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対峙

森の中

下草の中を慎重に進んでいた。


ビシッ!


幹に弾丸がめり込む音。

馬から降りて草のなかに身を隠す。


辺りを慎重に注意深く見渡す。


銃声がした。

すると爆発が何箇所かで同時に。


トラップだ。

このまま進んでいたらやられていた。

あいつらだ。 

こんなところにまで。

狙いは自分。

エルザか自分、どちらかがいなくなればそれでいいのだ。どちらが消えれば都合がいいのだ。


「誰だ!」


姿はみえない。

「生きててよかった!イルマ!」


聞き覚えのある、懐かしい声。

でも、声は深い悲しみと闇をまとっていた。


「エルザ!エルザなんでしょ!姿をみせて!」


イルマは立ち上がってさっき銃声のした方に叫んだ。

「会いたから!」


それでも、誰も姿を見せない。

なぜだ?

イルマはわからなかった。

返事はなかった。


「エルザ!聞いて!伯爵は…」


「知ってる!なにもかも!」


そうなのか…

彼女は全てを知っていたのだ。

それを知ったときの彼女のそばにいなくてよかった。

彼女の悲しみを目の前でみなくてよかったと思った。

とても耐えられないと思ったからだ。



「でもイルマが生きててよかった!」


声の最期は少し弱々しく聞こえた。


「生き残ったんだ…」


あのとき大佐が逃がしてくれた。



「私は生き残った!今も戦ってる!エルザ、私達に力を貸してほしい!私は今あなたと同じように同胞のために、独立のために戦ってる!」


あ…イルマはまだ希望で戦っている。

私はその希望はない。

今は…


「ごめん…もう私は…こうするしかない!だからあきらめて!」

 

「エルザ!私はあなたがどう思うと、あなたの力が必要!私は仲間のためなら、あなたに罵倒されようが、罵詈雑言浴びせられようがどんなに抵抗されても連れて行く!私は私の民族のために命を掛けてる。あなたをこの命かけて連れて帰る!あなたもわかってるんでしょ!自分達を守るのは自分達の力しかないことを!貴方達はその力を持てなかった!あなたは力を使えなかった!使わなかったんだ!だから今あなたはやっと力の意味をわかって使ってる!でも…でももう遅い!だから私達に力を貸して!私達はまだ戦っている!たたかえる!戦っている私達に力を!」



彼女のいうことはよくわかった。

だが、もう、正義はない。

自分の中の正義はもう消えてしまった。

今あるのは憎しみと怒りと悲しみだけだ。

それでは、イルマの崇高な理想に力を貸すことはできない。

エルザには自分はそこに立つ資格がないとおもえた。



イルマはライフルを持つとエルザの声の方へ進んでいた。


エルザ…ごめん…私は今仲間のためならあなたに何するかわからない…できることはなにもかもやる…もうあきらめはしない…私達のためならあなたの感情なんてどうでもいい…私達はあなた達のようにはならない…なるわけにはいかない…


銃声がした。

足元の下草が吹き飛んだ。


「これ以上来ないで!お願い!」


「私はあきらめるわけにはいかない!わかるでしょ!今も私達は戦っている!勝たなければあなた達のようになってしまう!」


また銃声がした。

さっきよりは着弾位置が近づいている。

エルザからは見えている。

でも甘い。

だから力の使い方を間違えたのだ。

イルマは声の方にライフルを構えた。


エルザ、見えてるんでしょ…どうするの…


イルマは片膝をつくと続けて3発撃った。

枝を折る音がした。

あたりは静かになった。

イルマは立ち上がって進みだした。

なにも起こらなかった。



「エルザ!」


呼びかけても返事はなかった。
















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