50.てんこうせいの好感度が、いつの間にかカンストしてた件①
予告通り本日から、作者が高校生の時に書いたラブコメ『てんこうせいの好感度が、いつの間にかカンストしてた件』を毎週月曜日に更新していきます!
4月10日午前6時30分。目覚まし時計の電子音と同時に、俺──北野秀は目を覚ました。
いつもと変わらない、ありふれた朝だ。
階段を下りてリビングへ向かうと、母さんが弁当を詰めているところだった。
「おはよう、秀」
「おはよう」
交わす言葉も、いつもと同じ。
制服に着替え、身だしなみを整えて席につく。
テーブルには朝食が並び、俺はそれを十分ほどで平らげた。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。気をつけてね!」
変わらないやり取りを終え、玄関のドアを開けたその瞬間──
「おはようございます♪ 今日はいい天気ですね、秀さん!」
目の前に、小柄な少女の姿をした【イレギュラー】が立っていた。
「……おはよう」
俺は、彼女の存在に多少の嬉しさを覚えつつ、それ以上に疑問を隠せなかった。
「家の場所、教えた覚えはないんだけど……なんでここにいるんだ、鏡華?」
皇鏡華と名乗るその【イレギュラー】は、
「ふふっ♪」
と上品に笑い、人差し指を唇に添えた。
「企業秘密ですよ♪」
軽くかわされてしまうのだった。
──4月9日。始業式の日。
これといって特に何も起きなかった春休みが終わり、俺は高校2年生になった。
クラス替えがあったが、友人の佐藤が同じクラスだったことで、ひと安心。
始業式後の空き時間、最近発売されたゲームについて語り合い、春休みの近況も報告し合った。
佐藤の話によると、もう一人の友人である篠崎に彼女ができたらしい。
『俺は二次元に生きる!!』とか言ってたくせに。人は変わるもんだ。
妬まし……いや、めでたいことだ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、俺たちは席へ戻る。扉が開き、去年と同じ担任──椋林先生が入ってきた。
「はいはい、全員座ってるな~。それじゃあHRを始め……る前に転校生の紹介をするぞ」
その瞬間、教室がざわつく。
「イケメンだといいな~!」
「かわいい子がいい~!」
正直、俺はあまり気にしていなかった。むしろ転校生に同情していた。
転校しただけで勝手に期待されて、勝手に落胆されるのだ。可哀想にもほどがある。
しかし、その考えはあっさり覆された。
扉から現れた“転校生”を見て、教室中が息を呑む。
……椋林先生だけはいつも通り気だるげに欠伸していたが。
転校生は、誰の目にも美少女と分かる存在だった。某アニメのOP風に言うなら──
【誰もが目を奪われていく、完璧で究極の美少女】
整った顔立ちに、鴉の濡れ羽色のような艶やかな黒髪は腰まで流れる。
そして、小学生にも見えるほどの低身長。
だが、そのアンバランスさが彼女の魅力をさらに際立たせていた。
なぜ俺がこんなに細かく言語化できるのか。それは……
……一目惚れしたからだ。
そんな俺の気持ちなど知るはずもなく、彼女は自己紹介を始めた。
「皇鏡華と申します。今日からこの学校に通うことになりました」
たちまち教室がざわつく。
「皇って……あの大企業の!?」
「なんでそんな子がここに!?」
そんな声にも動じず、鏡華は淡々と言葉を締めた。
「これから、よろしくお願いします」
「よし。じゃあ何か質問ある奴は今のうちに聞け~」
先生が言うと、お調子者の男子、田中が挙手した。
「鏡華ちゃん、彼氏とかいるんですか~?」
「いませんよ」
俺は決めた。今日から毎日、神に祈りを捧げよう。
……そう思ったのも束の間。
「でも、好きな人ならいます」
Gott ist tot. 神は死んだのだ。
机に額を押しつけ、俺は深い自己嫌悪に沈む。
まぁそりゃそうだ。俺みたいなヲタクが美少女と付き合えるわけない。
だが、鏡華の自己紹介はそこで終わらなかった。
「すみません、もう少しだけお時間をいただいてもよろしいですか?」
そう言って、軽やかな足音で──
コツ、コツ、コツ。
教室中の注目が彼女に集まり、ついに、
コツン。
俺の席の前で立ち止まった。
……は?
状況が飲み込めず、思わずあたふたする。
俺は、チャンスだと思って挨拶をしようと──
「え、えっと、きょんにちは!!」
………殺してくれ。
なぜこんな時に限ってヲタク特有の活舌を披露するんだ俺は……
しかし鏡華は、そんな俺を見て、
「ふふっ」
と上品に微笑んだ。
「貴方みたいにかっこいい人でも、可愛いところがあるんですね」
予想外の言葉に、俺も、そして教室も騒然となる。
「でも、私はそんなあなたが──大好きです!」
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