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神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
水の咆哮

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水の咆哮 第5章-1

大分経ちましたが、ようやく更新です。

”水”の戦いは終わりましたが、ひと段落つくまではこのサブタイトルで行く予定です。

「……何とか……なった」

 ”水”の神霊石を抉り出したところで、皆葉は溜め息混じりに一人ごちた。

「……あとは」

 奪った神霊石の代わりとなる心臓を生成する。

 それでようやく、メイとの戦いが終わる。そう思った時だった。


「中々に、面白い戦いだったな」


 一言、感想が聞こえてきた。声のする方を振り返ると、拍手を伴いながら、人影が近づいてくる。

 黒衣を纏った男。フードで隠れて顔が見えない。肩には暗緑色の槍を担いでいる。全身から放たれる異様な圧が、皆葉に警戒を促す。

「あんたは、誰だ?」

 皆葉は問いかけた。男は飄々とした態度で、

「我か? 我の名は――ッ!?」


 皆葉の問いに答えようとしたところ、それを遮る衝撃が走った。

 男の背後から赤い鏃が迫り――着弾。男を中心とした半径10メートル程が瞬間的に爆炎に包まれた。

 同時に、皆葉とメイも爆風によって吹き飛ばされていった。


   *   *


 校舎の屋上。

 そこには大型の弓を携えた円麗と、寄り添うように立つ神代神奈の姿があった。

「……矢は命中。爆炎で状況は見えません。」

 神奈は”生命”によって強化した視力で、遠く離れた皆葉たちの観測を行っていた。

 新たに現れた黒衣の男を迎撃するため、麗が一時的に占有している”火”の神霊結晶による攻撃に打って出た。

 神奈は観測手として麗の射撃の補助をし、麗は指示通りに射撃をすることで矢は命中した。だが、矢による爆炎が視界を遮るため、黒衣の男のみならず、近くにいる皆葉の状況も掴めないでいる。

「そう。なら、もう一発、撃つ?」

「いえ。効果の有無に関わらず、二度目は通じません。なので、別の手を打ちます」

「別の手?」

「ええ。ちょっと失礼」

 そう言うと、神奈は麗の胸元に手を伸ばした。

「ちょ、神奈ちゃん!?」

 唐突な行動に麗は驚くが、神奈は構わず続ける。

「大人しくしていてください。私に同姓の身体を弄って遊ぶ趣味はありません。ただの確認です。医師による触診と思えばいいです」

「しょ、触診って……、何を確認してるの?」

「貴女の身体の状態です――もう良いですね」

 そう言うと、神奈は麗から手を離す。

「麗さん。貴女の身体は完全に回復しました。もう神霊石を身体から外しても問題ありません。なので、その神霊結晶、私に渡してください」



   *   *


 グラウンド。

 突如襲ってきた爆撃によって視界が遮られ、自身も吹き飛ばされた神皆葉だが、起き上がり周囲を見渡す。

「……メイちゃん」

 近くには、メイが倒れていた。慌てて皆葉は、”生命”の神霊結晶で心臓の生成を始める。幸い、直前の爆発による損傷はなく、蘇生に支障はなかった。

 だが、皆葉は安堵できなかった。新たに現れた驚異と思しき人物、その対応が迫っていた。

(今のは、”火”の神霊結晶による一撃か。ならば、放ったのは麗さん。2撃目がないのは、煙で見えないからか。ならば、今僕がすべきことは)

 皆葉は素手の右腕で地面に触れ、”生命”の魔力を流し込む。”生命”は瞬く間に、皆葉を中心とした周囲に広がっていき、さながらソナーのように生命反応をあぶり出した。


(生命反応……あり!)

