高台
密林に戻った。
だが、状況は変わっている。
「……泥、多すぎだろここ」
かんたが足元を見る。
一歩踏むごとに沈む。
動きが遅い。
だが――
「問題ない」
幸人が言う。
手をかざす。
泥が動く。
持ち上がる。
固まる。
盛り上がる。
「……おお」
かんたが声を上げる。
地面の上に、別の地面ができる。
沈まない。
安定している。
「高台か」
龍が言う。
「これなら使える」
幸人はさらに泥を動かす。
広げる。
厚くする。
踏み固める。
形ができる。
簡易的な拠点。
泥の上に、安定した足場。
「……すげえなこれ」
かんたが言う。
「範囲内ならな」
幸人が手を下ろす。
動きは止まる。
だが、形は残る。
「維持はできるのか?」
「しばらくはな」
力嶽が言う。
「だが、崩れることもある」
「なら使うだけ使う」
龍が言う。
その日から、そこに留まった。
三日。
短いが、意味はある。
訓練。
食料確保。
休息。
そして――
考える時間。
夜。
火を囲む。
周囲は暗い。
だが、高台の上は安定している。
「……で、どうすんだ」
かんたが言う。
誰もすぐには答えない。
龍が口を開く。
「獣のドラゴンだ」
それが、全てだった。
幸人が頷く。
「逃げる理由はない」
「でもあいつ、普通に無理ゲーだったぞ?」
かんたが言う。
「事実だ」
力嶽が答える。
「今のままでは勝てない」
沈黙。
「だから変える」
龍が言う。
「戦い方を」
幸人が続ける。
「正面からは無理だ」
「じゃあどうすんだよ」
「削る」
短い答え。
「動きを読む。
誘導する。
崩す」
「一回で倒す必要はない」
力嶽が言う。
「確実に、削る」
かんたは少し黙る。
「……やるしかねえか」
龍が火を見る。
「そのための準備のために訓練だ」
三日目の夜。
方針は決まった。
休みは終わる。
次獣と戦う時は――
本気の戦いになる。




