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最終クエスト 『人間と魔物、生き残りをかけた戦い』

「ほれ、とっとと立て」

「すまない」

「無茶しやがって。おまえってやつは」


 差し伸べられたダクの手を取って立つ。

 ここへ来た援軍の数は、数百人。

 さしものジャスティンも驚き、戸惑っている。


「ちいっ! 援軍だと!」


 道を遮るように陣形を組み、蟻一匹通さない構えの俺たちに、大魔星将は下がった。

 これで膠着状態だ。


「まさかダク、王都から来てくれるとは」

「俺だけじゃねーさ」


 集まった戦士達の間からやってきたのは、とてつもなくデカい袋を背負った老人。


「オヤジさん?」

「ったくよ! 便りくらい寄こせアホンダラ!」


 王都の武具店『カラド・ボルグ』の店主は相変わらず口が悪すぎる。

 オヤジさんはデカい袋を地面に降ろし、中を開けて中身を出した。


「これは……武器」

「おうよ。こいつを使え! 折れたらおれんとこに持ってこい! 片っ端から直してやらあ!」


 頼もしすぎる。

 地面にばらまかれた剣に槍に斧にメイス。どれもがオヤジさん謹製の高価な武器ばかりだ。


「ケイオスさん」


 オヤジさんの横から抜けてきたのは、ヴァイオレットとフォレスティア。てっきり王都に帰ったとばかり思っていたが。


「アイツフェルンに残っていてくれたのか」

「ええ、少しでも償いをしないと」

「俺がクビにされた時の事を言っているのなら、気にはしていないぞ」

「いいえ、それじゃわたしたちの気が済まない。フォレスティア、頼むわ」


 うなずいた『緑林魔法士』のフォレスティアが魔法を発動する。

 緑色の優しい光が俺を包み込み、感じていた痛みがなくなると同時に力がわいてくる。


「≪森の癒し≫……これで少しは楽になったはず」

「これは……楽になったどころではないな」


 薬を使いきっていたから、ほんとうに助かった。

 彼女たちは腕利き。色々あったが、味方であれば心強い。


 改めてダクに向き直る。

 肝心なことを聞いていない。


「援軍はどのくらい来たんだ?」

「まずは五百。足の速い部隊が先行してきた。率いているのは———」


 ダクの言葉を遮り、誰かがやって来る。

 鋼の鎧に身を包んだ眼帯の男は、いかにも頑健な肉体を揺らして笑った。


「君がケイオスか! くくっ……よくもまあ」


 先の方に積み重ねられた魔物を死体を見て、愉快そうだ。


「あれを一人で?」

「ああ」


 眼帯の兵士は笑いを噛み殺して、俺の肩を叩く。

 楽しそうだな。


「ああ、この人は俺の昔の上官でな。話をしたら命令も出てねえのに走り出しちまった」

「なあに、町の危機ならば当たり前のことよ」


 そういう割にはすごく嬉しそうなんだが。

 大丈夫か、この人。


「俺はシュバルツだ。王都で警備隊を率いている。王都はアイツフェルンへ三千人の兵士を派遣したぞ。今も続々と町に来ている。あとちなみに眼帯をしているのはコケて岩にぶつかったからだ」


 それは聞いていない。

 眼帯の話はともかく、三千人とは予想よりも遥かに多い数字だ。ビビるわ。


「ケイオス、おまえさんが時間を稼いでくれたおかげだ。警備隊だけじゃねえ、冒険者も王都から来てくれた」


 ブラインの言う通り。

 王都で見た顔もいれば、アイツフェルンの冒険者もいる。


「無事でよかったわ、ケイオスちゃん」

「局長」


 ハディスン局長も来た。

 鎖かたびらを着て、拳には鉄の輪が嵌められている。

 非常に気になるところだが———

 

「王都の冒険者省はすぐに動いてくれたわよ」

「ほんとうにありがとう。ハディスン局長」

「なに言ってるの。アイツフェルンは私の町でもあるのよ?」


 と言って、ばすん、と重いウインクをする。

 

「しかし、戦場まで来るとは」

「私も戦わせてもらうわ」


 え……?


「私の天職は『拳闘士』よ。やらせてもらう」


 局長の目が怪しく光る。

 筋骨隆々とした体つきにファイティングポーズ。むしろそっちが本職なのでは?


