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クエスト・Ⅳ 『アヴァウォック・ツリー』退治、『大アブラムシ』退治—―その他いっぱい

「≪光の息(レイイ・ドア・ルー)≫!」


 俺の口から発射された光の線が、大木を薙ぎ倒す。正確には大木の姿をした魔物だ。

 こいつらは『アヴァウォック・ツリー』。木に擬態し、近づく者を襲う。


 声にならない叫びを上げて、大木の化け物が巨体を倒した。

 

「……ケイオス、今のはなんなんだ」


 ブラインが俺を真顔で見てくる。

 何と言われましても。ドラゴンのブレス以外の何に見えるというんだ。


「魔法……なんだよな?」

「いや、違うな」


 ドラゴンの里から帰還してより二週間が経過している。

 あれから週一程度の間隔で、竜人であるセレーネが遊びに来るようになった。

 そのおかげで色々と学べている。


「今のはドラゴンのブレスをものまねしたものだ」

「はあ?」

「ドラゴンのブレスをものまねしたんだ」

「いや、なんで二回言うんだよ。意味がわからないわけじゃなくてだな……」


 なぜものまねできるのか、と言いたいらしい。

 局長以外には竜人の件を話していない。ブラインが疑問に思うのも当然だ。


「ドラゴンバスターっつー異名は伊達じゃねえってことか」

「その異名は正しくないんだが」


 ドラゴンの調査依頼を終えた俺は、いない、と報告したにも関わらず、『ドラゴンバスター』と呼ばれるようになってしまった。

 正直に言って名前負けすぎる。そもそも俺が倒したいのはドラゴンではなく、魔物だ。不本意極まりない。


「おれの出番ねえな、これ」


 ブラインは体が真っ二つになって死んでいる『アヴァウォック・ツリー』を見てため息をついた。


「光線を息で吐くとか、なんなのおまえ」

「他にもあるぞ。炎とか氷とか」

「えーと? おまえ実は人の皮をかぶったドラゴンだったりするわけ?」


 彼の冗談がちょっと面白くて、思わず微笑む。

 俺は遊びに来たセレーネから竜言語を学び、何種類かのブレスを使えるようになった。

 さきほど使ったのは、光を束ねて撃ちだすもの。今いる森の中では、大火事になる可能性を懸念して炎の息が使えなかったわけだ。


「……! 新手が来たな」

「お次は『大アブラムシ』か」


 丸いフォルムの巨大なムシが姿を現す。『アヴァウォック・ツリー』を倒したことで中から這い出てきた。

 木の魔物と虫の魔物は共生関係にある。


 今回、俺は『アヴァウォック・ツリー』と『大アブラムシ』、そして『キノコン』の退治を一気に引き受けた。

 偶然にも採取の仕事が重なったブラインと共同で依頼に当たっている。


「ブライン、ヤツラは跳ぶ。着地点を狙え」

「オッケー!」


 『大アブラムシ』のジャンプ力はとてつもない。だが、所詮は虫。着地際を狙えばどうということはないのだった。

 あとは固い表皮を斬るだけの剣力が必要なのだが……ブラインならば心配はいらないだろう。


 気合とともに繰り出される彼の斬撃は、『大アブラムシ』を切り裂いた。

 魔物ハンターとしては負けていられない。


「≪影ノ槍(シャドウスピアーズ)≫』


 ヤツラの着地点を狙っての影魔法は、真下から巨大なムシを貫く。

 これで木と虫は終わりだ。あと『キノコン』なのだが、まだ姿は見えない。


 菌類系魔物である『キノコン』もまた、『アヴァウォック・ツリー』と共生していることが多く、セットでの討伐依頼がほとんどだ。

 不快な胞子をばらまく『キノコン』は危険度こそ高くないが、放っておくと森が有害な胞子だらけになって大変なことになる。


「ブライン、そっちの仕事は終わったのか?」

「いや、こっちはまだだ」

「そういえば何を探しているんだ」

「おれは———」


 と、ブラインが言いかけたところに、不穏な気配が近づいてくる。

 俺は影魔法≪黒風呂敷(ダークシーツ)≫を即座に展開し、索敵。

 森の中を走る速度、歩幅からして、『クロウクロウオオカミ』だろう。


「また新手だ。いけるか?」

「ああ、問題ねえ」


 ん? 待て。

 さらに何かが来る。

 このずんぐりとした動きは、獣型や人型ではない。


「どうやらキノコンも現れたようだな」

「マジかよ……次から次へと」

「正念場だ。全力で行くぞ」

「へいへい」


 そうして俺たちは、わいてくる魔物を倒して倒して……掃滅した。


 



 重苦しい体を引きずるようにしてアイツフェルンの近郊に戻った時、時刻はすでに夜だった。


「うへえ……疲れた」

「同感だな。さすがに数が多かった」


 受注したクエストとは他に、『クロウクロウオオカミ』『アンガーボア』『ノブリスカメレオン』を討伐。

 イレギュラーは常に起こりえるが、遭遇率が高すぎる。


「なあ、ケイオス、たまには飲みにいかないか?」

「いい考えだ。この時間では職業安定所も閉まっているからな」


 冒険者省支部への報告は明日にしよう。

 俺たちは風呂にも入らず、そのまま酒場に直行した。

 

