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ラブコメs日和  作者: 水無月盈虧


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41/43

41.傘

 私には、後輩がいる。


 文芸部に所属してから早くも三年が経過したが、彼は私にとって初めての後輩だった。

 私の背が低いのもあるが、彼の背が高いせいで、よく私の方が後輩と間違われることがある。誠に遺憾である。


 その体格に似合わず、彼はひどく内気な男の子だった。慣れない会話を続けること三か月。今では、なんとか普通に話せる程度にはなった。


 だが、作品の評価を求めると、今でもその内気さが顔を出す。

 改善点はないかと何度も聞くのだが、返ってくるのは「そんなものは無い」という言葉ばかりだ。

 創作に関わる者として、改善点を示してもらえることほど助かるものはない。それがないとなると、不安になる。


 たまに壊れた機械かのように、良いところだけをいくつも挙げてくれる日がある。作品を認めてもらえるのは嬉しいが、やはり改善点がないと落ち着かない。

 本当に困った後輩である。


 ……なに? 頬が緩んでいる? そんなわけがないだろう。


 ある日、授業を終え、部活もなかった私は、早く帰って小説を書こうと帰り支度をしていた。

 靴を履き、校舎を出た瞬間、目の前に広がっていたのは土砂降りの雨だった。


 さて、どうするものか。顎に手を当て、ひとり考える。

 防水機能など期待できないカバンの中には、一週間前から書き始めた原稿用紙が何枚も入っている。

 ……なに? パソコンで書けばバックアップが取れる?

 紙に書いた方が、かっこいいだろう。


 そうやって考え込んでいると、背後から声がした。


「先輩?」

 振り返ると、後輩君が立っていた。

 ちょうどいい。後輩君、傘を貸してくれないか?


「傘ですか? 一応ありますけど……一本しかないので、一緒に入ることになりますが、大丈夫ですか?」

 大丈夫だ、問題ない。相合傘を気にするとは、まだまだ子供だな。

 じゃあ、行こうか。


「はい」

 そして、私たちは並んで歩き出した。


 しばらくして、ふと横を見る。

 後輩君の方が明らかに濡れているではないか。もう少し寄ったらどうだ?


「そうしたら、先輩の大事な原稿が濡れてしまいます」

 それで後輩君が風邪を引いてしまったら、申し訳ないのだが。


「いいえ、ダメです。先輩の作品を読むの、結構楽しみにしてるんですよ? 原稿を濡らしてしまったら、それこそ体調を崩してしまいます」

 彼にしては珍しく覇気のある言葉だった。

 私は一瞬目を見開いたが、すぐに分かったと返事をし、前を向く。




 ……顔が赤い?

 気のせいだろう。


いつもお読みいただきありがとうございます!!

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