↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ラブコメs日和  作者: 水無月盈虧


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
58/60

58.てんこうせいの好感度が、いつの間にかカンストしてた件⑨

「おほん!!」


 咳払いが背後から響き、俺と鏡華は反射的にそちらを振り向いた。

 そこには──怒り、悲しみ、葛藤、その他もろもろの感情を、どういうわけか“ひとつの表情”にまとめてしまった浩二さんの姿があった。


「……私の前でいちゃつかないでくれ!」


 父親の悲痛な叫びが教会の鐘のように室内に響く。だが悲しいかな、その切実さは娘には一切届かない。


「私たちがどこでいちゃいちゃしても、自由です!」


 鏡華の少し怒った声が炸裂し、浩二さんは撃沈。

 ……こうはなるまい。俺はそう心に刻んだ、その矢先──


「秀君と言ったな!いつか君も私と同じ目に合う!絶対にだ!……ん?その頃には、結婚しているのか……嘘だッ!!!」


 捨て台詞にしてはあまりにもカオスな言葉を残し、浩二さんはドタドタと自室へ逃げていった。

 その背中を、凛音さんが「まあまあ」と微笑みながら追いかけていく。


「ふふっ。お父様もいなくなりましたし、これでようやく存分にいちゃいちゃできますね!」


 鏡華の小さめの声は、俺にしか聞こえないはず……だったのだが、家の奥から聞こえてきた野太い叫びがすべてを否定した。


 その後、鏡華が満足するまで頭を撫でつづけ、魂が抜けかけたように老け込んだ浩二さんが戻ってきた。


「せめて……せめて……ここでいちゃつくのは……やめてくれ……」


 掠れた声にさすがの鏡華も気の毒そうな表情を浮かべる。


「それでは、秀さん。遊園地に行きませんか?」


「遊園地か。そういえば最近行ってなかったな。」


「決まりですね!では早速向かいましょう!」


 俺たちは和やかな空気のまま外へ出ていった。

 一方、家の中では──


「遊園地……カップル……いちゃつく……ぐはっ……」


 浩二さんがひとりでダメージを受けつづけていた。




「到着です!」


 鏡華の弾んだ声。

 俺たちが来たのは某夢の国……ではなく、『みーちゃんランド』。

 妙にムカつく顔でネットに出回ったマスコット“みーちゃん”がシンボルの遊園地だ。


「さて、到着したのはいいけど、まずは何に乗る? メリーゴーランドとか──」


「今回は、絶叫系のみに乗ります!」


 時が止まった。


「えっと……どうしてまた……?」


 鏡華は胸を張って即答した。


「今回は、吊り橋効果を使おうと思います!」


 ……よりによって、それか。

 俺は頭を抱えたい気持ちを必死に押し殺す。

 あと、言ってしまったら意味ないのでは?


「秀さん、今日のデートの目的は覚えていますか?」


「え、えっと……たしか、“子供扱いされたくない”とか――」


「正解です! そして、お義母様から秀さんが絶叫系苦手だと聞いています! これは効果がありますね!」


「余計なことをぉぉぉ!!」


 リビングでくつろいでいるであろう母へ、俺は怒りの念を遠隔送信する。届くはずもないのだが。


「楽しみですね♪ 秀さん♪」


「鏡華、俺が悪かった! 謝る! 本当に謝るから!」


「楽しみですね〜♪」


 必死の抵抗も虚しく、俺は鏡華に腕を引かれていった。


※ここからは、秀の記憶がところどころ消失しているのでダイジェストでお送りいたします。


【ジェットコースター】


「ひゃー!高いですね!」

「これ以上上がらないでくれー!!」


 ガタン!


「キャーーー♪」

「ギャーーー!」


【空中ブランコ】


「な、なぁ鏡華、これって遠心力とかで吹き飛ばされたりしないのか……?」

「基本的には飛ばされませんよ♪基本的には……」

「なんで可能性を残した!?なん……」

「あ、そろそろ上に上がりますよ♪」

「降ろしてくれーーー!!!」


【コーヒーカップ】


「よ、ようやく平和そうなアトラクション……」

「あ、秀さん!これ自分で回転速度が変えられるらしいですよ!それー♪」

「アーーーー!?」




「いやーーーー!!!」


「おぉ。こんなからくりになってるのか。」


 絶叫と冷静な分析が入り混じった声。

 悲鳴の主は鏡華、その後の声は俺だ。


 そう──立場が完全に逆転していた。


 どうしてこうなったのかと言うと……


「あ、あの……大丈夫ですか……?」


「だいじょばない……」


 俺はあらゆる絶叫系アトラクションをフルコンボで乗せられ、魂がふわっと抜けかけていた。


「じゃ、じゃあ、これで最後です! 最後は【お化け屋敷】です!」


 ……まだあるのかとツッコむ気力すら残っていない。


「お化け屋敷……か」


「あ、あれ? もっと嫌がると思ったのですが……」


「いや、俺、お化け屋敷は大丈夫なんだ」


 鏡華の顔が固まった。


「そ、そんな!?」


 驚きすぎだろ、と思ったが、そこで気づく。

 鏡華の足が、わずかに震えていた。


「……怖いのか?」


「なっ!? そ、そんなわけないじゃないですか!」


 完全に虚勢だった。


「ほ、ほら! 早く入りますよ!」




「そんなに怖いなら、無理しなくてもいいんだぞ?」


 俺がからかうように言うと──


「こ、怖くなんかありません!」


 震え声の虚勢。かわいい。


「そっか。じゃあ、ちょっと先に行っても構わないな?」


 俺がわざと離れる素振りを見せると、


「……行か、ないでぇ」


 幼児退行した鏡華がそこにいた。

 ついには、


「ひっく……ぐすん……」


 泣き出してしまう始末。


「……仕方ないなぁ」


 そう呟いて鏡華を抱き上げる。

 俗にいう“お姫様抱っこ”だ。


「ーーーっ!?」


 鏡華は頬を真っ赤にして声にならない悲鳴を漏らした。

 俺はそのまま出口へと走る。




「脱出おめでとうございま〜す!」


 明るいスタッフさんの声が響く。


「あらあら、仲のいい兄妹だこと」


 通りがかった若い女性客が微笑ましそうに言った。

 俺は、疲れてしまったのか、睡魔に襲われている鏡花を見る。

 鏡華は“兄妹”と言われて不満だったのか、睡魔に抗いながら必死に言葉を絞り出す。


「こ、恋人……です……!」


 時間が止まった。

 俺も、スタッフさんも、女性客も。


 そして女性客は後ずさりながらスマホを取り出し──

 その指が1……1……0……と。


「ご、誤解です!!!」


 みーちゃんランドに、俺の必死の叫びが響き渡った。

次週、最終回です


いつもお読みいただきありがとうございます!!

ご感想をいただけると、今後の創作の参考になりますし、とても励みになります。

一言でも大歓迎ですので、お気軽にお寄せください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。