 

 対象までの距離はどれだけか、それを算出しようと思ったが、そんな時間はなかった。なぜなら、


「さて、そろそろいいか?」


 前方から声が聞こえるのと同時に、煙が晴れた。目と鼻の先のところに、男が立っていた。

「……」

 皆葉はメイを右腕で抱き抱えながら、身構える。メイの蘇生処置は完了しているが、意識は失ったままだ。

「どうした? お荷物が邪魔か? なら、気にしなくていいようにしてやろう」

 男が右手を突き出して構える。さながら銃のような形を模して。

 その人差し指に、拳大の黒い塊が現れた。

「そら」

 引き金を引くように、指が曲げられる。同時に、黒い塊が放たれた。狙いはメイだった。

「クッ!」

 皆葉は迎撃する。右腕に装着している盾に”光”の魔術を込め、装填されている弾丸を放った。

 黒い塊は数発の弾丸と衝突すると、周囲に拡散していった。

「なぜ、彼女を狙った?」

「うん? 貴様と戦うのに、その小娘が邪魔だから始末しようとしただけだが?」

「……」

「どうした? 腹立たしいか? だがな、小僧。殺し合いをしていた敵を助けるなど、ただの偽善だ。そんなことをしていては、本当に護りたいモノは失うことになるぞ。いつかのようにな」

「何を」

 言っている。そう発しようとした時、男の顔を覆っているフードが風で剥がれた。


「あ……あ……」


 かつて見た覚えのある顔。どこで見たのか、意識できない記憶の断片が、皆葉に訴えかけている。

 この男は……簒奪者。決して許してはならない存在。

 1秒にも満たない時間の中で、夢にも見た光景が再び皆葉の脳内でフラッシュバックする。そして、神(・)皆(・)葉(・)は動く。


「あああああああ――!!」


 獣のような咆哮を上げ、敵を睨みつける。

「いい眼だ。さあ、貴様の宿敵が目の前にいるぞ」

「……」

 神(・)皆(・)葉(・)はその場で一回転。そして、

「うおおおおー!」

 水無月メイを砲丸投げのように、あさっての方向に投げた。

 投げ飛ばされたメイの姿は、瞬く間に見えなくなっていった。

「ふむ。これで余計な荷物はなくなったな。さあ、準備が整ったなら、来るがいい」

「あああああああ――!!」

 真っ直ぐに、神(・)皆(・)葉(・)は駆けだした。



   *   *


「おいおいおい!」

 突然、水無月メイを放り投げたことに、業紅蓮は心底驚いた。

「くそ!」

 寸分違わず、メイは紅蓮めがけて飛んでくる。紅蓮は構え、メイをキャッチした。

「はあ……さっきの生命探知の時、オレがいることを把握していたか」

 襲撃者のみならず、紅蓮の存在も確認した上で、皆葉はメイの投擲という暴挙をとった。

 呆れつつも、紅蓮は感心する。

「とりあえず、お嬢さんは生きているか。できればオレも加勢したいところだが」

 メイを抱えたままでは戦闘に馳せ参じることはできない。やむを得ず、紅蓮は踵を返す。

「あっちのお嬢さんも動いているし、あの女もそろそろ到着する頃か。ならば、オレのすべきことは」

 メイの安全を確保すること。そう判断し、紅蓮は立ち去っていく。



   *   *


 対峙する神皆葉と黒衣の男。先に動いたのは神皆葉だった。

 理性をかなぐり捨てたかのような咆哮をあげ、用い得る手札を切る。

 右手の盾に格納されている弾倉――そのすべての弾丸を一気に放った。都合150発強の弾丸は、数秒で撃ち尽くされ、空になった弾倉が排出される。だが、


「それで?」

 

 黒衣の男は傷一つ負っていない。

「――――ッ!!」

 神皆葉は前に出る。左腕の剣は姿を変え、両腕を覆う籠手となり、赤から緑――”生命”へと属性を変えた。

 籠手となった神霊結晶で、神皆葉は殴りかかる。


「そうくるか」


 黒衣の男もまた、槍を籠手に変える。足を動かさず、迎撃する構えだ。

 激突する拳と拳――その瞬間、目映い灰色の光が、交わる籠手から放たれた。


「なるほど。こうなるか」


 何かに納得する黒衣の男。だが神皆葉はそれを意に介さず、がむしゃらに拳を振るう。

「いいだろう。どこまで続くか、つきあってやる」

 攻防が絶え間なく入れ替わり、肉弾戦が繰り広げられていく。


続きも書いているので、次はあまり期間をあけずにあげたいと思います。

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