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神にデスゲームで皆殺しにしろと迫られたので、誰も殺さないで生き延びることにした。  作者: 火烏陽太郎
水の咆哮

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水の咆哮 第4章-3

約半年経ちましたが、更新です。視点が結構入れ替わります。

 新緑高校のグラウンド。対峙する二人の少年少女――神皆葉と水無月メイ。

 時刻が0時00分を示した瞬間、二人が見に宿す神霊石が淡く輝く。


『契約術式に基づく戦闘開始』

 

 音はなく、二人の脳内に直接働きかけるように、メッセージが発せられた。

 神霊石の反応と共に、メイは動き出した。前へ踏み出し、魔術媒介を武器と化す。

 メイが両腕に装着するブレスレットは、肘までを覆う籠手になり、アンクレットは膝までを覆う具足になった。

 

 対する皆葉は、メイの行動に驚いていた。

(まさか、接近戦を選ぶとは)

 驚きながらも、即座に対応を決める。ピアスをハンドガンへと変え右手に持つ。左手から弾倉を取り出し、弾丸を装填する。

(さあ、どうする⁉)

 銃口をメイの胴体に向け、即座にトリガーを引く。

 三連射。それが可能なハンドガンを皆葉はイメージし、具現化させ、射撃した。

 彼我の距離は約5メートル。回避は不可能な程に接近している。だがメイは、


「ぬるいわ」


 回避することなく、弾丸を防いでいた。左腕を覆う籠手は、いつの間にか彼女の全身に匹敵する程のサイズの盾へと形状を変え、弾丸を受け止めていた。

「ちい!」

 皆葉はバックステップで距離をとり、さらなる射撃。盾の隙間を狙おうとするが、

「見え見え」

 メイは皆葉の照準に合わせて、巧みに盾を操り、すべての弾丸をたたき落とした。そして、


「くそ!」


 弾詰まりなのか、トリガーを引いてもハンドガンからは弾丸が放たれない。

「もらった!」

 好機と捉え、メイは盾を籠手に戻し、前進する。皆葉までの距離はあと2メートル。

 メイの拳が皆葉を襲う。


   *   *


「はああああ!」

 ようやく接近したメイは、拳を握りしめ、殴りかかった。

「ッ!」

 紙一重で、皆葉はメイの突きを避ける。だが、メイの猛攻はとどまることを知らない。巧みな連携で、突きと蹴りが繰り出される。

「くッ!」

 回避はできているものの、皆葉は焦る。反撃をしようにも、メイの回転が早くてタイミングが掴めないでいた。



(さすがに、まともに食らってはくれないか)

 攻撃を続けながら、メイは内心でつぶやく。”生命”を使い、自身に身体強化を施すことで攻撃の手を早めているが、皆葉にも同じ事ができるので、アドバンテージにはならない。だがメイは、ほくそ笑んでいた。

(そろそろ、反撃に出てくるかしら)

 ちょうど、メイが右拳を放った時だった。


「ッ!」


 皆葉は右手でメイの右拳を打ち上げて軌道を反らし、メイの体制を崩した。続けて、左拳で殴りかかる。

「おおおおお!」

 狙っていたのだろう、タイミングは完璧だった。皆葉は一歩踏み込み、がら空きの腹部に向けて拳を突きだした。だが、


「くっ⁉」


 踏み込んだ足が滑った。それによって左拳の軌道が逸れ、反撃の一打が空を切る。

 


「ざんねん」


 メイの左腕が皆葉に迫る。籠手の先端には、短刀程の長さの刃が形成されていた。

「――――」

 皆葉はメイの動きから、頭部を狙った攻撃と判断。予測される軌道に合わせて、ハンドガンの銃床を叩きつけることで防御しようとする。だが、


「……そこっ!」


 メイは皆葉の反撃に対応し、動きを変えた。攻撃のタイミングをずらすことで皆葉の反撃を空振りさせ、打ち下ろされた右腕を前腕から切断した。

「が……ッ!」

 苦悶の表情を浮かべる皆葉。たまらず後ろに仰け反るが、皆葉は足下に違和感を覚えた。仰け反っただけだったのに、身体が勝手に後退しているのだ。

「ッ⁉」

 右腕切断に引き続き、皆葉をさらなる衝撃が襲った。いつの間にか、あたり一面の地面が凍っていたのだ。先刻足を滑らせたのも、凍結した地面が原因に違いない。そして、それを発生させたのは当然、”水”の神の道化である目の前の女――水無月メイ。

