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最終クエスト 『最強の分析士』

「バラバラに……砕け散れええええええええええ!」


 大魔星将ジャスティンの一撃が空気を震わせる。

 両手で持った剣が半ばからへし折れた。


 数々の魔物を始末してきた愛用の剣が折れるのはショックすぎる。

 役目を終えた剣の柄を持ったまま、影魔法を発動。


 ≪影の中の黒子(シャドウインザダーク)≫により、影中へと身を沈める。

 そこへ飛びかかるのが狂戦士ガートルード。


 ヤツの相手は俺一人ではない。

 大剣を肘の突起で受けてジャスティンは笑う。


 影中でスキル≪眼力≫を発動。

 さっきまでは分析をする余裕がなかった。

 今は違う。


 ガートルードが退き、その代わりに氷と炎が、そして閃光を放つ矢が大魔星将を襲う。

 

「ぬううううううううううう!」


 効いている。

 好機と見た俺は影から飛び出てドラゴンブレスをお見舞いした。

 ≪光の息(レイイ・ドア・ルー)≫が発動し、ジャスティンを焼く。


 これで終わったか?

 いや、そんなはずないか。


 体の各所から煙を噴き出す最凶の魔物は、怒りに満ちた顔で、両腕を無造作に振った。


「伏せろ!」


 ≪眼力≫によってとらえたヤツの攻撃。正体は血液だ。

 ガートルード、グスタフ、オスキュリーダが揃って伏せる。

 彼らもまた得体の知れない危険を感じ取っていたのだ。


 俺たちを通り過ぎて地面に付着した血液が、じゅう、と音を立てた。

 溶解液、と考えていいだろう。


「死ね! 冒険者!」


 ジャスティンはまず、氷と炎の歌い手グスタフを狙った。

 彼はとっさに防御の魔法を起動し、障壁を張る。

 ジャスティンの拳は砕けた。同時に障壁も砕ける。


「ふむ、障壁を打ち破るか。ならば」


 グスタフは今また飛びかかろうとしているヤツに向かって魔法を放った。

 人の頭ほどはある火球三連発。並行して後ろに跳び退り、氷の槍を作り出す。


「滅せよ」


 これだけ連続で魔法を放っているのというのに、息一つ切らしていない。

 氷と炎が炸裂し、ジャスティンの動きを止める。


「ぐああああああああああああッ!」

「まだだよ」


 続けて放たれるのはオスキュリーダの速射だ。

 矢をつがえ、引いて、射る。ともすれば時間がかかってしまうはずの動作は、速すぎて見えないくらいだ。

 光の矢が突き刺さり続け、ダメージを蓄積。

 そこへとどめとばかりにガートルードと俺が襲いかかった。


 大剣とナイフが閃く。

 固い手ごたえが響いた。


「どらああああああああああああ!」


 ガートルードの雄叫びが戦場にこだまする。

 ぞぶり、と腹のど真ん中を貫かれたジャスティンは、目を丸くして驚いていた。

 ヤツの血液が刺さったままの大剣を溶かしている。しかし、さすがにこれで終わりだ。


 俺たち四人が最後の一撃を放つべく構えた、時だった。


「くくく……」


 ジャスティンの口から笑みがこぼれる。

 

「ククククククク……あーはっはっはっは!」


 なぜ笑う?


