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共和派に死を

気配がなかった。

こんな人混みなのに。 

撃たれたのは間違いない。

急所を外れている。

すでに手は銃を握っていた。



「お前達も焼き尽くしてやる…」


そういう声がどこからか聴こえた。

これくらいの銃創など大したことはない。


(どこだ!)


すると、撃たれたはずの箇所が熱い…

その瞬間そこに火が…


(熱!コレは!)


その瞬間火はあっという間に全身に…


周りは突然の炎にパニックになっていた。

この街なかの人混みの中で人が突然燃えているのだ。

悲鳴と逃げる人々の足音がひびいた。

これが最初だった。

突然人が燃える…

場所はどこでも…

一日で何件そんなことが発生しただろう…

警察さえ混乱していた。

人々を恐怖に陥れるには十分だった。

人々は噂した…


これは魔女の復讐だ…と



「見事だ!やってくれる!(笑)」


アイゼンヴァルトはわざとらしく喜んでみせた。


「ずいぶん手の込んだ、面倒くさい事をするもんだ!好都合だ!どうするね?治安機関さんは!」


パトリックは無言だった。

誰がやったかなんてわかっていた。


「まあ、いいだろう…予定を早めるとしよう!どこまで耐えられるかな?(笑)」


彼の目はパトリックをも嘲笑っていた。



「あんたは契約書の範囲内でしか行動できない…それ以上はただの契約違反にはならない…それ以上のことが…」


「それでも脅しのつもりかね?(笑)私の目的は契約を履行することでも、国益を追求することでもない…ただの結果を追求するだけだ!」


「まあ、心配するな(笑)あなたには知らないことだった…ということだ(笑)」


そう言い捨てるとアイゼンヴァルトは軽くパトリックの肩に手を乗せて出ていった。


軍の駐屯地の一角。

黒い軍服に身を包んだ大勢の兵士が集まっていた。

そこにアイゼンヴァルトはいた。

彼は兵士達をゆっくりと見渡した。


壇上の彼に兵士達の視線が集まり始めた。


「諸君!聞いてくれ!」

「総員!傾注!」

副官の号令が響いた。

兵士達は静かになった。


「諸君!君たちの日々の奮闘には感謝する!いや、これまでの苦難の中での奮闘と忍耐と勇気に感謝する!いよいよこの時が来た!我々の死に場所をみつけた!共和派に一矢報いるときが来たのだ。これで最期だ!これでこの共和国という欺瞞と共和派のクズ共にお別れしよう!王国万歳!」


しばらくの間があった。

その間兵士達はそれぞれの思いを確かめていた。

あの激しい内戦を…

友が、家族が、愛する人が…

忠義などというものではない。

仕事に対する責任なのか…

ただ任務にひたすら邁進してきた。

それなのにある日突然罵倒され蔑まれた。

犯罪者扱いされた。

収容所でも仲間は…

希望も何もなくなりかけた時、改めて兵士として働く機会を得られた。

自分達が良かった時代…

そんな時がまた来ることを願わずにはいられなかった。



「王国万歳!共和派に死を!」


それまでのただの作業風景が一変した。

それは勇敢な軍人の出撃準備の雰囲気に変わった。

誰かがなにかの歌を歌い出した。

それを聞いていたアイゼンヴァルトの顔はだんだん緩んでいた。

だが目は鋭さを増していた。

その歌の歌詞には、国王を称える言葉が入っていた。

軍の兵士達はただ呆然とその様子をみているだけだった。

なにが起こっているかわかっていなかった。

ただ聞いたことのない歌、言葉…

それがなおさら彼らの理解を妨げていた。

アイゼンヴァルト達は全ての弾薬、装備を積んだ。

全兵力が動き始めていた。

郊外の駐屯地から街なかに入り堂々と街なかを進軍始めた。


それは今までの暴虐の限りを尽くした虐殺部隊とは思えなかった。

歌は続いていた。

街の人々は知らない言葉で歌われる歌に興味を示した。

その隊列を組んで整然と歩く姿はその観衆を魅力していた。

きっと勇猛な軍人達が行進しているのだろう。

そう思える行進だった。


歌が聞こえてきた。

最初は分からなかったが、記憶がよみがえり始めた。

パトリックは歩きながら、頭の中でそのメロディを奏でていた。


(あ…あの歌…大佐と少尉の…)


以前その二人に初めて会った時、駐屯地で歌っていた…彼らの祖国の歌…


歌は、彼が歩くにしたがってだんだん大きくなってきた。


歌だけではない。

軍靴の響きも、馬の蹄のお音も、金属金属がぶつかる音…

その音が近づいて来て正体がわかった。


(どうなってるんだ?これは…)


彼の視界に入ってきたのは、黒い軍服に身を包んだ部隊。

だが、何かが違う…

無表情に淡々となにかをこなすように人を殺していたあの集団とは違って見えた。

今から前線に勇気を持って戦いに行く勇敢な部隊…


馬上のアイゼンヴァルトの視線がわずかに、彼を一瞬とらえた。

彼はなにも言葉を口にできなかった。

そして走り出した。



「担当官!」


呼んだのは、部下だった。


「おい!あれはどうなってるんだ!軍はなにをやってる!」


「わかりません!明らかな違反行為です!軍は動き始めています!」


「うちは把握してるんだな?部隊はどうなっている?」


「はい!部隊はすでに行動を始めています。監視と情報収集も続けています!」


「わかった!続けてくれ!軍と全ての情報を共有しろ!規定の秘匿事項以外は全てだ!」


「了解です!担当官は?」


「俺は少し寄るところがある…その後、本部に行く…」


(彼女はもう動いてるだろうな…)


そう考えてるパトリックの視界には、人混みの中のイルマの姿が…

それと、その彼女を監視する視線もいくつか…


(皆さんお忙しいことで…もう寄るところもなくなったな…)




軍の駐屯地が事態を正確に把握して行動に移したのは、アイゼンヴァルト達が街を離れてからだった。

急遽追撃部隊が編成された。



「指示あるまで出撃を待て…でありますか?しかし…」


「我々は待機だ…治安部隊の支援にまわる…これは軍の任務ではないとのことだ…」


「しかし、治安部隊は軽火器しか…」


「まあそういうことだ…国防大臣からの指示だ…いろいろ関係者がいるからなあ…」


「了解です」


最も近い治安部隊が態勢を整えて追撃始めるまでになにが起こったか…



「さあ…どうするのかね…彼らを守るための死を覚悟できるのかな…共和国の連中は…魔女も出てくるだろう…それがいい…」


家々は燃えていた…

あちこちに人が転がっていた…


「君達は勇敢だな…彼らを守るために命をかけるとは…共和国精神の体現というわけだ…殉教者にでもなればいい…」


そういうとアイゼンヴァルトはこの保護区の警備部隊の生き残りを次々と処刑していった。



「出てこい!魔女!君の同胞はこのままだと一人も残らないぞ!どうする!見えてるんだろ!魔術でも呪術でもなんでもいい!さっさと我々に使えばいい!殲滅は簡単だろ!」






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