基盤
数日が経った。
訓練は続いている。
だが――
「……無理だな」
龍が言った。
「何が」
かんたは地面に座り込んだまま答える。
「全部だ」
短い言葉。
幸人が弓を整備しながら言う。
「寝る場所が不安定すぎる。
食料も安定しない」
「水もだ」
力嶽が付け加える。
「このままじゃ、訓練の効率が落ちる」
かんたが空を見上げる。
「今さら?」
「今気づいた」
龍は周囲を見る。
平野は広い。
だが、何もない。
寝るのは地面。
食うのはその場で狩ったもの。
長く留まる前提になっていなかった。
「……街とかないのかよ」
かんたが言う。
「ほぼない」
力嶽が即答する。
「少なくとも、この周辺にはない」
「終わってんな」
「だから作る」
龍が言った。
一瞬、沈黙。
「……作る?」
かんたが顔を上げる。
「拠点だ」
龍は地面を指す。
「ここを使うなら、ここで生活できるようにする」
幸人が頷く。
「最低限でいい。
寝る場所、食料、水」
「防御もだな」
力嶽が言う。
その日から、作業が始まった。
最初は、木を集める。
倒す。
運ぶ。
組む。
単純だが、うまくいかない。
「崩れた!」
かんたが叫ぶ。
組んだ木が倒れる。
「角度が悪い」
幸人が言う。
「適当にやるな」
「適当じゃねえよ!」
やり直す。
また崩れる。
何度も繰り返す。
水も問題だった。
近くの水場はある。
だが、そのまま飲めない。
「どうすんだこれ」
かんたが水を見ながら言う。
「濾すか、煮るか」
幸人が答える。
「煮るってどうやって?」
「火を起こせ」
「そこからかよ」
火も、簡単にはつかない。
風で消える。
湿っている。
「……めんどくせえ」
かんたが呟く。
「やれ」
力嶽の一言。
食料も同じだった。
狩るだけでは足りない。
保存ができない。
「全部その場で食うしかねえのか」
「それじゃ足りない」
龍が言う。
「貯める必要がある」
やることは増える。
だが、止まらない。
少しずつ、形になっていく。
簡単な屋根。
風を防ぐ壁。
火の維持。
不格好だが、機能する。
「……それっぽくなってきたな」
かんたが言う。
「まだ足りない」
幸人は即答した。
力嶽は、少しだけ頷いた。
「ようやく、土台だ」
戦うための準備。
それは、剣だけじゃない。
生きるための場所。
それが、やっと形になり始めていた。




