登坂
遺跡の出口は、上にあった。
見える。
だが――
「……きついなこれ」
かんたが言う。
坂だ。
長い。
しかも急だ。
足を置くだけで滑る。
石が湿っている。
「登れるか?」
「普通なら無理だな」
幸人が言う。
さらに――
“カチッ”
音。
「来るぞ!」
横から刃。
飛び出す。
坂の途中でも、罠はある。
「最悪だろこれ!」
かんたが叫ぶ。
登るだけでも難しい。
そこに罠。
落ちれば下まで戻る。
「……泥使うぞ」
幸人が言う。
手をかざす。
足元の泥。
わずかに残っている。
それが、動く。
広がる。
坂の表面に貼り付く。
「……滑らねえ」
かんたが言う。
「固定してる」
幸人が答える。
「完全じゃないが、マシになる」
龍が踏み込む。
確かに、違う。
滑りにくい。
「行けるな」
登る。
一歩ずつ。
確実に。
だが――
罠は止まらない。
“カチッ”
上から石。
落ちる。
龍が避ける。
だが、足場が揺れる。
「くそっ……!」
その瞬間。
泥が動く。
足元を支える。
崩れない。
「……助かるなこれ」
龍が言う。
「集中しろ」
幸人が返す。
操作は簡単じゃない。
広くは動かせない。
だが、要所は支えられる。
かんたが登る。
「おお、これ楽だな!」
「完全に頼るな」
龍が言う。
「外れたら終わる」
その通りだった。
泥の範囲は限られる。
全部はカバーできない。
自分で登る必要がある。
だが――
明らかに違う。
さっきよりも、進める。
罠を踏む。
避ける。
登る。
繰り返す。
やがて――
出口に届く。
最後の一歩。
地面が平らになる。
「……出たな」
龍が言う。
外の空気。
湿っているが、遺跡より軽い。
全員が、外に出る。
振り返る。
遺跡は、そこにある。
何も変わらない。
「……二度と入りたくねえ」
かんたが言う。
「同感だ」
幸人が答える。
龍は、前を見る。
「……行くぞ」
遺跡は終わった。
だが、道は続く。
そして――
戦いも、まだ終わっていない。