「ふん!」

「なにっ!?」


 裏拳が密着していたガートルードを吹き飛ばす。

 ヤツはゆっくりとした動作で大剣を引き抜き、投げ捨てた。

 腹から大量の黒い血が噴き出ても、笑ったままだ。


「なにがおかしい?」

「ああ……最強クラスの冒険者も……こんな程度かと思ってね」


 そう言う割には効いていたと思うが。


「ただ……面倒になってきた。全力を出させてもらおうか」

「それこそ負け惜しみだな」

「ふん、それは———」


 魔素が高まっていく。辺りの景色を歪めるレベルの濃さだ。


「これを見てから言ってもらおうか!」


 大魔星将ジャスティンの肉体が変化を始めた。

 腹の大穴がふさがり、同時に胸の肉が裂けて中が露わになる。

 見えるのは青く輝く大きな宝石。

 俺は目に違和感を感じ、スキル≪眼力≫の使用を停止した。

 このまま見ていたら目が潰れかねない魔力の結晶だ。


「おまえたちは終わりだ。そもそも僕一人いれば町も、王都も滅ぼせる!」


 ヤツの胸から拳大の黒い球が生み出される。

 ≪眼力≫を使わなくてもわかる。

 宙に浮く五つの黒玉は異常だ。


「踊れ! 死の舞踊だ!」


 黒玉は一つ一つが違う軌道で俺たちに襲いかかった。


「速い!」


 後ろに跳びながらガードを固めるも、黒玉のスピードは尋常ではなかった。

 喰らった脇腹が軋む。

 肋骨が三本は折れただろう。


「ぐっ……」


 超スピードで動き回る黒玉は、ガートルード、グスタフ、オスキュリーダをも圧倒した。

 圧倒的耐久力を持つ狂戦士ガートルードが膝をついている。

 グスタフも障壁を生み出して対応しているものの、防御がおいついていない。

 オスキュリーダは軽すぎる身のこなしで避けつつ、矢を放つ。


「悪あがきをするな」


 黒玉が動いてオスキュリーダの矢を弾いた。

 それを見て冷や汗が止まらない。

 ヤツの使う黒玉は攻防一体。

 隙は見当たらない。


 切り札を持っていた、ということか。

 見誤ったかもな。


「くっ! その玉ごと破壊する!」


 隙を見たグスタフが氷と炎の竜巻を作り出した。


「遅い」

「なっ……」


 魔法が作られ撃ちだされるまでのわずかなタイミングを狙い、黒玉が術の起点を潰す。

 これでは魔法を使う暇もない。

 あの黒い玉はなんなんだ。

 ジャスティンが自分の意思で動かしているにしては、速すぎる。


「ぐああ!」


 グスタフが黒玉に襲われ、倒れた。

 すぐに立ち上がったが、かなりのダメージを受けている。


 打つ手はない。黒玉は予想を超えた代物だった。

 人間が打ち破ることは不可能に思える。


 いや、まだだ。

 落ち着け、そして考えろ、ケイオス。

 これで終わりじゃないだろう。


「ガートルード、グスタフ、オスキュリーダ」

「どうした?」

「今からヤツを分析する。だから……」

「時間を稼げばいいんだな?」

「しかたない。残りの魔力を全て使おう」

「無茶言うわ。けど、燃えてきたよ」


 話が早い。助かる。

 スキル≪眼力≫をを最大精度で発動。≪眼識≫もだ。

 

 三人が陽動を引き受けてくれるなら、余裕ができる。

 

「ぐ……」


 ヤツの濃すぎる魔素が俺の目に負担を強いる。

 視界が赤くぼやけてきた。

 二日も前から発動しっぱなしだったし、目から血が出ている。

 

 ここでやめるわけにはいかない。

 俺以外の三人はつかず離れずジャスティンを引き付けている。

 今しかないんだ。

 眼がどうなっても———構わない!


 目を凝らし、黒玉を分析を開始。

 あれは魔素を凝縮した魔力でコーティングし、固めたもの。通常、一つの生き物に源たる魔素は一つだけだ。しかし、あの黒玉の中には魔素が存在している。驚くべきことだ。黒玉の魔素は、俺の推測が正しければジャスティンの魔素を分裂させたものだろう。魔素を分裂、言いかえるのなら魂を切り分けるに等しい。やはりヤツは魔物を統べる者、いや、魔素を統べる者、といったところだな。三人の動きに反応して動く黒玉にはタイムラグがない。ジャスティンと視覚を共有していると見た。つまり、アレはジャスティンそのものと言っていい。なによりも恐ろしいのはヤツの胸にある巨大な宝石だ。俺の目には青く輝く宝石と黒玉が魔力の線によって薄く繋がっているのが見える。だからこそのあの速さ。有線接続というわけだ。突くべきは魔素の源———胸の宝石。そのためには黒玉が邪魔だ。アレさえ除けば、それで倒せる。


 目からとめどなく流れる血をぬぐう。

 対抗手段はない。手持ちの札は全て使った。ドラゴンブレスでさえも殺すには足りない。あるいは数で押し潰すか? いや、近づく前にやられてしまう。やはり乾坤一擲。または同等の力が———


「同等の……力?」


 体の中を雷撃に似た『なにか』が突き抜けていく。

 俺の天職は『分析士』。そしてもう一つ、『ものまね士』だ。

 できるかどうかは考えない。

 大魔星将を()()()()()()()()()。 


 目をつむり、深く息を吐く。

 集中を開始。体の奥底へアクセスするイメージ。

 魔素から生じる魔力は、俺の体を覆った。


「ぬぐあっ!」


 そうしている間にもジャスティンの攻撃は止まない。

 氷と炎の歌い手グスタフが苦しむ声。


 まだだ。まだ時間が要る。

 もっと体の、もしくは精神の奥の深い場所。そこに魔素がある。

 魔力をたどれ、ケイオス。必ずできるはずだ。

 さらに意識を集中。大魔星将ジャスティンがしているように、魔力の線を作る。


「くそがあっ!」


 狂戦士ガートルードが吹き飛ぶ気配。

 したたかに打ちつけられた彼がうめき声を漏らす。

 

