第27話 「"笑いの力"」
蓬生の生薬ぶっかけ作戦が終わるのに約半刻。ひかりたちが手伝っても、それだけかかった。
そこから開都による邪気祓いが始まった。
現在、暮れ六つ——現代時刻で午後五時。
もうすぐ日が暮れる。それでもまだ祓いは続いていた。少しずつ邪気が祓われていくが、途中で暴れそうになる貪り化した神も出てくる。その都度、力也とみかづちが静かに押さえた。
午後七時。何とか邪気祓いは終わった。
終わった——はずだった。
「うひゃひゃひゃひゃ……」
「嘘でしょ……」
「やっぱり日が暮れる前に終わらせないとダメか……」
「邪気は夜に活性化するからな」
「まずいな、遠くから呼び寄せた木々の精霊たちは明日にならないと来ないし……」
「うーん、どうするか……」
神々が頭を抱える中、ひかりがぶっ飛んだ案を打ち出した。
「もう"踊っちゃう"?」
「「はぁ!?ふざけてんのか!!」」
さすがにこの案には全員一致で反対した。しかし、ひかりはどうも真面目に言っているらしい。
「『天の岩戸事件』の時は、踊りで大爆笑させたよ? "笑いの力"は例え真っ暗闇でも"周囲を照らす光"になるんだから!」
「ほぉー、どこで教えてもらったんだ?その力」
「それはね、ひ、み、つ!」
「……あーそう。まぁいいや」
力也が続けた。
「こんな雰囲気の中であの事件の時と"同じこと"ができるんならやってみろ。どうなっても知らんぞ」
「おれはちょっと見てみたいがな」
みかづちは興味津々だ。
「あいつ、調子乗るぞ」
「じゃあやってみるね!」
そう言うとひかりは、準備を始めた。
「ほら、言わんこっちゃない」
しばらくすると、辺りの様子が一変する。
「……何か周りの様子が変わってきたよ。なんだろう、なんかワクワクする!」
蓬生の言う通り、周りの様子が変化し始めていた。木々は炭のままなのに、なぜか木々のざわめきを感じる。葉のない枝が、風もないのに揺れていた。
「不思議だな……」
「……なんかさ、段々激しくなってない?」
開都が言った瞬間、突風が吹き荒れた。
「さぁ踊れ!空間よ! さぁ舞え!大地よ!」
さらに風が強くなる。力也たちの神気が上がっていく。うなぎ上りに。
「なんだ!これ!」
「これは、"鼓舞の舞"か?にしては神気の上がり方が異常だ」
「おー!これだけ上がれば天津甕星を倒せるぞ!」
「やっぱり不思議だな」
「さぁ開都ちゃん!祓詞を唱えて!」
「う、うん!」
開都は、この状況が何がなんだか分からなかったが、勢いに任せて祓詞を唱えた。
するとどうだ。さっきまで復活していた邪気が、どんどん抜けていく。それどころか、やつれていた神々が元の姿に戻っていく。さらに、この土地の色が戻っていく。さすがに枯れた木々まで戻ることはなかったが、それでもすぐに育ちそうな土壌に変わっていった。
その場にいた神々はというと——。
みんな、"笑ってた"。あの時の、『天の岩戸事件』の時のように大爆笑していた。
黒く、邪気によって飲み込まれていた開都の故郷は、木々を除いてほぼ全て元通りになっていた。
「すごい……!こんな力を持った神さまがいたなんて……!」
開都の瞳には光が戻っていた。故郷の神々にも光が戻っていた。奇跡だった。
「すごすぎる!生薬よりも効果がある!」
「ついさっきまで暗かったのにな」
力也が静かに言った。
「まるで、天照大神さまが岩戸から出てきた時みたいな明るさだな」
「木々が無いのにこの胸の高鳴り」
森樹も周囲を見渡した。
「まるでそこに精霊たちがいるみたいだ!」
時刻はもう夜。しかし、ひかりのおかげか、
たまたまか——
夜空の星々の光がより一層輝いて、周囲を明るく照らしていた。
―――第28話へ続く。