 ブラインは顔なじみらしいが、初めて入る店だ。

 席が空いていたので、待たされることなく座れた。


「まずは乾杯、だな」

「なにに乾杯だ?」

「なんでもいい。生きてることに、そしてドラゴンバスター・ケイオスに」

「それはよせ」


 乾杯してビールを飲み干す。炭酸の爽快感と突き抜ける苦み。たまに飲むとたまらない。


「おまえさんのおかげで最近は実入りがいい。ありがとな」

「礼を言われる筋合いじゃないな。ブラインもしっかりと仕事をこなしている」

「いや、なんつーか、おまえさんとクエストをするようになって考えが変わったよ」

「……?」


 今日はやけにしんみりとしているな。


単独(ソロ)でやる時はちゃんと調べて、準備して、それから挑むようになっちまった。戦闘の時も同じだ。魔物をよく見て動くようにしてる」

「なるほどな」


 確かにブラインは会うたびに鋭さが増している。


「おまえさんのおかげだ。『分析士』のケイオス」


 ……あれ? なんだかすごく嬉しいな。そんなこと言われたの初めてだ。

 アカツキのメンバーは言っても聞かなかった。他人の言う事など人は信じないと思っていたが。


 俺は照れをごまかすために咳ばらいをして、話題を変えることにした。


「ところでブライン。今回の仕事はなんだったんだ?」

「ああ……霊草探しだ」

「霊草とは……『癒しの霊草』で合っているか?」


 ブラインはうなずいた。


「かなり高難度の依頼だな。アイツフェルンで見つかるとは思えない」

「こいつは依頼じゃねえんだ。おれ自身が捜してる」

「ブラインが?」

「まあ……シラフじゃ話せねえことだが」

「今はシラフじゃないな」


 そう言うと、彼はふっと笑った。


「うちの嫁さんがずっと具合悪くてな。もう……何年にもなる」

「それで『癒しの霊草』が必要なのか。医者はなんて言ってるんだ?」

「匙を投げたよ。原因は不明だと」


 ブラインが『癒しの霊草』を求めるのはわかる。全ての怪我、病気を治す万能薬『癒しの霊草』は誰もが求めてならないものだ。

 ごくまれに出回る霊草の値段は豪邸が建つほどの価値がつく。一介の冒険者が入手するのは困難を極める。


 色々と合点がいった。

 天職『剣士』でありながら採取や探索をメインにしている冒険者。剣技も熟練なのに、魔物討伐が主な仕事ではない事情を理解する。


「アイツフェルンに越してきたのも、ここで霊草が採れると聞いたからだ」


 俺は何も言えなかった。


「おまえさんがそんな顔をする理由もわかってる。噂でしかないってんだろ?」

「水を差すようで悪いがな」

「いいんだ。もう五年近く探してるのに見つからねえ。たぶん……ない」


 ブラインの表情ははてしなく暗い。

 しかしそれは早計だ。


「ない、と決めつけるのは早いぞ。まだ見つかっていないだけだろう」

「……そりゃあ、そうだが」

「俺もそれとなく探しておこう。分析士のスキルを使えばなにかわかるかもしれん」

「すまん! 恩に着る!」


 と、頭を下げてくる。

 大げさだ。世話になっているし、当然だろう。


「だけどよ、こうも魔物が出てくるんじゃ、おちおち探す暇もねえ」

「確かにな」

「ぼこぼこ生まれやがって。キリがねえぜ」

「……」


 俺は口を閉ざした。

