内部
遺跡の中は、静かだった。
外の音は、完全に消えている。
湿っているが、泥はない。
床は石。
踏みしめるたびに、軽く響く。
「……さっきよりはマシだな」
かんたが言う。
「油断するな」
龍が即座に返す。
壁には、削られた跡がある。
人工的だ。
だが、古い。
「人が作ったのか?」
「分からん」
力嶽が答える。
「だが、残っている以上――」
そのとき。
龍の足が、止まる。
「……下、見るな」
遅い。
かんたが一歩踏み出す。
“カチッ”
軽い音。
「……あ」
次の瞬間。
床の一部が沈む。
左右の壁が開く。
「伏せろ!」
龍が叫ぶ。
槍のようなものが飛び出す。
一直線。
空気を切る音。
かんたの横をかすめる。
「っぶねぇ!!」
すぐに止まる。
罠は、それ以上続かない。
「……一回だけか」
幸人が言う。
「踏んだ場所だけ反応する」
龍は床を見る。
石の色が、わずかに違う。
「……見分けられるな」
「早く言えよ!」
かんたが怒鳴る。
「今気づいた」
短い返答。
進む。
床を見る。
色の違い。
わずかな隙間。
踏まない。
避ける。
だが、全部は避けきれない。
幸人がわざと踏む。
罠を発動させる。
槍が出る。
止まる。
「これで安全になる」
「なるほどな」
かんたが頷く。
少しずつ、進む。
通路が曲がる。
視界が狭くなる。
そのとき。
頭上から音。
「上だ!」
龍が叫ぶ。
石が落ちる。
崩れる。
押し潰す形。
全員が散る。
ギリギリで避ける。
「上にもあるのかよ!」
「全部だな」
力嶽が言う。
前。
横。
上。
どこでも来る。
だが――
「規則がある」
幸人が言う。
「発動は一回。
範囲は決まってる」
「なら」
龍が前に出る。
「潰して進む」
わざと踏む。
罠を出す。
止まる。
進む。
繰り返し。
時間はかかる。
だが、安全は上がる。
やがて――
通路が開ける。
広い空間。
天井が高い。
「……ここは」
かんたが呟く。
中央に、何かがある。
台。
石でできた台。
何も乗っていない。
だが――
空気が違う。
「……まだ終わってないな」
龍が言う。
全員が止まる。
罠とは別の、何か。
この先に、ある。




