のようなものが垂れている。
その瞬間。
頭の奥に叩き込まれる。
拒否できない。
――人形使いの悪魔。
「……っ!」
空間が裂ける。
力嶽の足元が消える。
「力嶽!」
かんたが叫ぶ。
だが、返答はない。
龍はすぐに前を見る。
「……悪魔か」
短く言う。
糸が動く。
倒れていた人間が立ち上がる。
不自然な動き。
「操ってるな」
幸人が言う。
人間が走る。
速い。
異常に。
龍が迎え撃つ。
斬る。
だが、止まらない。
「……効いてねえ!」
「本体だ!」
幸人が叫ぶ。
龍が上を見る。
悪魔が浮いている。
距離がある。
その間にも、糸が増える。
別の人間が立ち上がる。
「数増えるぞ!」
かんたが叫ぶ。
戦場が変わる。
対人。
だが、人じゃない。
動きが狂っている。
だが、速い。
「……厄介だな」
龍が言う。
――
別の場所。
力嶽は、立っていた。
黒い空間。
床だけがある。
「……ここか」
次の瞬間。
頭に流れ込む。
――64番目の亡霊(ファイナル・フラグメント・オブ・ザ・チェスボード)。
目の前に現れる。
人型。
だが、輪郭が曖昧で、欠けている。
「……亡霊か」
力嶽が言う。
亡霊が動く。
音もなく。
距離を詰める。
速い。
だが、読める。
力嶽が踏み込む。
斬る。
すり抜ける。
「……実体が薄いか」
亡霊が反撃する。
触れる。
その瞬間――
重い。
身体が鈍る。
「……なるほどな」
力嶽が言う。
「削るタイプか」
構える。
亡霊も止まらない。
戦いが始まる。
別々に。
同時に。
そして――
どちらも、簡単には終わらない。




