砂塵の中の対話
死体は片付けられていた。
兵士達は次々と物資を馬車から降ろしていた。
その動きは鍛えられた行動だった。
形ばかりの軟な柵は強固なものに変えられた。
土嚢が積まれ、底に何基もの回転式銃と野砲が据え付けられた。
あっという間に、そこは強固な防御陣地となっていた。
まだ焼け落ちた家々の焦げた匂いた血の香りが漂っていた。
その漂う中に見えていたものは土嚢の壁の前面の人の姿だった。
手と足を縛られ座らせれていた。
死んでいるのか生きているのか…
微かに生きているのかもしれないと思わせることもあった。
「さて…君達の自由とか平等とか博愛とやらをみせてもらおう…」
双眼鏡をのぞく、アイゼンヴァルトの口から独り言がもれた。
「来ました…治安部隊です。やはり一点突破ですね…」
「少ない兵力を分散する意味はないからな…よし、兵力を把握して報告しろ!」
一方…
「少尉!前方に人が…」
治安部隊の中に動揺が広がる。
「確認した…本部に報告だ…」
「どうなってるんだ!あいつは!」
そう怒声をあげたのは、パトリック立った。
「頭おかしい!」
「それが、保護民と市民を分けて配置してます
…」
「?どういうことだ…試してるんだな…俺たちを…いや…だけじゃないな…」
エルザだもだ…
おまえはどうする?
「中尉!誰か近づいてます!」
「なんだと!」
治安部隊の司令は直ぐ双眼鏡で確認した。
「…誰だ…」
「やめさせますか?実力で」
「いや、ちょっと待て…」
司令の双眼鏡の中に映っていたのは、長身の人物…見慣れない軍服を着ていた。
それは、共和国防衛隊のものとは違う、どこかの外国のものらしい。
少し古風な感じだった。
陣地からの攻撃はなかった。
それが奇妙だった。
「あれは、我々の軍服です…」
部下のその言葉にアイゼンヴァルトは微かに唇を開いていた。
「やるじゃないか…クロイツァー少尉…撃つなよ…」
陣地の兵士の視線が一身に集まっていた。
「王国軍の諸君!」
その言葉は兵士を熱くさせた。
「私はかつて君達と同じように王に忠誠を誓い戦ったものだ!」
時々砂塵が舞う…
その中で一人の兵士と多くの兵士達は対峙していた。
「なんで堂々と出てくる!おまえは我々の標的だぞ!」
とアイゼンヴァルトは叫んだ。
「私が出てきたからには引いてくれるか!」
「お前などどうでもいいのだ!我々は我々のためにやっている!ここで我々の勇姿を祖国の共和派のクズどもに見せてやるのだ!」
部下に合図すると、王国の国旗が空に舞い始めた。
「我々はこの旗のために戦う!」
「ここでこんな事をしてなんになる!祖国の共和派のクズどもにはなんにも思わない!戦う相手はアイツラでも無いのに!なんの意味がある!」
彼等の行動がなんとなくイルマにはわかっていた。
意地だ…
敵に頭を下げて生き残った。
それでも…
それは続けられなかった。
誇りを捨てて生き残っても、それは虚ろな生き方しかできない。
誇りと共に生きてきて、誇りを捨てたはずなのに、誇りを捨てては生きていけなかった。
誇りを捨てて生きていくことよりも、誇りのために死を選ぶ。
たとえそれが、周りから見たら馬鹿げていても、無意味だと言われても。
「言うとおりだ!(笑)我々はこんなことしかできなかった!お前にも感謝する!お前の知り合いの魔女さんにもな!おかげでご覧の通りだ!」
「なんの話をしてるんだ、全く!」
「突入しますか?」
「ここはまずい…」
治安部隊の司令は土嚢前の方に視線を向けた。
そこには警備兵の死体が並べられていた。
その頃、軍の部隊が向かっていた。
アイゼンヴァルトとクロイツァー少尉の祖国である共和国から武力行使の許可が出たからだ。
アイゼンヴァルト達はただの武装暴徒となった。