 ぐいっと酒をあおり、息を吐く。


「どした?」

「……魔物には性別がないことを知っているか?」

「性別が……ない?」

「ああ、魔物にはオスとメスの区別がないんだ」

「は? 冗談だろ?」

「魔物の肉体には性器が確認されていない」

「おいおい……じゃあどうやって増えるんだよ」

「ブラインは魔物の子を見たことがあるか?」

「……いや、ねえな」

「魔物は繁殖活動をしない」

「じゃあなにか? 勝手に増えるとでも?」

「ああ、()()()()()()()()()()()()()()()()


 ブラインは絶句していた。


「魔物の詳細な研究は始まったばかりで歴史が浅い。王都でも研究者はごくわずかだ。しかし、着実に研究は進んでいる」

「どこからかわいて出るって……」

「あくまで推測だが、間違ってはいないだろう。なにせ、そうとしか思えないんだからな」


 俺はそれを突き止めたいと考えている。

 発生源さえ突き止めてしまえば、魔物は生まれない。魔物が生まれなければ、殺される人間もいなくなる。


 必ず突き止めてやる。


 そう、俺はケイオス。


 魔物ハンターであるのだから———

 おまけ・いろいろ


 なまえ  ケイオス

 ねんれい 十八

 せいべつ 男

 ジョブ  分析士 ものまね士

 スキル  眼力≪レベル限界突破≫/眼識≪レベル9≫/瞬間模倣術≪インスタント≫/影魔法/ドラゴンブレス

 ランク  パーティーランクなし 個人ランク 三級

 しょぞく アイツフェルン・冒険者

 かぞく  なし

 こいびと なし

 ちょきん 少し

 みため  黒髪・黒瞳

 とおりな ドラゴンバスター←NEW



 魔物紹介


 『アヴァウォック・ツリー』


 大木に擬態する魔物で、植物でありながら、動物でもある。体長は十メートル~

 下を通り過ぎようとした生き物を枝に扮した腕で捕まえ、食する。動く物ならなんでも掴もうとするためかなり危険。

 また、頭部の茂みに虫型魔物を住まわせており、分泌液をあげる代わりに体の掃除などをしてもらう共生関係にある。

 足元は菌類型魔物が住み着いている場合もあるので、単独では近づかない方が良い。危険度はDランク。

 弱点は火だが、森の中にしか住まないため、迂闊に火を放つと大火事になる。


 討伐推奨冒険者数は最低でも四人~ 討伐平均報酬額 3000G~4000G 



 『大アブラムシ』


 主に『アヴァウォック・ツリー』の頭部に住み着く虫型魔物。だいたい二体セットである。

 成人男性ほどの体高。驚異的な跳躍力を持ち、調子に乗ると跳ねまくる。固い表皮を持っていて、跳んで押し潰そうとしてくるのが特徴。

 殺した獲物は『アヴァウォック・ツリー』に差し出して、樹液をすする。

 単体ではさして脅威ではなく、あくまでも『アヴァウォック・ツリー』とのセットが危険。


 討伐推奨冒険者数は『アヴァウォック・ツリー』とセットかどうかで変わる。単体ならソロでもOK

 討伐平均報酬額 200G~250G



 という感じです。


 ここまで読んでいただきありがとうございました。


 よろしければ感想、コメントお待ちしております。


 また来てね!

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