 なにもできないことがもどかしい。

 体の中身が焼けつくようだ。

 ここまで魔素に近づき、集中したことはない。

 どこまでも募ってくる焦りを押し殺し、魔素の分裂を開始。

 これを形にしなければ———


「危ない!」


 オスキュリーダの声がする。

 ジャスティンは俺に狙いを定めたのか。

 くそ! まだ途中だというのに!


 しかし、衝撃はいつまでもこなかった。

 うっすらと開けた目に、至高すぎる狩人オスキュリーダの背がある。


「こういうの、僕の役目じゃないいんだけどねー」

「オスキュリーダ……」

「なにかやってるんでしょ? それまでは僕が守る」


 黒い玉がオスキュリーダを打ちつける。

 彼は巧みに急所を避けて防御をしていた。

 だが、長くは持たない。

 

「うあああ!」


 オスキュリーダの体が宙に浮き、俺の背後に飛んでいく。

 

「残るはおまえだけだ! ケイオス!」


 あと……少し。

 魔力を限界まで振り絞り、作り出す。


「死ねえ! クソカスがああああああああああああああああああああ!」


 五つの黒い玉が迫る。

 同時に喰らえば俺の体は四分五裂するに違いない。


 間に合うか?

 違うな。間に合わせる。


「……なんだと?」


 甲高い音がする。 

 ヤツの黒い玉は、弾かれた。


「……それは」

「……」

「……それはなんなんだ! ケイオス!」

「ものまねをした」

「ば、馬鹿な……そんなことがあり得るのか! おまえは……いったいなんなんだ!」


 俺の周囲には、影から作り出した五つの剣が浮いている。

 

「おまえ……」

「決着をつけよう」

「くっ……」


 俺とこいつは元アカツキのメンバーだった。

 思えば、王都で始めに声をかけてくれたのはおまえだったな。

 あの時は嬉しかった。

 こうして戦うことになるとは、思いもしなかったぞ。


 なんにせよ、最後だ。

 ジャスティン。

 

 

 おまけ・人物紹介


 なまえ  ガートルード・ブラック

 ねんれい 三十三

 せいべつ 男

 ジョブ  大剣戦士

 スキル  スマッシュ/回転斬り/地摺り懐岩弾/一鬼刀閃/流し斬り/斬耐性(大)

 ランク  AAランクパーティー『ガルベリオンズ』 個人ランク 一級

 しょぞく 王都アーヴェス・冒険者 

 かぞく  母・姉

 こいびと ひとり

 ちょきん なかなか

 みため  ブラウンの髪・ブラウンの瞳

 とおりな 狂戦士



 おまけ・人物紹介


 なまえ  グスタフ・ドンケルハイト

 ねんれい 二十九

 せいべつ 男

 ジョブ  属性導師

 スキル  炎魔法/氷魔法/水魔法/風魔法/土魔法/雷魔法/魔法耐性(中)/火水土風冷雷適性(大)

 ランク  AAランクパーティー『エターナルズ』 個人ランク 準一級

 しょぞく 王都アーヴェス・冒険者 

 かぞく  祖父・祖母

 こいびと なし

 ちょきん かなり

 みため  青赤髪(染髪)・グリーンの瞳

 とおりな 氷と炎の歌い手



 おまけ・人物紹介


 なまえ  オスキュリーダ

 ねんれい 二十一

 せいべつ 男

 ジョブ  ハイレンジャー

 スキル  光の矢/曲撃ち/十連速射/眼力≪レベル4≫/熱感知≪レベル3≫/震音感知≪レベル3≫/風神の息吹

 ランク  パーティーランクなし 個人ランク 一級

 しょぞく 王都アーヴェス・冒険者 ハンター

 かぞく  なし

 こいびと なし

 ちょきん かなり

 みため  金髪・ヘイゼルの瞳

 とおりな 至高すぎる狩人



 という感じです。

 この三人は盛り上げ役です。

 最終局面となりました。

 よろしくおねがいしますっ!


 それでは次回。

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