46.七夕
僕のクラスには、食いしん坊な女の子がいる。毎日、何段にも重ねられたお弁当を持ってきては、嬉しそうにペロリと平らげてしまう。そのくせ太っているわけでもなく、最近お腹のぜい肉が気になっている僕からすれば、うらやましくて仕方がない。
そんな彼女と、僕は同じ図書委員に所属している。
学級文庫の管理こそあるものの、基本的には行事のときくらいしか仕事がないので、気楽さからひそかに人気のある委員会だ。
7月のある日。久しぶりに委員の仕事があるということで、僕たちは図書室に集まった。
図書委員を担当する先生が、全員の顔ぶれを確認してから口を開く。
「もうすぐ七夕なので、図書室に笹を飾ろうと思います。せっかくなので、みんなにも短冊を書いてもらいます」
そんな指示を受け、僕たちはさっそく願いごとを書き始めた。僕は無難に【世界平和】とだけ書いて、さっさと終わらせる。ふと、隣の彼女が気になって、軽く肩を叩いて話しかけた。
「ねぇ、△△。短冊、もう書いた?」
「ひゃっ!?」
いきなり飛び上がるような声が返ってきて、思わずたじろぐ。
彼女は慌てて、書いていた短冊を裏返した。
「あ、ごめん、驚かせた?」
「あ、いや……大丈夫だよ」
声が少し震えていた。まだ動揺が残っているみたいだ。
「それで、どうしたの?」
彼女は小首をかしげながら、僕の用件を尋ねてくる。
「いや、なんて書いたのかなって、ちょっと気になって」
そう言うと、彼女は、目をそらした。
歯切れの悪そうな表情に、これは踏み込みすぎたかなと思い、慌てて話を変える。
「ああ、あれでしょ?『お腹いっぱいご飯を食べたい』とか、そんな感じ?」
「あ、あはは……そんなとこだよ」
ぎこちない笑いが返ってくる
仕事も終わっていたので、僕は彼女に軽く挨拶をして帰ることにした。
「じゃ、またね」
図書室に残った彼女は、僕の背中を見送りながら、ぽつりと呟いた。
「……バカ」
机の上には、裏返されていたはずの短冊が、いつのまにか表を向いている。
そこに書かれていたのは――
『図書委員の相方と、付き合えますように』
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