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テロリスト


新聞の1面はBLACKWOLFが首都で共和国大統領と面会したという記事だった。

これは政治ショーの始まりだった。 

しばらくはそのショーが続いた。

しかし、それはほんの一瞬でもあった。

その記事が出たしばらく後の紙面の片隅には、共和国検察が彼を起訴したという記事があった。

それは一面の記事と比べるとかなり小さな記事だった。


裁判は非公開で行われることになった。

小さな扱いの記事だった。

それをじっと読んでいた男がいた。


「やはりな…茶番だ…とうとう歯車は外されたか…これでお払い箱か…」


その男は日に焼けて精悍な顔つきをしていた。

共和国内務省治安機関の一員。

パトリック オコンネルだった。


形式的な裁判が行われた。 

判決は国家転覆罪や殺人放火交通妨害など様々な罪で

死刑となった。

彼等は犯罪者となった。


BLACKWOLFは政治犯がいる刑務所に収監されることになった。

面会は一切行われない。


処刑の日がやってきた…

BLACKWOLFと2人は銃殺刑となった…

国家反逆罪なら通常は絞首刑だ

銃殺刑は小さな配慮だった 

誰がそれを言い出したのかはどうでもいいことだった



三人は目隠しをされ杭に縛られた


「構え!」



「精霊よ…我が魂を土に空に還してくれ…」

目隠しの下で、カッと大きく目を見開いた

なにかをみているようだった

生まれ育った大地…

その風景が彼の目の中にあった

彼はひと言つぶやいた


「私は願う…できれば見届けさてほしい…そのためにこの血と肉を捧げる…」


「私は間違えたのか…」

その言葉は銃声で聞こえなかった


エルザは見た…

自分に向いているたくさんの銃口を…

そして聞いた…

願いを…



彼等の死刑の記事はさほど大きくは取り上げられなかった。

だが、いろんな人はそれを見つけていた。


BLACKWOLFの死刑からしばらくは各地で小規模な暴動が頻繁した。

それは、直ぐに沈静化した

いやさせられた

もう管理体制が彼等の自由を奪っていたからだ。

結局先祖代々から住み着いた土地からの強制移住はますます激しさを増すことになった。

それが不満を増すことになった。

それが今度は武装蜂起の原因となった。

BLACKWOLF達の死刑はきっかけだった。

当局、内務省治安機関は蜂起を武力でこれを徹底的に鎮圧した。

蜂起に関係した保護区は全て強制移住となり、砂漠同然の地に住むことになった。

人々は貨車に積まれて砂漠の地まで追い払われた。

そこにエルザは現れなかった…





そしてエルザもまたその小さな記事を見つけた一人だったのだ。

毎日できるだけ新聞を手に入れていた。

時には何日も前の新聞でも…

捨てられたものも拾って読んだ

あのとき見たものを確かめるために…


ゴミをあさっているその時の人の視線は、彼女にとってはどうでもよかった

ただ知りたかった…

欲しかった…

自分がやったことの結果を…



彼女は最初から信用していなかった。共和国のやることを。

それでも、その小さな記事を見つけたときは、裏切られたと、後悔と怒りと憎しみが自分を支配するのを感じた。


『国家反逆罪のテロリスト処刑』

とだけのタイトルだった。

日時と罪状が無機質に記載されていた。


新聞を握る彼女の手は震えていた

そのまま顔は新聞に突っ伏していた



最後まで話し合うことにこだわった結果がこれだった。

こんなことなら最初から彼等に力を貸せば良かった。

それは最初からわかっていた。

私は何かから目を背けていたのか。

逃げていたのか。 

良い子になりすぎていた。

人を助けるつもりだった。 

それがこの結果だ。

このままでいいのか…

何度も自分に問いかけた。


ある日その問いかけに答えが返ってきた。


「おまえはどうしたい?」


「私は許せない…自分が…できるなら過去にもどってもう一度やり直したい…」


「過去に…それは無理だね…お前一人の魔力ではそれはできない…もう世界には魔力すらなくなってるからね…でも未来は作れる…そのためになら魔力を使える…どうする?」


「私は許せない…自分も世界も…自分がどうなってもいい…このままでは私は…過去に戻れないなら、未来を奪ってやる…自分の未来もいらない…あいつらの未来と一緒に消えればいい…そのためなら…」


「ならば、好きにすればいい…怒りと憎しみがあるならそれに従えばいい…手伝ってあげるよ…」


エルザは闇に囚われた…

全てのことが無意味に思えた…

各地で暴動が発生していることも知っていた…

それでも以前のようには動かなかった…

動けなかった…

それは間違った選択だったと思うようになっていた

以前のように話し合うという思いは浮かばなかった…

自分も暴動に加わりたい…

そんな考えも浮かんだ…

そうすれば間違いを消せるかもしれない…

そして…そして…奴らを…

そしたら変わるのか?

