二人のコミニュケーション
伯爵家の紋章の旗が閃く天幕。
その中では、ヴァルテック大佐、クロイツァー少尉。そしてオコンネル少尉が話し合っていた。
「オコンネル少尉、あなたの知るエルザのことを話してくれませんか…なにせこちらには大したことは把握できていない…」
「ハ!私の知る限りは全てお話しします。」
パトリックは軍人同士として話し合うつもりで返事をした。
「いや、ここはもう少し楽に行きたいのだが…いいかな、オコンネル少尉…いいだろ?クロイツァー少尉も」
ルートヴィヒは少し苦笑いしながらそう言った。
「では、お言葉に甘えさせていただきます!」
パトリックにその答え方にイルマはくっと笑いをこらえていた。
パトリックはそのイルマをチラリとみて話しを始めた。
港町の酒場で会ったこと。人質になったこと。そういった実際に体験したこともそうだが、エルザについてはいろんな報告があがっていた。
それだからこそ、こうして遥か遠くの旧大陸から二人が来てるのだ。
「報告はご覧になってどうですか?」
ルートヴィヒは腕を組んでしばらく考え込んだ。
イルマが話始めた。
「私は驚きました…正直、城にいた頃の彼女だとは思えません…それくらい変わっています…たしかに、環境も違うし、そうならざるを得なかったというのもあるんだとは思いますが、変わりようが…その…」
イルマの詰まった言葉を引き継いでルートヴィヒが話始めた。
「存在が別のものになってないだろうか…彼女自身がなにかに変わっていないかということだ。神がかりというか、とりつかれている…なにかに…」
ルートヴィヒの表現は直接的だった。イルマにはそう言いたくはなかった。思っていても。
あのエルザはどこにいてもあのエルザでいてほしかったから。
パトリックにはルートヴィヒのいうことが納得できた。神なんて信じているわけではない。でも、奇跡というものがほんとにあるならとは思った。
「それでなんですが、闇雲に彼女を探すというのは無駄ですし、無理です。我々はこれから作戦を開始するんですが、彼女は必ず現れます。この作戦は彼女にとってもとても重要なにかに意味をもつはずです。ですから、軍と行動を共にするほうが彼女に会う確率は高くなるでしょう。」
パトリックの提案には二人とも大いに納得できた。
「では、私から司令官に提案しよう」
ルートヴィヒは、自分の方がパトリックよりは適任だからと司令官には自分が相談することにした。
司令官の許可が降りて、ルートヴィヒとイルマは軍に同行することになった。
二人はできるだけ、伯爵家の紋章がエルザに見えるようにした。
馬上ではイルマが背に背負った。
野営地ではテントに旗を掲げた。
そうして少しでも自分達の存在をわかるようにすること。
それで、エルザが気がついて彼女から来てくれることを願って。
ルートヴィヒとイルマはただ軍と同行するだけではなく、自分達からコミニュケーションを取っていった。
それにはイルマは最適だった。
なぜなら彼女は兵士からかなりの注目を浴びていたからだ。
立派な体格どおり、剣にナイフ、ライフルから拳銃とどれをとっても抜きんでていた。そのうえ格闘でも負けることはなかった。軍の猛者ども相手に互角だった。
そのうえ、彼女の外見からくる魅力が兵士の間での人気を高めていた。
たしかにどちらかといえば、この国では珍しい見た目だが、それを魅力にとらえていたのは、この国の人々が長い間、PN達と接してきたからだ。
目が慣れていた…といってもいいだろう。これはイルマにとっても不思議だった。故国…彼女にとって微妙な存在。そことは明らかに違う。不思議と警戒心が薄れた。軍という特殊な組織だからこそもあるのだろう。
ここの人達は何かが違う…
イルマはそう思えた。
エルザはどうだったのだろう…
自分と同じだったのか…それとも…
自分とは違うからあんなに…
わからなかった。
会うまではわからない。
イルマはそういいきかせた。
オコンネル少尉の小隊はルートヴィヒとイルマの護衛という形で本隊とは別行動が取れるようになっていた。
行軍でも野営地でも本隊とは別れていた。
小隊でも二人は他の兵士といいコミニュケーションを取れていた。
旧大陸から来た貴族の軍人と実力もある美人の軍人。
イルマが思ったように、違っていた。
純粋なのだ。好奇心に忠実。
それだけで、十分素直に二人を受け入れた。
でも、どうして、PN達とはこんなにも過酷で激しく争いを続けるのか。
兵士達をみていて二人はわからなかった。
二人には兵士達のような純粋で好奇心に忠実な、素朴といってもいい者達を動かしている社会の上層の立場の者達のことをまだわかっていなかった。
BLACKWOLFもエルザもそういう者達のために翻弄されているということも。




