確保
新しい拠点は、見つからなかった。
岩場は狭い。
森は視界が悪い。
谷は危険すぎる。
「……どこも微妙だな」
龍が言う。
「条件を満たす場所が少なすぎる」
幸人が答える。
そのとき、視界が開けた。
平野だった。
起伏は少ない。
見通しがいい。
水も近い。
「……ここは」
かんたが呟く。
言い終わる前に、
動く影が見えた。
複数。
群れている。
「カマボコのドラゴンか」
龍が剣を抜く。
名前は来ない。
原生種。
「……ちょうどいいな」
力嶽が言った。
「ここを使うなら、排除する」
龍は前に出る。
「やるぞ」
群れが気づく。
一斉に動く。
だが、速くない。
強くもない。
龍が一体を斬る。
抵抗はあるが、重くない。
幸人の矢がもう一体を貫く。
かんたは、少し遅れて動いた。
「……久々すぎて感覚おかしいわ!」
突っ込んでくる一体を、
なんとか避ける。
「避けるだけでいい!」
龍が叫ぶ。
数は多い。
だが、連携はない。
一体ずつ、確実に減らす。
戦いは、長くならなかった。
最後の一体が倒れ、
平野に静けさが戻る。
「……確保、完了だな」
幸人が言う。
かんたは、その場に座り込んだ。
「……疲れた」
「まだ終わってねえ」
龍が言う。
「説明がある」
かんたが顔を上げる。
「説明?」
力嶽が前に出た。
左手首を見せる。
「ドラゴンの体内で生まれる結晶がある」
かんたは眉をひそめる。
「それを取り込むと、
体に入り込む」
「……気持ち悪」
「戻らない」
即答だった。
「能力が得られるが、
捨てられない」
かんたは黙る。
「二つ目も無理だ」
「……それで、俺は?」
「死にかけた」
力嶽は言う。
「だが、間に合った」
手首を軽く叩く。
「《カマボコのルビー》」
「名前ダサ」
「うるさい」
力嶽は続ける。
「剣一本分くらいの範囲にいる味方の腹を満たす」
「腹?」
「空腹が消える」
「それで生きてるのか、俺」
「それだけじゃない」
力嶽はかんたを見る。
「体の四分の一以内の傷なら、
時間をかければ修復できる」
かんたは自分の腹に手を当てる。
「……これ」
「手をかざし続ける必要がある」
力嶽が言う。
「一瞬じゃ足りない。
長時間だ」
かんたは、しばらく黙る。
「……じゃあ俺、三週間ずっと?」
「そうだ」
「うわ……」
かんたは空を見上げた。
「命拾いしたな」
龍が言う。
「……ほんとだよ」
風が吹く。
平野は静かだった。
視界も、広い。
「ここを使う」
力嶽が言う。
誰も反対しなかった。
新しい拠点が、決まった。