少しはエルザも大人になっていた…

今度は間違わない…

狙う相手は間違わない…


山の中の小さな集落の片隅のテントでエルザは動かなかった…

村の人が時々食べ物を置いていく…

膝をつき頭を下げて手を合わせていく…

でも人々は知っていた…

夜、時々その小さなテントから嗚咽が漏れていたことを…

それを聞くたびに、人々も大地の精霊に祈りを捧げていた

小さな女の子は母親に抱かれて顔を埋めていた…

その母親は悲しげな目でテントの天井を見つめていた

そして女の子の頭を撫でていた…

女の子も泣いていた…そんなある朝、エルザの姿は消えていた…




平原の中に黒い線が伸びていく。

それは毎日毎日たくさんの人の手によって、平原を進み、森を切り開き、川を越えていく。

その黒い線の上を黒い鉄の蛇が走っていく。

黒い煙を出しながら。

多くの人を平原へ森へ運んでいった。

希望と期待と未来を信じて。

人々は次々と街を作り、住み始める。

そこには誰もいなかったかのように。

希望と期待と未来を信じていた人がいなかったかのように。

そして誰もがみんな未踏の地を踏みしめる、切り開く、興奮を感じていた。





平原を見渡せる小高い丘の斜面に誰かがいた。

風がその人に吹きつけていた。

遠くから機関車のたくましい走行音が流れてくる。


その人は丘を下り始めた。

その人のみてる方向には黒煙を吐きながら爆進する機関車と何両もの貨車。


その人は平原を機関車と同じ方向に走りながらだんだんに近づいていく。

機関車に追いつけるわけはない。


装甲車両で双眼鏡を握って見張りをしていた兵士が気がついた。


「誰か来ます!一人です!」

士官に報告する

すると士官も双眼鏡で確認する


「よし!攻撃準備だ!」


機関車に速力上昇の鐘がなり知らされた。

次第に速度が上がっていく。

その人はだんだん置いてかれるかと思った。

しかし、それはなんの問題ではなかった。

馬上では銃身の短くしたライフルで機関車に狙いをつけている。


引鉄が引かれた。

すると機関車は突然速度を落とし始めた。

蒸気が噴き出していた。


「敵襲!攻撃準備!」


兵士達に緊張が走る


「おい、敵襲ってどこだ?」


「知らん!」



ブレーキがかけられた。

だんだん距離が縮まっていく。

列車はついに停止した


「敵は右後方より接近!砲撃開始、撃て!」

装甲車両からは次々と野砲の発射音が響く。

砂塵は壁のようになっていた

それでも砲撃は続けられた

エルザの襲撃に対しても既に応戦体制は組まれていた。

もう何度も列車は攻撃されていたからだ


「来るぞ!射撃用意!……撃て!

回転式銃が砂塵に向かって唸りをあげる。

兵士達も一斉にの砂塵に向かって射撃を始めた

するとその砂塵の中からまるで水面から魚が飛び上がるように飛び出してきたものがあった


「なんで奴は平気なんだ…」

一人の兵士がそのエルザの姿をみて驚いて呟いていた。

「アイツは魔女だからさ…不死身なんだと…」

隣の少し古参の兵士が答えた

「不死身…魔女…」

「ぶつぶつ言ってないで、死にたくなかったら、撃ち続けろ!俺たちにはそれしかないんだぞ!」

兵士はこづかれて、気がついたのか、小銃の狙いを定めていた





砂塵の中から飛び出したエルザの馬上のライフルは今度は装甲車両を狙った。

引鉄が引かれた。

装甲車両の野砲が吹き飛んだ。

次に装甲車両そのものが爆発した。

弾薬に当たったのだ。

辺りに火花と煙と鉄が飛び散った。


馬上のライフルがまた火を吹いた。

小さな金属音と共に貨車の鍵が壊れた。

次々と貨車の扉が開けられた

すでに止まったいたその貨車からたくさんの人が出てきた。

そして平原をいっきに走っていく。

女性や子供、老人もいる。

馬上のライフルは、まだ鳴りやまない。

兵士の乗る客車を穴だらけにしていく。

たった一丁のライフルで。

それは貨車から出てくる人を守るためだ。

容赦なくライフルが火を吹く。

その度に反撃は沈黙していく。

人々がかなり遠く離れた。

それを見届けた馬上のライフルは誰もいなくなった貨車に向けて何発も撃った。

容赦なく。

貨車は次々とバラバラに破壊された。

この貨車はそのままにすればまた無実の人を大地から引き剥がすのだ。

ようやく馬上のライフルは火を吹くのをやめた。


頭に黒い布を巻いて端を後ろに流したその姿はどこかでみた姿だった。

人々はエルザをテロリストとして、魔弾の魔女と呼ぶようになった。









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