「もらった!」

 一方メイは、自身で施したものだからなのか、凍結した地面に足を捕られることはなかった。

 メイは続けて前進し、振り上げた左腕――刃を帯びた籠手を右手で掴み、振り下ろした。狙いは皆葉の頭部。

「させるか!」

 皆葉は左腕にトランプを握りしめていた。僅かに後退したおかげで、空振りした左腕を引き戻す間ができていたのだ。

 そして、弾くようにして、トランプを射出。トランプはメイの振り下ろす刃に命中すると、爆発した。

「くっ⁉」

 それは小さな爆発だった。だが、メイの動きを止めるには十分だった。

「シッ!」

 その隙に、皆葉は連続してトランプを射出する。

「ちっ!」

 堪らず、メイはバックステップで後退し、皆葉から距離をとる。

 


   *   *



(さて、どうするか)

 メイとの距離を離すことに成功したことで、ようやく皆葉は、警戒を続けながらではあるが、一息つくことができた。そこで思考する。

(右腕は……出血がない?)

 ちらりと、切断箇所を見る。残された上腕、そして自身の足下で転がっている切断された前腕は、ともに切断面が凍っていた。

(刃に”水”の魔力を付与して凍らせたか。彼女なりの”生命”への対策というわけか。

 確かにこれなら、血液を使った仕掛けはできない。まあ、止血の必要がないのは、せめてもの救いか?)

 試しに、”生命”で残された上腕部の血液を操作しようとしてみるが、凍結箇所から外へは、血液を出すことはできなかった。

(これは……)



 続けて皆葉は、メイを観察する。

(……良い顔をしているものだ)

 まんまと一撃を食らわせることに成功したメイは、自身の優勢を実感しているからか、僅かに顔がニヤケている。

(魔術媒介は、右腕ごと僕の足下に転がっている。”生命”以外は魔術が使えない。

 肝心の”生命”も、右腕を再生させようとするなら、相当の時間をかけない限り、通常の魔術行使では不可能。神霊結晶が使えれば話は変わるが、神霊結晶を具現化する隙は、とてもではないがないだろう。)

 皆葉に残されているのは、射出手段のないハンドガンとライフル用の弾倉。そして左手に握りしめているトランプ20枚。


(兎にも角にも、まずは魔術媒介を回収しなければ対抗できない。そして、彼女の次の手は)



   *   *


(まずは、あたしが一歩リードしたってところか)

 トドメを刺すには届かなかったが、メイの戦術は皆葉を圧倒した。

 本来であれば避けるべき接近戦――しかしそこに活路を見出し、メイは成功を収めた。

 メイはアドバンテージを獲得したが、皆葉から視線を反らさず、次の展開の思索に入る。


(彼の右手には、ハンドガン――魔術媒介が握られている。彼の経歴とこれまでの戦いからして、おそらく他に魔術媒介はない。神霊石があるから”生命”は使えるだろうけど、他の属性は不可能。

 警戒すべきは、数は不明だけど魔力を宿したカード。魔術媒介がなくても、身体強化による投擲は相当の威力があるはず。単純に盾としても使える。さっきの反撃では爆発してたから、簡単な魔術なら発現できる?

 それから神霊結晶。神霊結晶の具現化には、神の道化の慣れもあるけど、十数秒はかかる。その間は、意識を神霊石に向ける必要があるから、動きが鈍る。モーションに入ればすぐに判断できるから、こちらに隙がなければ、具現化前に妨害は可能。

 ならば、次に採るべき行動は)

 

 メイの両足の具足が形を変える。膝から足首まであった具足は、靴を覆い、足底には鋭利な刃が展開される。さらに足底の刃からは、冷気が放出されていき、放射状に地面を浸食していく。

 そしてメイは、冷気によって凍っていく地面を滑り、皆葉に向けて攻撃を開始する。

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