運搬
拠点は、形になった。
風を防ぐ。
火を維持できる。
最低限、寝られる。
だが――
「……これ、動かせねえな」
かんたが言った。
誰も否定しない。
木で組んだ壁。
簡単な屋根。
火の場所。
全部、その場に固定されている。
「移動するたびに作るのは無理だ」
龍が言う。
「時間がかかりすぎる」
「資源も足りない」
幸人が続ける。
力嶽は腕を組んだまま動かない。
「なら、運ぶ」
龍が言った。
「……どうやって」
かんたが即答する。
「全部持ってくのか?」
「無理だな」
幸人が言う。
沈黙。
やがて、かんたが地面に線を引いた。
「分解すればいいんじゃね?」
三人の視線が集まる。
「バラして、持ってって、
また組む」
「……できるか?」
「やるしかねえだろ」
試した。
木を外す。
束ねる。
持ち上げる。
「重っ!」
かんたが叫ぶ。
「一人じゃ無理だ」
「なら分ける」
龍が言う。
さらに分解する。
細かくする。
持ち運びやすくする。
「……これならいける」
幸人が言う。
だが問題は残る。
「時間だな」
力嶽が初めて口を開いた。
「組み直す時間が長い」
「移動先でまた時間食うってことか」
かんたが言う。
「襲われたら終わりだな」
龍は地面を見る。
考える。
そして、木を一本持ち上げた。
「形を変える」
「は?」
「組む前提をやめる」
龍は木を並べる。
縛る。
固定する。
「……最初から、
持ち運べる形にする」
かんたが目を細める。
「台か?」
「近い」
幸人が補足する。
「分解しない。
そのまま運ぶ」
「でも重いぞ」
「引く」
短い答え。
試した。
木を組む。
平らにする。
紐で引く。
地面を滑らせる。
「……動いたな」
かんたが言う。
完全ではない。
引っかかる。
止まる。
だが、進む。
「改良する」
龍が言った。
止まらない。
試す。
壊す。
作り直す。
少しずつ、形が変わる。
運べる形へ。
移動できる拠点へ。
戦うための準備は、
まだ続いていた。




