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追撃隊

追撃隊が編成されBLACKWOLFの拠点と思われる地点に向けて出発した。

パトリックやルートヴィヒ、イルマは補給隊に同行して少し遅れて野営地を出ていった。

門から離れたところにたくさんの墓標が立っていた。

みんな敬礼をしていく。


埋葬は静かにだが厳かに行われた。



BLACKWOLF達が出発した村に帰ってきた。

途中で何人死んだかわからない。

帰ってきた彼らを泣きながら迎える者もいた。

やっとたどり着いたが重傷を負ったものは次々と死んでいく。

村の住人達は必死に怪我人の看病をしてくれた。


BLACKWOLFは村の長にここを出ていくと言った。

ここにいては村に迷惑がかかる。

軍が来るかもしれない。

戦える者だけは村を出ることになった。

それでも幾人かはすっかり意気消沈して故郷の村に帰ることに。

もう帰る村のない者は、復讐の機会を狙って、BLACKWOLFと共に村を出る。

村では彼らになけなしの食料や水を渡した。

子供達は自分達で作った守り神の木の彫物をBLACKWOLFに渡した。

呪術師は祈った。

だが、誰も関心を示す者はいなかった。

鳥が1羽空を飛んでいた。

BLACKWOLFはそれをみあげると出発していった。

ついて行ったものは十数人だった。

彼らはより高地へ向かった。


ほどなくして追撃隊の先遣隊が村にやってきた。

村人に聞いても誰もBLACKWOLFの行く先は知らないという。

子供は怯えていた。

兵士は子供にお菓子をあげていた。

あと村にわずかだが食料も。


数人の士官たちが話しをしている。


「高地へ向かってますね…これは…この先は聖なる山だと村長が言ってました。行くとよくないことが起こると…」


「そうだろうな…彼らにとってはよくないことがな…BLACKWOLFが死ぬ…たしかにかなりの数が歩いたあとだな…よし!ここを一旦ベースキャンプにする!準備しろ!本隊に連絡だ!あと斥候を出せ!」


先遣隊の兵士達が忙しく動き回る。

村人達はそれを離れたところから不安げにみまもっていた。


「クロイツァー少尉、大丈夫か?無理するな…」

「はい、大丈夫です…」

それ以上はヴァルテック大佐もなにも言わなかった。イルマには後悔が感じられた。

エルザが突然野営地に現れた時、そしてあの時…

後悔しないほうがおかしいくらいだ。

エルザはあれからどこで何をしているのか…

まだ諦めないで、また我々の前に現れるのか…

現れたら…

ヴァルテック大佐は拳銃に手をかけた。




「BLACKWOLFもいよいよ最後ですね…少尉はあいつと話したことあるんですよね?どうでした?どんなヤツなんですか?凶暴とか?(笑)」


退屈しのぎなのか部下が随分楽しそうに聞いてきた。


「戦士だな…」


ポツリとパトリックはその言葉を口にした。


「あいつはただの戦士だ…自分でそう言った…同胞のために、生きるために、戦うと…」


「俺達はなんのために戦うのかな…あいつをつかまえて…どうするんだ…」


「え?なんですか?それは?」

部下には軽く手でその問いを追い払った。



追撃隊の出発した野営地は警戒を怠りはしなかった。

だが、どこか静かだった。

朝の歩哨の交代の時間がやってきた。


「おい、何か聞こえないか?」



交代するためにやってきた兵士はなにかに気づいた。

声のような音がする。

聞いたことのない言葉と旋律とでもいえばいいのか…

抑揚のある、渦を巻くような、波が来ては去っていくようなそんな音のような声が聞こえてきた。

それは野営地に広がっていた。

それは野営地の外にある墓標から聞こえてきていた。 

警備の兵士が警戒しながら近づいていく。

急に辺りが朝霧に包まれていた。

それと不思議な香りが辺り一面に広がっていた。

思わず口や鼻を塞ごうとする兵士達。


「誰だ!そこにいるのは!抵抗するなら撃つ!両手をあげてゆっくりこっちに来い!」


兵士は叫んだ。

だが返事はない。

不思議な音のような声と香りだけがそのままだった。

兵士達は近づくのをやめて、その場で音のする方向に銃口を向けて凝視していた。

どれだけ時間がたったのだろ。

朝霧の中に黒い影がみえた。

つばを飲みこみ狙いをつける。

その影は見えなくなった。

朝霧が晴れ始めた。

緊張が走る。

だがそこには誰もいなかった。

周囲を見渡しても誰もいない。


「どういうことだ…」


しかし墓標の前にはたしかに誰かがいた。


「あれは…呪術師だな…」


ある兵士がつぶやいた。

そこには弔いの痕跡があった。


「さあ、戻るぞ!」

「報告はどうすれば…」

「誰かが弔いに来たと言っとけ!」


いつも死を前にしてきた兵士にはそれで十分だった。

死者を弔うことにはなんのためらいもない。

それが誰の死でも。


エルザにはそれが今できる精一杯のことだった。

自分にできること…

惨めで小さい自分が情けない。

呪術の力も魔術も結局はなにも変えられない。

あ…伯爵はだから研究者だったんだ…

伯爵はそれを知っていた。

私にも何度も話してくれたはず…

私は…


だが決して彼女の力が小さいわけではなかった。

もし彼女が絵本の世界にいたら世界を救えただろう。

魔法が生まれた時から比べれば今のこの世界は広くて大きく複雑だ。

科学の進歩と共に魔法は必要なくなっていった。

だから相対的に彼女の力はこの世界ではそんなには影響力はなかった。

それだけのことだった。









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