42.コーラス部
高校に入学したは良いものの入りたい部活も無く、友人に誘われるままコーラス部に入部した。
入部してみると、いつの間にか楽しくなり部活に熱心に取り組むようになった。
コーラス部に入部してから一年が経過した。二年生になり、後輩が一人できることになった。
たった一人の後輩であり、初めての後輩でもある彼女に、できる限り優しく接した。
効果的な練習方法、のどに良い食べ物、飲み物を丁寧に、熱心に教えた。
後輩が、風邪をひいてしまったにも関わらず、無理に部活に来てしまった時には、すぐに保健室まで連れていき、熱心に看病もした。
ある日の部活。自分は、今まで一度も休むことのなかった部活を熱により休んでしまった。
後輩に、教えたいことがあったのにと思いながらも体が思うように動かず、そのまま睡魔に流されてしまう。
腕に何らかの重さを感じ、目を覚ます。
横に伸ばした腕の方を見る。
そこには、後輩の寝顔があった。
そんなはずはないと思いながら、空いている手で目を擦る。
だが、彼女の姿は消えることなく、確かにそこに後輩の姿があった。
ふと、今まで感じていた汗による不快感がないことに気が付く。頭を少しだけ起こし、自身の服を確認すると、青色だった寝巻が、灰色のものに変わっていた。
彼女の近くには、さっきまで着ていた青色の寝巻、水の入った小さなたらいの中に漬かっている真っ白なタオルがあった。
彼女の顔をよく見てみると、前髪が汗で少し濡れて額にくっついていた。
そんな彼女に迷惑をかけてしまった申し訳なさと看病をしてくれた感謝の念を感じながら、「ありがとう」と、彼女を起こさないくらいの小さな声で呟く。
ほんの少し、彼女が微笑んだような気がした。
ただ、熱で朦朧とする頭の中のどこを探しても、彼女に自身の家を教えた記憶は見つからなかったのだった。
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