59.てんこうせいの好感度が、いつの間にかカンストしてた件⑩(完)
「・・・ぅん?」
「お、ようやくお目覚めか」
危うく“お縄ルート”を踏み抜きかけた末に、どうにか無事に解決した。そのあとベンチで休んでいると、鏡華がゆっくりと目を開いた。
「あれ? 私、寝ていましたか?」
「あぁ、寝てたぞ。それも閉園時間ギリギリまで」
「嘘!?」
鏡華は飛び起き、ランドの時計を見て目を丸くした。
「あぅ……これだと、あと1つしかアトラクションに乗れません……」
「一番近いところだと……観覧車だな」
「そうですね。では、最後は観覧車に乗りましょうか」
少し落ち込んだ声だった。
「それでは、いってらっしゃ〜い!」
スタッフさんに見送られ、俺と鏡華を乗せた観覧車は夜空に向かって静かに上昇する。
ゴンドラが8時の位置に差し掛かったころ――。
「……今日は、いっぱい迷惑をかけてしまいました……」
鏡華がぽつりと呟いた。
「いきなりどうしたんだ?」
「秀さんにいっぱい無理をさせてしまいました……絶叫系も、お化け屋敷でも……それに、寝てしまって遊ぶ時間も削ってしまいました……」
そして、
「ごめんなさい……」
深々と頭を下げる鏡華。その姿は、夜景の光を反射してどこか儚げだった。
「……なぁ、鏡華」
名前を呼ぶと、鏡華の肩が小さく揺れた。
「好きな人に迷惑をかけられてもしんどくなんかないんだよ?」
「……え?」
「それにさ、今回は確かに迷惑をかけられたかもしれないけど、次は俺が迷惑をかけるかもしれないだろ? だからお互い様だ」
そう言って俺は、彼女の頭をそっと撫でた。
鏡華はゆっくり俺の胸に額を預けてくる。
「……これからも、迷惑をかけるかもしれませんよ?」
「むしろ、どんとこいだ」
鏡華はくすっと笑った。
「ふふっ、秀さんはやっぱり優しいですね」
「好きな人には甘いだけだよ」
照れ隠しにそっぽを向くと、鏡華は嬉しそうに、
「えへへ」
と笑った。
その笑顔が悔しくて、俺は鏡華を思い切り抱きしめた。
「ふみゅっ!?」
鏡華は顔を真っ赤に染める。
「まだまだ、デートの目的は達成できそうにないな」
俺が勝ち誇ると、鏡華は一拍遅れて意味を理解し、
「むぅ~~~~~!!!」
頬を膨らませながら俺の胸にグリグリと頭を押しつけてくる。
観覧車が3時の位置に差し掛かった頃のことだった。
「……秀さん」
「ん?」
「その……さっきの“好きな人にだけ甘い”って言い方……ずるいです」
真っ赤なままなのに、目だけはまっすぐに向けてくる。
「そうか?」
「はい……心臓がうるさいんです」
鏡華の手が俺の胸にそっと触れる。観覧車の揺れとともに距離がさらに縮む。
「だから……責任、取ってくださいね?」
「……責任って、どう取れば?」
「もちろん――」
鏡華は控えめに微笑んだ。
「これからも、私の隣にいてくださいってことです」
夜景が、窓越しにきらめいていた。
「……当たり前だろ」
「なら……よかったです」
観覧車は少しずつ地上へ向かい始める。
ほんの数分。でも、この時間は何より特別だった。
これにて完結です!最後まで、お読みいただきありがとうございました!
まだまだ、『ラブコメs日和』は続きますので、これからも応援よろしくお願いします!
ご感想をいただけると、今後の創作の参考になりますし、とても励みになります。
一言でも大歓迎ですので、お気軽にお寄せください!