「エリーシェは……」

「町で休んでるわ。一睡もしていないから当然ね」


 戻っていたのか……

 いや、無事ならいい。


 俺は前へ進み、列をなしてこちらをにらみつける大魔星将及び魔物の群れと対峙する。


「ジャスティン、おまえたちの負けだ」

「くっ……ふざけるなよ。こっちにはまだ三千体はいるんだ! たかだか五百人来たところで何ができる!」


 ただの五百人ではない。

 精鋭が五百人だ。


「おい、ケイオス。いまさらだがあれはなんだ?」


 ジャスティンに指を差しながらダクが聞いてくる。


「ヤツは大魔星将ジャスティン。人と魔物の融合体だな」

「……ああ? マジかおい……」

「説明はあとだ。来るぞ」


 俺たちと魔物。両者の緊張が最大限に高まっている。

 ふとしたきっかけでぶつかりあうことになるのは必至。


 もう小細工は必要ない。

 あとは全力を叩きつけるのみだ。


 微かな風が頬を撫でる。

 確かにまだ数の上では魔物が多い。

 しかし、町へはさらに援軍が来ている。

 仮にここが突破されても——


「あれはなんだ!?」


 そこで、誰かが悲鳴にも似た声を上げた。

 なにごとかと振り向いた時。


「……え?」


 俺たちの上を巨大な影が通り過ぎていく。

 誰もが空を見上げた。

 俺たちだけではなく、魔物たちも。


「あ、あれって……」


 ブラインの問いに答えられなかった。

 鳥肌が立つのを止められない。

 太陽の光を遮り、悠々と空を飛ぶ巨大な存在。


 ———ドラゴンだ。


「なにが……起こっている?」

「わからないか?」


 呟いたジャスティンに向かって言い放つ。


「あれは……俺たちの味方だ」


 あまりにも巨大な存在は、一体だけではない。

 見る限り十体のドラゴンが空を旋回しているのだ。

 自然と笑みがこぼれてくる。

 彼らは……来てくれた!


「ケイオス、あれは……」

「ドラゴンが助太刀に来た。攻撃しないようみんなに伝えてくれ」

「ええ……あ、いや、わかった」


 顔中から汗を出しまくっているダクに指示をお願いする。

 魔物だと勘違いしてはまずい。


 やがて、一際大きいサイズのレッドドラゴンが、俺たちの側に降り立った。

 見事な紅い鱗が光を反射する。


『おお、ケイオス殿! 間に合ったか!』


 聞き覚えのある声がする。


「その声は……族長か?」

『いかにも! 里の戦士を全員連れてきたぞ!』


 なんという。

 なんという心強い味方なんだ。


『ケイオス、あたしもいるよ』


 レッドドラゴンの脇に降り立つのは、息を呑むほどに美しい神秘的な輝きを放つ白竜だった。

 セレーネ。

 君も来てくれたのか。


『父様がのろのろしてたから遅くなっちゃった』

『これ、それは言うなと——』

「はは……」


 こんなに嬉しいことはない。

 彼らは来てくれた。

 こんなことがあっていいのか?

 これは夢?

 もし夢だとしても……最高の夢だ。

 さっきから体が熱くてしかたない。

 全てを出し尽くしたと思っていたが、そうじゃなかった。

 

 次々とドラゴンたちが地に降りる。

 居並ぶ強大無比な竜たちに、魔物の群れがじりじりと下がった。


「ケイオスちゃん、号令を」

「局長?」


 いきなりなにを言うんだ。


「みんな、あなたのために集まったのよ」

「しかし」


 突然言われても、困る。

 だが、思いとは逆に腹の奥底から力がみなぎってくるのは何故だ。

 この力はいったい。

 

 目をつむり、打ち震える。

 そうだ。

 俺たちは———


「俺はケイオス! アイツフェルンの魔物ハンター! 狙うは魔物の首魁、大魔星将の首一つ!」


 声を張り上げる。

 今こそ、戦う時。


「集いし者達よ! 魔物を滅殺せよ!」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお‼‼」」」」」


 全員が武器を手に地を蹴る。

 

「この……クソカスどもがあああああああああああああ! やれ! 人間を滅ぼせえええええ!」


 人間と魔物。生き残りをかけた戦いが始まる。






 

 おまけ・人物紹介


 なまえ  ハディスン

 ねんれい 三十九歳

 せいべつ 男

 ジョブ  拳闘士

 スキル  スウェイ/ローリング/スマッシュ/せいけんづき/フラッシュピストンマッハパンチ

 ランク  なし

 しょぞく アイツフェルン・冒険者省支部局長

 かぞく  弟

 こいびと あり

 ちょきん それなり

 みため  濃いブラウン(白髪染め)・ダークブラウンの瞳

 


 実はかなり強いかもしれないハディスン局長。

 活躍の場はあるのか!?

 ないっす。


 ドラゴンまでやってきて役者が揃いました!


 ここまで読んでいただきありがとうございます。

 よろしければ感想、コメントなどお待ちしております。。


 それでは次回『人間と魔物、勝つのはどっち?』で。

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